ロナプリーブ点滴静注

感染症の薬

2021年7月19日に新型コロナウイルスの新たな治療薬が特例承認されました。今までの治療薬とは異なる作用のものであり、また新型コロナウイルスの治療を目的として作られた初の薬になります。ホットな話題なので今回はロナプリーブ点滴静注について説明します。

ロナプリーブは新型コロナウイルスに対する抗体を含んだ薬剤です。カリシビマブとイムデブマブいう2種類の抗体が含まれます。複数の抗体が混ざっているので抗体カクテル療法といいます。
まずはウイルスが感染するメカニズムを確認しておきましょう。
ウイルスは単体では増殖できないので、かならず宿主の細胞に入り込む必要があります。ウイルス表面にはスパイクと呼ばれるタンパク質があり、これが宿主細胞表面の受容体に結合します(新型コロナウイルスはACE2受容体)。これによってウイルスが宿主細胞に入り込めるようになります。

カリシビマブとイムデブマブ はそれぞれ新型コロナウイルスのスパイクに結合することにより、ウイルスが宿主細胞に侵入できなくなります。これによりウイルスの増殖を抑制するわけですね。
ワクチン接種はあらかじめ体内に抗原を投与することによって抗体を作り出しますが、今回のロナプリーブは外部から直接抗体を投与することによってウイルスの増殖を防ぐわけです。直接的にウイルスを殺傷するわけではなく、あくまで感染能力を失わせ、重症化を防ぐことを目的とします。(増殖能力を失ったウイルスは免疫細胞によって駆除されます)

作用機序については分かりました。次は適応について見てみましょう。
添付文書ではロナプリーブの効能効果は

「臨床試験における主な投与経験を踏まえ、SARS-CoV-2による感染症の重症化リスク因子を有し酸素投与を要しない患者を対象に投与を行うこと。
※SARS-CoV-2 新型コロナウイルスのこと

とされています。全ての患者に使えるわけではなく、あくまで重症化リスクのある患者に使える形になります。なお臨床試験では以下の重症化リスクを1個以上有する患者が対象となりました。

・50歳以上
・肥満(BMI 30kg/m2以上)
・心血管疾患(高血圧を含む)
・慢性肺疾患(喘息を含む)
・1型又は2型糖尿病
・慢性腎障害(透析患者を含む)
・慢性肝疾患
・免疫抑制状態(治験責任医師等の判断による。例:悪性腫瘍治療、骨髄又は臓器移植、免疫不全、コントロール不良のHIV、AIDS、鎌状赤血球貧血、サラセミア、免疫抑制剤の長期投与)

上記はあくまで臨床治験で対象となった患者なので、実際に現場て使われる際には、上記を参考にして医師が判断するでしょう。
また「高流量酸素又は人工呼吸器管理を要する患者において症状が悪化したとの報告がある。」と書いてあります。
ロナプリーブ投与後に発熱、低酸素症、呼吸困難、不整脈、倦怠感、精神状態変化等が報告があるようです。
実際に使えるのは「重症化リスクがあり、人工呼吸などの酸素投与が必要ない患者」になります。

次に副作用について見てみましょう。
予期される副作用としてアナフィラキシーショックインフュージョンリアクションとありあす。
点滴なのでアナフィラキシーは当然でしょう。これについては特に説明は要らないと思います。
インフュージョンリアクションはあまり聞いたことがない人もいるかもしれません。
インフュージョンリアクションとは急性輸液反応とも言います。
作用機序は明らかになっていませんが、抗体などのタンパク質製剤を投与することによってサイトカインが放出されることがあります。(ロナプリーブ以外にも抗がん剤などの分子標的薬が多いですね)
これによって頭痛、発熱、悪心・嘔吐、発疹などの過敏症やアレルギー反応が起き、重症化すると呼吸困難、血圧低下、血管浮腫などが起きることもあります。
インフュージョンリアクションは投与開始24時間以内に起き、初回投与ほど発生頻度が高いとされています。予防策として点滴前に抗ヒスタミン薬やステロイドを投与したり、点滴速度を遅くすることによって発生頻度を下げることが出来ます。

最後に使い方です。
「成人及び12歳以上かつ体重40kg以上の小児には、カシリビマブ(遺伝子組換え)及びイムデビマブ(遺伝子組換え)としてそれぞれ600mgを併用により単回点滴静注する」
となっています。
ロナプリーブは点滴静注セットであり、点滴静注セット300と点滴静注セット1332があります。
点滴静注セット300は2.5mLのバイアルが2つあり、それぞれにカシリビマブ300㎎とイムデビマブ300㎎が含まれています。このバイアルの全量を各2本、点滴バックに注入して使用します。

点滴静注セット1332は1バイアルが11.1mLであり、それぞれにカシリビマブ1332㎎とイムデビマブ1332㎎が含まれています。これから各5mLを測り取って点滴バッグに注入するわけですね。
濃度はどちらも同じになります。点滴静注セット300は1回使い切りですが、1332は2回測り取れる関係で少し多めに入っているわけです。(2回測り取って少し余るくらい)

以上ロナプリーブについて分かっていることを書いてみました。
使える患者の範囲が限られていたり、点滴なので使用に手間がかかるデメリットはありますが、新型コロナウイルスの治療を目的として作られた新しい作用機序の薬です。今度新たな新型コロナウイルスの治療が生まれるきっかけになるかもしれません。インフルエンザと同じくらい簡単に治療できるようになって欲しいですね。

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