東洋医学の理論② 気・血・津液

漢方薬
前回の記事に引き続き東洋医学の理論についてです。
東洋医学の理論を説明するのにはそれなりのボリュームになるので、もうあと何回かに分けて書きます。合間に別の記事を挟むかもしれませんが、気長にお付き合いいただけると幸いです。

今回の記事では気・血・津液について説明します。
人体はその機能により五臓六腑に分けられると考えされていることは前回説明しましたが、人体そのものを構成するのは気・血・津液であると考えられています(気・血・津液が循環することによって人体を構成する)。これらを1個ずつ見てみましょう。

まず気についてです。
これが最も重要とされているもので、生命活動の根幹となるエネルギーと考えましょう。
気は生まれつき持ったものと、後天的に取り入れたものがあるとされています。
先天的に持った気とは両親から受け継いだものであり、腎中の精気といいます。読んで字のごとく腎に蓄えられています。五行説からすると腎は水です。生命体は水から産まれたと考えるとイメージしやすいと思います。
後天的に取り入れた気は食べ物や呼吸によって外部から得たものです。食べ物から得た気は水穀の精気(または水穀の精微)といい、呼吸から得た気は清気といいます。水穀の精気は脾によって食べ物から取りだされ、清気は肺によって大気から取り込まれます。

気の働きについて見てみましょう。
・推動作用
押して動かす力のことです。血や津液が全身を循環したり、臓器が働くのは推動作用によるものです。
・防御作用
病気の原因(邪)が体内に侵入するのを防ぎます。体表面を覆って体を守っている気を衛気といいます。気が緩んで風邪をひくなどといったことがあると思いますが、まさに衛気がなくなったために邪の侵入を許したからですね。
・固摂作用
体液が血管から出たり、汗や尿、よだれが出すぎないように調節しています。
・温煦作用
温める力のことです。体温調節をします。冷え性の人は温煦作用が弱いためとされています。
・気化作用
気・血・津液・精の移り変わりをいいます。気から血が、血から精が作られるのは気化作用によるものです。また排泄物を尿や汗にするのも気化作用です。

気というとスピリチュアルなイメージかもしれませんが、「気合を入れる」「気を引き締める」「気が緩む」などといった表現は日常的に使いますし、気を用いないと説明できない症状があるもの事実です。
気が不足(気虚)すると風邪をひきやすくなる(防御作用の低下)、冷え性(温煦・気化作用の低下)、浮腫みやすくなる(固摂作用の低下)、疲れやすくなす(推動作用の低下)などの症状を起こします。
※この他にも気滞、気逆、気陥といったものもありますが、それは別の記事で説明します。

次に血(けつ)についてです。
血は世間一般的に認識されている血液と似ていますが、血液の成分にその循環も加えたものと思っていただければいいでしょう。
血は腎に蓄えられている精(腎精)と水穀の精気、清気、津液が肺でと合わさって生成されます。

血生成
血は気の推動作用によって循環し、固摂作用によって血管内に保たれ、気化作用によって精を作り出します。また血は気を運ぶ役割もしており、血と気はお互いを供給しあう関係であり、どちらかが不調になると、もう片方も不調になる傾向があります。血の働きは大きく2つあり、各組織に栄養を与える作用と、潤いをもたらす作用があります。
血を全員に送り出すのは心ですが、血を貯蔵し、血を体のどこにどの程度送るかを決めるのは肝です。そのため当帰芍薬散などは肝の補剤として働き、月経異常に効果を示すわけですね。
津液は血以外の水分と思っていただければいいです。
津液は津と液に分けられ、さらっとした液体が津であり、体表面を巡っています。汗や涙、よだれなどがこれにあたります。ドロッとした液体が液であり、体の深部を巡っています。関節液などがこれに該当しますね。

津液は食べ物から小腸、大腸で取り出され、それが脾に送られます。また腎に蓄えられている水分(腎陰)が腎の熱(腎陽)によって暖められ、これも脾に送られす。脾でこの2つの水分から津液が生成されます。生成した津液は脾から肺に送られ、肺から全身に送られます。
津液生成
津液の働きは体を潤すことと冷やすことです。
津液が不足するとほてり、乾燥、髪がパサつくなどを引き起こすことになります。また腸管内が乾燥し便秘の原因にもなります。一方津液が過剰な場合、発汗、鼻水、浮腫み、下痢などの症状を起こします。

とりあえず気・血・津液については何となく分かりましたでしょうか?気・血・津液ができる過程や、どこから全身に送られるかなどは、理解するのは大変だと思います。今後漢方薬を1個1個解説する記事を書くと思いますが、その際はこの記事と前回の記事を見直しながら、読んでいただけると幸いです。

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