オスタバロ皮下注カートリッジ1.5㎎

骨の薬

2023年1月30日に新しい骨粗鬆症治療薬のオスタバロ®皮下注カートリッジが発売されました。うちにもMRさんがきて紹介していきました。確かに面白い薬剤だなと思いましたし、早速採用する病院も出てくるでしょう。今回の記事ではこのオスタバロ®を紹介します。いざ処方が来ても大丈夫なように予習して頂けると幸いです。


オスタバロ®皮下注カートリッジの有効成分はアバロパラチドといい、これは副甲状腺ホルモン製剤です。正確には副甲状腺ホルモン関連タンパク質(以下PTHrP)のN末端から34個のアミノ酸配列の一部を改変したポリペプチドです。
※PTHrPとは正常組織や癌組織など多くの組織で検出される、副甲状腺ホルモン(以下PTH)とほぼ同じ作用を発揮するペプチドです。

PTHは血中カルシウム濃度を上昇させるホルモンです。骨から血中へのカルシウムの遊離、腎臓でのカルシウムの再吸収を促進することで、血液中にカルシウムが遊離します。
PHTは持続的に作用すると骨吸収を促進(つまり破骨細胞が活性化し、血中にカルシウムが遊離)しますが、間欠的に投与すると逆に骨芽細胞が活性化し、骨形成が優位になることが知られています。
そのためPTH製剤は1日1回や週に1回のように間欠的に投与することで骨形成を促進するわけですね。オスタバロ®の適応は「骨折の危険性の高い骨粗鬆症」となっています。他のPTH製剤のテリボン®皮下注オートインジェクターやフォルテオ®皮下注と一緒ですね。

それではオスタバロ®の特徴について見ていきましょう。

・用法について
オスタバロ®は「成人には1日1回アバロパラチドとして80μgを皮下に注射する」となっています。使用単位は1回80μgだけなので、インスリン注射のように単位を調節することはありません。なお使用できる期間は18ヶ月までとなっています。
フォルテオ®皮下注やテリボン®皮下注オートインジェクターは24ヶ月までですので、この辺は間違えないようにしないとですね。

・薬局で提供するのはカートリッジと針
オスタバロ®は後述しますがオスタバロインジェクターという電動式注入器に、薬剤の入ったカートリッジを装着して使用することになります。電動式注入器は病院で提供されます。薬局で処方箋に基づいて調剤するのはカートリッジと針です。

電動式中注入器が病院で提供される際に注入器加算300点が加算されることになります。これにより病院は購入して患者に提供しても損はしないようになっているわけですね。
薬局ではカートリッジの薬剤料が算定できます。オスタバロ®皮下注用カートリッジは現在の規格は1.5㎎(0.75mL)だけです。これで2週間分になります。薬価は1筒16128円です。

・注射針について
オスタバロ®は後述する電動式注入器に針を装着して使うことになります。テリボン®皮下注オートインジェクターのように針が内蔵されているわけではありません。フォルテオ®皮下注のように針は別途処方してもらい、自分で取り付ける形になります。
現在販売されているA型専用注射針は概ね適合しますが、一部使えないものもあるので注意しましょう。


・保管は冷所
オスタバロ®皮下注カートリッジは冷所保管になります。薬局が卸から入荷したものは当然冷蔵庫で保管することになりますが、患者に提供後のカートリッジは電動式注入器に装着していることになります。そのため患者は電動式注入器ごと冷蔵庫で保管することになります。この場合は付属している冷所保存ケースに入れてから冷蔵庫に入れる必要があるので注意しましょう。


・副作用について
添付文書によると5%以上の副作用として悪心、浮動性めまい、高カルシウム血症があります。この中で最も注意すべきは高カルシウム血症でしょう。アバロパラチドは副甲状腺ホルモン製剤です。前述したように副甲状腺ホルモンは本来は骨からカルシウムを血中に溶け出させ、血中カルシウム濃度を上昇させるホルモンです。これを間欠的に投与すると骨芽細胞が活性化し、骨形成を促進するわけでしたね。しかし血中カルシウム濃度を増加させるホルモンであることには変わりありません。骨形成が促進する前にどうしても血中カルシウムが高くなりすぎ、高カルシウム血症になるリスクがあります。
重要な基本的注意にも以下のような記載があります。
「本剤の薬理作用により、投与約4時間後を最大として一過性の血清カルシウム値上昇がみられる。」
※高カルシウム血症については過去記事を参照して下さい ⇒ 高カルシウム血症

活性化ビタミンD3製剤、ジギタリス製剤も血中カルシウム濃度を増加させるので、併用には注意が必要です。
また「重要な基本的注意」に以下のような記載があります。

本剤投与直後から数時間後にかけて、一過性の急激な血圧低下に伴う起立性低血圧、めまい、動悸、頻脈、意識消失、転倒等があらわれることがある。投与開始後数ヵ月以上を経て初めて発現することもあるので、本剤投与時には以下の点に留意するよう患者に指導すること。
・投与後30分程度はできる限り安静にすること。
・投与後に血圧低下、めまい、立ちくらみ、動悸、気分不良、悪心、顔面蒼白、冷汗等が生じた場合には、症状がおさまるまで座るか横になること。

これはテリボン®皮下注オートインジェクター、フォルテオ®皮下注も一緒です。注射後しばらくは安静が必要ですね。

・注入器は電動式
オスタバロ®の最大の特徴はオスタバロインジェクターという電動式注入器を用いることでしょう。メーカーもこれを売りにしていますからね。
高齢者向けに作られたので、基本的には電源ボタンと決定ボタン以外は使うことはほとんどありません。カートリッジの取り付け、針の取り付け、空打ち、実際の注射も画面上で教えてくれます。
実際の使い方はこちらを確認してください ⇒ オスタバロインジェクター取扱説明書


実際にMRの人が薬局に製剤見本を持ってきてくれて見てみましたが、使いやすいかどうか微妙ですね。個人的には針刺し事故のリスクもないオートインジェクターで、週に2回だけの使用で済むテリボン®皮下注オートインジェクターが一番な気がします。しかし今回のように機器が注射をサポートしてくれるのはユニークで面白いですね。薬局で調剤するのはカートリッジと針だけですが、そのカートリッジをインジェクターに装着する必要があります。高齢者で上手く扱えない事も想定されます。そのようなケースではこちらが代わりに装着する必要があるでしょう。いつ処方が来ても大丈夫なように、取扱説明書を読んだり、MRに頼んで製剤見本を見せてもらうなどして、使い方を理解しておきましょう。

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