フィコンパ錠

神経系の薬

昨日いつもおかかりの患者さんに、今度他でもらっている薬をうちの薬局でもらいたいので、用意してほしいと依頼を受けました。事前に教えてくれるのはこちらとしては大変ありがたいことです。お薬手帳をみせてもらうとフィコンパ®錠を服用していました。今回はフィコンパ®錠を学び直して、次の来局に備えたいと思います。

フィコンパ®錠の有効成分はペランパネルといい、抗てんかん薬です。今までの抗てんかん薬はNaチャネル遮断薬、Caチャネル遮断薬、グルタミン酸受容体阻害薬、ベンゾジアゼピン系薬物などがありました。ペランパネルは従来のものと少し異なっています。
ペランパネルは選択的AMPA型グルタミン酸受容体拮抗薬です。
ここで脳の神経伝達についておさらいしておきましょう。脳の神経伝達にはグルタミン酸作動性神経とGABA作動性神経があります。

グルタミン酸作動性神経はグルタミン酸を放出することにより、シナプス節後ニューロンを興奮させます。※グルタミン酸受容体は陽イオンチャネル内蔵型受容体であり、刺激により脱分極が起こる
GABA作動性神経はGABAを放出することにより、シナプス節後ニューロンを抑制します。※GABA受容体はClチャネル内蔵型受容体であり、刺激により過分極が起こる


グルタミン酸受容体にはNMDA受容体、AMPA受容体、カイニン酸受容体があります。
NMDA受容体は主にCaイオンが流入し、記憶、学習の神経回路の形成、痛覚神経の伝達に関係します。また過度な刺激によって神経細胞の変性の原因にもなります。※詳しくはこちらの記事も参照にして下さい ⇒ 筋萎縮性側索硬化症
AMPA受容体は主にNaイオンが流入し、中枢神経系のシナプスの興奮の刺激伝達に関与しています。
カイニン酸受容体は海馬に多く存在し、シナプス前ニューロンの神経伝達物質の放出に関与しています。

てんかんは神経細胞の過剰興奮によって起こるため、てんかんを防止するにはこのAMPA受容体を遮断するのが有効なのは理解できたと思います。ペランパネルはAMPA受容体を選択的かつ非競合的に遮断することで抗てんかん効果を示します。

次にペランパネルの特徴について見てみましょう。
フィコンパ錠の適応は以下のものになります。
・てんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)
他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の強直間代発作に対する抗てんかん薬との併用療法
作用機序が他の抗てんかん薬と異なるので、他の抗てんかん薬で効果不十分な強直間代発作での併用療法として用いられます。ただし単剤での強直間代発作に対する使用経験が無いので注意が必要です。

次に副作用について見てみましょう。
副作用で目立ったものはめまいと傾眠です。そのため用法は1日1回就寝前となっています。
Tmaxは約1時間程度であり、最も血中濃度の高い時間帯を寝て過ごせるためです。
ただし半減期は100時間前後あるので、日中のめまいや傾眠にも注意が必要です。(AMPA受容体を非競合的に遮断するので半減期は長くなります)
その他には重大な副作用に易刺激性・攻撃性があります。添付文書上では易刺激性6.8%、攻撃性3.5%なので、決して低い数字ではないでしょう。

抗てんかん薬は多剤併用することが多いため、相互作用についても見ておきたいと思います。
ペランパネルはフェニトインやカルバマゼピンと併用すると代謝が促進され、血中濃度が低下することがあります。ペランパネルはCYP3A4で代謝されますが、フェニトインやカルバマゼピンはCYP3A4の酵素誘導をするためですね。
添付文書でも用法用量は
部分発作における併用療法では「本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回4~8mg、併用する場合の維持用量は1日1回8~12mgとする」
強直間代発作においては「本剤の代謝を促進する抗てんかん薬を併用しない場合の維持用量は1日1回8mg、併用する場合の維持用量は1日1回8~12mgとする」
となっています。代謝に影響のある併用薬がある時と無い時で、使用量が明確に記載されているのは珍しいですね。

一通りフィコンパ錠の復習は終わりました。来月に処方箋を持ってきてくれるので、それに備えてしっかり説明できるようにしておきます。

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