ロケルマ懸濁用散

電解質に対する薬

2021年6月よりロケルマ®懸濁用散の投薬期間制限が解除されました。今まで取り扱いの無かった薬局もこれを機に採用するところも出てくると思います。いい機会なので今回はロケルマ®懸濁用散について解説します。

ロケルマ®の有効成分はジルコニウムシクロケイ酸ナトリウム水和物といって、高K血症治療薬です。腸管内でKイオンを吸着し、Hイオン、Naイオンと交換することによって、血清K濃度を低下させます。
これまでにもポリスチレンスルホン酸カルシウム(カリメート®、アーガメイト®)やポリスチレンスルホン酸ナトリウム(ケイキサレート®)などがありました。これらとの違いを中心に見ていきましょう。

・従来のものと構造が異なる
ポリスチレンスルホン酸カルシウム、ポリスチレンスルホン酸ナトリウムはポリマー製剤でした。
ポリマーとは単量体(モノマー)が複数鎖状や網状に結合した重合体のことをいいます。
ポリスチレンスルホン酸カルシウムの構造式↓

ポリマー製剤は水の吸着によって膨張する性質があります。そのため便秘や腸管突孔、腸閉塞などの副作用がありました。(カリメート®、アーガメイト®は腸閉塞に禁忌。ケイキサレートは禁忌ではない)

これに対してロケルマ®は無機化合物の非ポリマー製剤です。
(つまり炭素原子を含まない)
※環の中にKイオンを吸着する↓

非ポリマー製剤は水分を含んで膨張しません。そのため腸管突孔や腸閉塞や副作用はないとされています。(便秘の副作用はあり)
胃では作用せず、腸全体で作用します。Kイオンを吸着し、代わりにHイオンやNaイオンを交換するためですね。胃はpHが低いので、Hイオンを放出するのが困難だからです。

・適応症の違い
カリメート®、アーガメイト®、ケイキサレート®の適応は「急性及び慢性腎不全症に伴う高K血症」でした。これに対してロケルマ®の適応は「高K血症」です。
使える患者さんの状態が広がった形になります。ただし効果が出るのが緩徐なため、緊急治療には用いられません。

・飲み方が複雑
ロケルマの服用方は以下のようになります。

開始時(補正期)
1回10gを水45mLに懸濁して1日3回服用。これを2日間。状態に応じて3日間まで延長可。

開始時以降(維持期)
1回5gを水45mLに懸濁して1日1回。

血液透析中の患者
非透析日に1回5gを水45mLに懸濁して1日1回。

※全共通事項
増量は5gずつとし、1週間以上間隔を空ける。1日最大15gまで。

透析患者と非透析患者で用法が異なるのが特に注意が必要ですね。
また補正期から維持期への切り替えも注意が必要です。1回量も服用回数も異なるのですから。

・副作用は低K血症に注意
これは作用からして当たり前ですね。
添付文書によると低K血症の発現率は11.5%です。まあまあ高めですね。
その他の副作用にはうっ血性心不全があります。Kを吸着してNaを放出するので当然血清Na濃度が高くなり、うっ血性心不全のリスクは高くなります。息切れや浮腫などの症状がないか注意しましょう。

以上ロケルマ®について書いてみました。
使い方が複雑なデメリットはありますが、従来のものは1日2~3回で分服していたことに比べると、開始時以外は1日1回でよいロケルマ®はとても使い易いのではないでしょうか?また膨張しないので副作用も軽減されています。
なおカリメート®、アーガメイト®、ケイキサレート®に比べて、味もなく飲みやすという声も聞いています(従来のはどうやってもマズイ)。今度はなるべくロケルマ®を使って患者さんの負担を軽減来て頂けたらと思います。

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