ヒヤリ・ハット分析 バルプロ酸ナトリウムと併用時のラモトリギン

ヒヤリ・ハット

外来が暇なときはよく、公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業の事例に目を通してます。単なる名称が似ていたとか簡単なものもあれば、正しい知識をつけなければ大きな事故につながりそうなものまで様々です。その中で改めて見直しておいた方がよさそうな事例について紹介したいと思います。

「患者はラミクタール錠とセレニカR錠を併用して服用していた。今回、ラミクタール錠の投与量が1日200mgから300mgへ変更になった。添付文書ではバルプロ酸ナトリウム併用時のラミクタール錠の上限が1日200mgであるため、疑義照会を行った結果、ラミクタール錠が1日200mgへ変更になった。」

ラミクタール®の使用量はてんかん患者に用いる場合、双極性障害における気分エピソードの再発・再燃抑制に用いる場合のいずれも、1日最大400㎎までとなっております。しかしバルプロ酸ナトリウムの併用時は1日最大200㎎までです。
この理由について見てみましょう。

ラモトリギン、バルプロ酸ナトリウムはいずれも肝臓でグルクロン酸抱合され、その後尿中に排出されます。つまりこの2つを併用するとグルクロン酸抱合が競合し、代謝が抑制され、血中濃度が上がることになります。
※バルプロ酸ナトリウムとラモトリギンを併用すると、ラモトリギンの血中濃度は2倍以上になるようです。
どちらの薬物も他にもグルクロン酸抱合される薬物と併用すると、同様に血中濃度が上昇することになります。

ラミクタール®の添付文書を見てみましょう。
「用法及び用量」の項目に通常の使用量の他に、「バルプロ酸ナトリウムを併用する場合」の使用量、「グルクロン酸抱合を誘導する薬剤を併用する場合」の使用量が書かれています。
バルプロ酸ナトリウムを併用する場合は代謝が抑制されるため、当然使用量は少なくなります。結果、1日最大400㎎が200㎎に減薬になります。
グルクロン酸抱合を誘導する薬剤を併用する時は、代謝が促進される形になります。しかし1日最大量は400㎎のままです。後述しますが、血中濃度の上昇が副作用につながるので、1日400㎎以上は使わないで欲しいと受け取れます。

また注意として「本剤のグルクロン酸抱合に対する影響が明らかでない薬剤による併用療法では、バルプロ酸ナトリウムを併用する場合の用法及び用量に従うこと。」と記載されています。
とにかく血中濃度が過度に上がってしまうリスクは避けて欲しいみたいですね。

デパケン®の添付文書を見てみましょう。
「用法及び用量」の項目にはてんかん、躁病及び躁うつ病の躁症状、片頭痛発作の発症抑制のいずれもラモトリギンとの併用で、使用量を減らす旨は書かれていません。
ラモトリギンについては「併用注意」の項目に書かれています。
※ロラゼパムもグルクロン酸抱合を受けるので、ラモトリギンと同様に「併用注意」の項目に記載ありです。

バルプロ酸ナトリウムはラモトリギンに比べて、グルクロン酸抱合の競合による相互作用についてはずいぶん甘めな印象です。
これについてはラモトリギンの副作用である中毒性表皮壊死症候群が原因と思われます。
※中毒性表皮壊死症候群についてはこちらの記事を見直してください。
ラモトリギンは血中濃度が高くなると中毒性表皮壊死症候群のリスクが高くなります。添付文書にも「警告」に記載されています。
バルプロ酸ナトリウムも中毒性表皮壊死症候群を起こしますが、ラモトリギンに比べてその頻度は低いようです。添付文書にも「警告」に記載はなく、「副作用」の項目にあるだけです。

以上分析してみました。
薬物動態からして血中濃度の上昇や低下を起こす組み合わせは多数ありますが、実際には併用注意程度の記載で、そこまで気にしないケースがほとんどです。しかしラモトリギンのように、それによって重大な副作用を起こす可能性のある薬については要注意ですね。また似たように事例についてはブログで紹介し、注意を促したいと思います。

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