ケレンディア錠

腎・泌尿器科の薬

今年の6月よりケレンディア®錠が発売されます。2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に有効な薬で、パンフレットには腎臓の炎症と線維化を抑制すると書いてあります。たしかに今までにない薬であり、糖尿病患者が透析になるのを減少させる可能性が高い素晴らしい薬です。しかし炎症と線維化についての説明はなく、2,3ページ程度のパンプレットで詳しく理解するには情報が不十分です。そのため今回私がもう少し詳しくまとめてみました。今回の記事でケレンディア®錠がなぜ糖尿病における腎臓病に有効なのか、従来のミネラルコルチコイド受容体拮抗薬とどう違うのかを理解してもらえればと思います。


まず始めに糖尿病が腎臓にどのような影響をおよぼすか見ていきましょう。ご存知のように糖尿病は腎機能を悪化させます。透析の原因になるのは糖尿病性腎症が1位です。
原因は糸球体の障害にあります。細い血管は血糖値が高くなると障害を受けやすいからですね。糖尿病性網膜症も同様です。

しかしそれだけではなく、近年の研究で糖尿病は腎臓の炎症と線維化が生じることが分かってきています。様々な原因が考えられており、正確に解明されたわけではありませんが、糖尿病では糸球体基底膜からインターロイキンやTNFαなどのサイトカインが分泌され、糸球体基底膜では軽度の炎症が慢性的に生じています。炎症により障害された組織は再生や修復を行います。
※再生とは組織の機能が正常に戻ること、修復とは一部の機能障害を残すことを意味します。

しかし慢性的な炎症が生じると組織の再生や修復が不完全となり、高度の機能不全を生じます。これが線維化です。通常炎症が起きると、線維芽細胞が細胞外マトリクス(細胞外に存在する糖やタンパク質の複合体)を構成するコラーゲンを産生し修復の材料としますが、慢性的な炎症は過剰な修復により、コラーゲンが線維芽細胞に吸収されずに沈着してしまいます。これにより組織の硬化が生じます。これも線維化の特徴です。

線維化のイメージ(肺の場合)

ここまでの説明で糖尿病患者は腎臓の炎症と線維化が生じていることが理解できたでしょうか?
腎臓が線維化すると虚血、それに伴う低酸素状態となり、腎機能が悪化していきます。そしてミネラルコルチコイド受容体(以下MR受容体)を刺激することにより腎組織の炎症、線維化が促進します。
ここでMR受容体の働きを確認しておきましょう。

内因性ステロイドのアルドステロンの働きを確認しましょう。アルドステロンはMR受容体に結合すると複合体を形成します。この複合体がmRNAに結合しタンパク質誘導を行います。
⇒アルドステロン誘導タンパク質によって尿細管側のNaチャネルが促進され、抗利尿効果を生じます。尿細管腔のNa濃度が上昇することによって二次的にNa⁺K⁺ATPaseが活性化され、さらにKチャネルも活性化されます。

このようにMR受容体はリガンドが結合すると複合体を形成し、これがmRNAに結合して様々なタンパク誘導が生じ、生理活性を示すわけです。このタンパク誘導は抗利尿作用を生じるだけではなく炎症、線維化、内皮機能異常など様々な生理作用を起こし、臓器障害を進展させことが分かってきました。

ケレンディア®錠の有効成分であるフィネレノンはこのMR受容体を遮断します。これによりアルドステロンの作用を阻害し、薬理作用を生じるわけです。それでは特徴について見ていきましょう。

・適応について
ケレンディア®錠の適応は「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」です。2型糖尿病を合併する慢性腎臓病に対して有効なのは前述した内容で理解できたと思います。しかし従来のMR受容体拮抗薬とは適応が異なりますので、比較しておきましょう。

作用機序としては同じですが、適応はいずれも異なります。ケレンディア®錠もいずれは高血圧症の適応を取得するのではと思います。MR受容体を遮断すれば利尿作用により血圧が下がるのは間違いないですからね。
なお末期腎不全、透析中の場合は使用できません。これは高カリウム血症のリスクが高くなるからですね。
また血清カリウム値が5.5mEq/Lを超えている場合は禁忌ですので、この辺も注意しましょう。
高カリウム血症の症状としては悪心・嘔吐、四肢や口周りのしびれ、筋力低下、不整脈などがあります。その辺の症状が起きていないか確認するようにしましょう。

・非ステロイド骨格である
MR受容体拮抗薬の中でもスピロノラクトン、エプレレノンはステロイド骨格をもっています。またスピロノラクトンはMR受容体へ選択性が低い薬物です、そのため性ホルモン様作用を起こしてしまい、これが女性化乳房、月経異常などの副作用の原因になります。エプレレノンはスピロノラクトンに比べてMR受容体に対する選択性が高くなっていますが、それでもステロイド骨格をもつので、スピロノラクトンほどではありませんが、同様の副作用があります。
エキサレノンはステロイド骨格をもたないので、性ホルモン様作用による副作用がありません。そしてフィネレノンも同様に非ステロイド骨格なので女性化乳房や月経異常などの副作用の記載はありません。

そのためスピロノラクトン、エプレレノンに比べて副作用は格段に少なくなっています。

・心保護作用も期待できる
MR受容体は腎臓だけでなく、全身の様々な組織に分布しています。MR受容体を遮断することで組織の炎症、線維化が抑制できることは前述したとおりです。そのため心臓のMR受容体を遮断すれば心保護作用を得られるでしょう。実際に添付文書の「薬効薬理」の項目に

「MRが過剰活性化すると、腎臓や心血管系において、炎症、線維化、ナトリウム貯留や臓器肥大が生じる。フィネレノンはMRに結合することで、MRの過剰活性化を抑制する」

「虚血・再灌流誘発慢性腎臓病モデルラットにおいて、フィネレノンは腎機能障害を軽減し、線維化を抑制した。また、デスオキシコルチコステロン酢酸エステル-6-(DOCA-salt)誘発高血圧症モデルラットにおいて、フィネレノンは心肥大及び線維化を抑制し、腎肥大及びタンパク尿の発現を抑制した。

との記載があります。心保護作用は間違いなくあるはずです。実際にアルダクトン®Aがうっ血性心不全、セララ®が慢性心不全に適応を取得しているので、いずれミネブロ®やケレンディア®も心不全への適応が追加されるでしょう。

・併用薬に注意
フィネレノンはCYP3A4によって代謝されます。そのためCYP3A4を阻害する薬物との併用が禁忌になります。

イトラコナゾールとクラリスロマイシンは確実に覚えておきましょう。その他には禁忌ではありませんがエリスロマイシン、ベラパミル、フルボキサミン、グレープフルーツジュースも注意が必要です。またCYP3A4を誘導する薬物としてリファンピシン、カルバマゼピンも気を付けなくてはなりません。これらはいずれも「併用注意」です。

・注意すべき副作用は高カリウム血症
最も多い副作用は高カリウム血症です。これは他のMR受容体拮抗薬と同様ですね。復習になりますがアルドステロンの作用を阻害することにより、腎毛細血管のNaポンプ(Na⁺K⁺ATPase)、尿細管のKチャネルが抑制されるわけですからね。

ケレンディア®錠の高カリウム血症の発生率は8.8%です。ミネブロ®は1.7%、セララ®は高血圧症の場合で1.7%、慢性心不全の場合で7.3%であることから、かなり高めであることは理解できると思います。


ケレンディア®錠がなぜ糖尿病が合併する慢性腎臓病に有効か、注意点など分かったでしょうか?慢性腎臓病の治療薬はACE阻害薬、ARBがありましたが、近年SGLT2阻害薬(フォシーガ®)が加わり、さらにMR受容体拮抗薬が追加されました。腎機能の悪化により透析になるとQOLは著しく低下します。これを防ぐための手段が1つでも多くなることは嬉しい限りです。またMR受容体拮抗薬は腎保護作用だけでなく、心保護作用、血管保護作用も期待でき、思ったよりずっと大きな可能性を秘めています。今後も新たなMR受容体拮抗薬の登場に期待しましょう。

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