ゾコーバ錠の予習

感染症の薬

11月22日に塩野義製薬のゾコーバ®錠が緊急承認されました。これは有効な感染症対策が行える可能性がある場合に、特例承認よりさらに早く承認する制度です。通常は有効性が「確認」される必要がありますが、緊急承認は有効性が「推定」されればOKとなります。臨床試験も第2相試験まででOKです。(通常は第3相試験まで必要)
12月からすでに使用される予定ですので、今回の記事で予習しておいて下さい。


ゾコーバ®錠の有効成分はエンシトレルビルといい、ウイルスのメインプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)阻害薬です。これはパキロビットパックのニルマトレルビルと同じ作用機序です。この作用機序をおさらいしましょう。

新型コロナウイルスは1本鎖プラス鎖RNAウイルスです。これはゲノムRNAがmRNAとしての役割を持ちます。ゲノムRNAからタンパク合成が行われますが、この時にメインプロテアーゼが働きます。このメインプロテアーゼを阻害することで、タンパク合成を阻害し、結果的にウイルス増殖が抑えられるわけです。

正確には翻訳されたばかりのタンパクはあらゆるタンパクが結合した複合タンパクです。これをプロテアーゼが切り取って、それぞれのウイルスタンパクにすることになります。この時のプロテアーゼの1種がメインプロテアーゼ(3CLプロテアーゼ)なわけです。

作用機序は分かりましたでしょうか?パキロビット®パックは3CLプロテアーゼ阻害薬のニルマトレルビルの他に、ニルマトレルビルの効果を長持ちさせるために、代謝酵素であるCYP3A4阻害薬のリトナビルとの合剤にしていましたが、ゾコーバ®錠ではエンシトレルビルだけになります。
それでは具体的な特徴を見ていきましょう。

・服用の仕方
「通常、12歳以上の小児及び成人にはエンシトレルビルとして 1日目は 375mgを、2日目から 5日目は 125mgを 1日 1回経口投与する
となっています。ゾコーバ錠の規格は125㎎なので、初日だけ3錠を1日1回、2日目からは1錠を1日1回服用することになります。

なお用法・用量に関する注意事項に「SARS-CoV-2による感染症の症状が発現してから速やかに投与を開始すること。本剤の有効性は症状発現から 3日目までに投与開始された患者において推定された。」とあります。
他のコロナ治療薬と同様、なるべく早めに服用した方がいいのは変わりません。パキロビット®パックは発症から5日以内なので、これに比べると少し急がなくてはなりません。

・対象患者は軽症~中等症患者
塩野義の治験データによると「オミクロン株に特徴的な鼻水、のどの痛み、せき、発熱、倦怠(けんたい)感の5症状が改善する時間を7日程度にし、24時間短くする効果がある」とされています。ただし重症化を防ぐ効果は確認されていないようです。
パキロビット®パックは重症化を防ぐために使われますが、ゾコーバ®は重症化防止には使われません。軽症~中等症患者に使用して、症状の改善を早めるのに用いることになります。従来の新型コロナウイルス治療薬は重症化リスクの高い患者を対象としてきましたが、ゾコーバ®は重症化リスクの低い患者に用いることになります。これがゾコーバ®最大の特徴と言えるでしょう。
また「高熱・強い咳症状・強い咽頭痛等の症状がある者に処方を検討すること」とされています。症状を軽くする効果が確認されている治療薬なので、そもそも症状が軽い人には不要なのでしょう。

・併用禁忌が多い
有効成分のエンシトレルビルは代謝酵素であるCYP3A4の阻害作用の他に、薬物を体外に排出するトランスポーターのP糖タンパク、BCRPの阻害作用、薬物を肝臓に取り込むトランスポーターのOATP1B1、OATP1B3阻害作用を有します。
そのため非常に多くの薬が併用禁忌になります。添付文書に記載されているものだけでもこれだけあります↓

暗記するのは困難なので、実際に扱う際は併用薬を1個1個確認するしかないでしょう。

・妊婦への使用は禁忌
妊婦および妊娠している可能性のある人には禁忌となります(パキロビット®パックは有益投与)。動物実験で催奇形性や流産が認められているようです。

・肝機能障害、腎機能障害の患者への使用は不明
肝機能障害患者、腎機能障害患者に対する臨床試験は行われていないようです。ただしどちらもコルヒチンを使用している場合は禁忌とされています。
※コルヒチンそのものは併用注意となります。ただし肝機能障害、腎機能障害の場合のみ併用禁忌になります
これはエンシトレルビルの併用によりコルヒチンの血中濃度が上昇するためです。
コルヒチンはCYP3A4で代謝され、P糖タンパクによって排出されます。そして胆汁中、尿中のそれぞれに排出されます。エンシトレルビルにCYP3A4、P糖タンパク阻害作用があること、コルヒチンは胆汁中、尿中に排泄されることを考慮すれば、併用禁忌になることが理解できると思います。
なおコルヒチンの副作用には再生不良性貧血、末梢神経障害、下痢などがあります。


以上ゾコーバ®錠の特徴をあげてみました。総括してみると個人的には若い人向けな薬に思えます。若者なら重症化リスクも低いでしょうし、併用薬もあまりありません。肝機能障害、腎機能障害の臨床試験データはありませんが、若者なら該当する人は少ないでしょう。

ゾコーバ®錠は12月から使用開始の予定ですが、最初の2週間はゾコーバ®錠を使用できるのはパキロビット®パックの取り扱い実績のある医療機関、薬局に限定されます。(その後はこの要件はなくなる予定です)
またあらかじめ登録を行っておく必要があります。
⇒ ゾコーバ登録センター

ゾコーバ®錠は緊急承認のため、まだ分からない事が多いですが、重症化リスクの低い患者に使用できること、症状の緩和に有効なことを加味すれば、それなりに価値がある薬でしょう。今後正式承認されるころにはさらに多くの情報が集まっているはずです。また詳しいことが分かったら記事にします。

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