医療費控除を詳しく解説

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会社勤めの方はもう年末調整は終わっていると思います。サラリーマンのほとんどが年末調整だけで確定申告は必要ない人が多いと思いますが、一部の人は医療費控除やふるさと納税による確定申告で節税をする人もいると思います。今回はいつもと趣旨を変えて確定申告のための知識としての記事を書いてみました。
このブログはあくまで薬や医療に関するものなので、他の節税については触れず、医療費控除を詳しく解説したいと思います。私ジジネコはファイナンシャルプランナー1級を保持しているので、そこそこの知識は持っていると思います。ぜひ今回の記事を参考にして、確定申告の前に役立てて下さい。

まず医療費控除の概要についておさらいしましょう。
医療費控除は確定申告をすることによって、一定以上の支払った医療費を所得から控除できる仕組みです。本人、生計を一にする配偶者や親族のために支払った医療費が対象です。(親族とは6親等以内血族と3親等内の姻族です)
ここで注意したいのは生計を一にする親族なので、扶養である必要はありません。例えば夫婦共働きでそれぞれ稼ぎがあっても、夫が妻の医療費を代わりに支払った場合なら、支払った医療費を夫の医療費控除に充てられます。
生計を一にするとは必ずしも同居が要件ではありません。例えば下宿中の大学生の子供に毎月仕送りをしており、子供はそれで生計を立てている場合、子供が払った医療費は親の医療費控除の対象となります。夫婦で別居していて、それぞれ自分の稼ぎで生活している場合は不可ですね。

次に控除される医療費の金額を見てみましょう。
控除される金額は以下のように計算されます。

支払った医療費の総額とは窓口負担の額です。そこから民間の医療保険や助成などで補填される分があったらそれを引き、そこから総所得金額の5%か10万円の低い方を引いた額が控除されます。
総所得金額とは給与所得の他に事業所得や不動産所得等を合算した額ですね。まあ給与所得(収入ではなく所得です)が200万円を超えれば、その5%は10万円以上になるので、フルタイムで勤務している人なら大抵は「支払った医療費の合計が10万円を超えたらその分が控除される」と考えて大丈夫でしょう。ちなみに医療費控除の額は200万円が限度となります。

さて医療費控除の概要は分かったと思うので、具体的にどのようなものが控除の対象になるのか確認してみましょう。

病気、怪我の治療費
これは誰もが理解しているものでしょう。病院での診察代や入院費の他に検査費用、薬局で出された薬代などですね。
ちなみにPCR検査の代金も医師の判断により必要と認められたものなら控除の対象になります。念のためと自己判断で各自検査したものについては医療費控除の対象になりません。ただし検査の結果陽性であり、それにより引き続き治療が行われた場合は控除の対象となります。

基本的には医療費控除は実際に行われた治療における費用が控除される仕組みです。そのため陰性確認の検査や予防接種などは対象となりません。しかし検査結果により治療が行われた場合には、その検査は治療に先立って行われた(つまり診察と同じ)とみなされるので、控除の対象になるわけですね。
なお医師の判断により行われたPCR検査は、たとえ陰性であっても、診察と同じなので控除の対象となります。
同じ理由で健康診断や人間ドックの費用は控除の対象になりませんが、それにより異常が発見され、治療が開始した場合は、検査費用も控除の対象になります。

治療費には保険医療機関だけでなく柔道整復師、はり師、きゅう師等に支払う費用も含まれます。これも治療だからですね。ただし柔道整復師でも接骨院で単なるマッサージをした場合は対象外です。
またレーシック手術やICL治療(眼内コンタクトレンズ)の費用も対象です。これも視力回復のための治療だからです。

・薬局での医薬品や衛生用品の費用

薬局でのOTCや絆創膏、ガーゼなどの購入費用は医療費控除の対象です。ただしこれもあくまで治療に対するための費用なので、疲労回復や健康増進のためのビタミン剤等は対象外です。
絆創膏やガーゼは治療のために用いられますが、体温計や血圧計は治療のために用いられないので対象外です。
その他の衛生用品や医療材料に関しても治療のために使ったものであれば認められますが、テーピング、綿棒などは判断が難しいですね。例えば骨折や脱臼した箇所の固定にテーピングを使うなら大丈夫でしょうけど、スポーツで怪我の防止に使う場合は無理でしょう。綿棒も傷口に薬を塗るのに使うなら大丈夫でしょうが、耳かきに使うのであれば認められないと思います。
この辺りは税務署によって、あるいは税務署の担当者によっても判断が分かれると思います。

※よく医療費控除の説明でOTCの漢方薬は対象外と書かれたものが見られますが、治療に必要なものであれば認められます。漢方薬はその性質上、疾病の予防や健康の増進に用いることができるものが多いので、このように認識されています。しかし例えば風邪をひいて葛根湯を購入した場合などは大丈夫でしょう。この辺もどのような経緯で、何のために購入したかで判断が分かれます。キチンと記録をとっておくようにしましょう。

・通院、入院の交通費
病院に行くための交通費が認められるのは周知の事実と思います。交通費は一般的には公共交通機関が対象です。タクシーは基本的には認められません。しかしやむを得ない場合は認められます。例えば深夜に病院に行かなくてはならないケースや、脚が不自由のため電車やバスの利用が困難な場合ですね。
自家用車を利用したことによるガソリン代や駐車場代は認められていません。これは例外がありません。交通費は他者のサービスに対する支払いに認められているため、自家用車は対象外とされています。
また里帰り出産のための交通費は対象外とされています。里帰り出産はあくまで自己都合だからです。

交通費には本人だけでなく、付き添いの人の分も含まれます(必要なケースだけです)小さな子供の通院に親が付きそう場合や、体が不自由だったり認知症の人にその子供や介護士等が付き添うケースですね。あくまで本人だけでの通院が困難な場合に限られるの注意が必要です。

・出産費用
分娩費、入院費の他に妊娠中の定期検診も控除の対象です。これは出産のために必要なものだからですね。出産後の1ヶ月検診も含まれます。妊娠検査薬の購入費用は対象外です。
無痛分娩における費用も控除の対象となりますが、無痛分娩のための受講費用は対象外とされています。
また不妊治療も対象となります。体外受精費用、人工授精費用の他に、ある医療機関で不妊治療をしたがダメだった時、他の医院を紹介された場合の紹介料も含まれます。
不妊治療は高額になるケースが多いですが、自治体から助成金が出ることが多いです。しかし助成金をあてても足りない部分に関しては忘れずに医療費控除するようにしましょう。

・その他
寝たきりの人に対する紙オムツ代も医師の証明書があれば認められます。
クアハウスの利用料金も医師の証明書があれば認められます。
※クアハウスとは温泉利用型健康増進施設のことです。あまり馴染みがないかもしれませんが、温泉に入ったり運動をしたりする多目的型の保養施設です。リウマチや神経痛、運動障害の人に対しては温泉療養指示書を書いてもらえることがあります。

セルフメディケーション減税などについても書きたかったですが、ボリュームが凄くなってしまうので、今回はこの辺にしておきます。
普段は薬や病気など医療に関することだけ書くようにしていますが、医療費控除は一応関連があるので書いてみました。ファイナンシャルプランナーとしての勉強も薬剤師としての勉強と同じくらいやっているので、もし誰かからご要望があれば、FPの知識を活用した生活レベル改善ブログも書いてみたいです。

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