サムスカを今一度おさらい

腎・泌尿器科の薬

先日久しぶりに実家に行き親の様子を見てきました。母が心不全であり状態はどうか気になっていたので、服用中の薬も確認してきました。服用中の薬の中にサムスカ®OD錠(15)がありました。心不全にはよい効果を発揮しますが、副作用や日常の注意も多い薬です。今回はサムスカ®を詳しく解説し、注意点を学び直して頂ければと思います。

サムスカ®の有効成分はトルバプタンといい、バソプレシンV2受容体拮抗薬です。
まずはバゾプレシンの作用についておさらいしましょう。バゾプレシンは抗利尿ホルモンであり、集合管にあるV2受容体に結合します。V2受容体はGs共役型受容体であり、活性化されたAキナーゼが尿細管腔に存在する水チャネルを活性化します。

これにより水の再吸収が促進し、抗利尿効果をしめします。
トルバプタンはV2受容体を阻害することによりバソプレシンの働きが阻害され、結果として利尿効果をしめします。

他の利尿薬との違いを知るために、他の利尿薬の働きを簡単におさらいしましょう。
ループ利尿薬はNa⁺K⁺2Cl⁻共輸送系を、チアジド系利尿薬はNa⁺Cl⁻共輸送系を阻害します。
アルドステロンはミネラルコルチコイド受容体と複合体を形成し、これがNaチャネルを阻害しますが、K保持性利尿薬はアルドステロンとミネラルコルチコイド受容体の結合を阻害します。

いずれもナトリウムの再吸収を抑制することにより利尿効果を示します。ナトリウムは尿の浸透圧に最も大きく影響を与える電解質です。つまり「ナトリウムと水は一緒に移動する」と認識してよいと思います。
※尿中のナトリウム濃度が上昇することによって、尿の浸透圧が上がり、それにより腎血管から水が移動する

上記の2つの図を見て分かると思いますが、トルバプタンの他の利尿薬との違いはナトリウムなどの電解質に影響を与えず、水だけを排出することです。
他の利尿薬は高血圧や浮腫に用いられますが、トルバプタンは内容が大分異なります。規格は7.5㎎、15㎎、30㎎。顆粒1%がありますが、規格によっても適応は異なります。適応は以下のようになります。

・ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な心不全における体液貯留(7.5㎎、15㎎、顆粒1%)
ループ利尿薬等の他の利尿薬で効果不十分な肝硬変における体液貯留(7.5㎎、顆粒1%)
・抗利尿ホルモン不適合分泌症候群における低ナトリウム血症の改善(全規格)
・腎容積が既に増大しており、かつ、腎容積の増大速度が速い常染色体優性多発性嚢胞腎の進行抑制(全規格)

心不全では心拍出量の低下により浮腫や肺うっ血がおきます。肝硬変では肝細胞の線維化により肝臓内への血液の流入が阻害され、門脈圧が上昇し、浮腫や腹水ががおきます。
いずれも血漿浸透圧の上昇により、体がこれ以上血液から水分を失わせまいと、バソプレシンの分泌が増加し、悪循環になります。トルバプタンがバソプレシンの働きを阻害するので、心不全や肝硬変による浮腫に効果を発揮します。ただし、まずは他の利尿薬を使って、期待した効果が得られなければ使うといった過程を踏まなければなりません。

抗利尿ホルモン不適合分泌症候群はSIADHともいい、血漿浸透圧が低下した状態(ナトリウムなどの濃度が低い)にもかかわらず、バソプレシンの分泌が抑制されない病態です。本来は血漿浸透圧が低下するとバソプレシンの分泌が低下し、血液からの水の分泌が抑制され、ナトリウムなどの濃度が改善します。しかしSIADHではナトリウムなどの濃度が低下してもバソプレシンの分泌が抑制されず、低ナトリウム血症を起こします。トルバプタンはバソプレシンの働きを阻害するので低ナトリウム血症の改善に有効ですね。

常染色体優性多発性嚢胞腎とはADPKDともいい、遺伝性の疾患です。腎臓には両側に嚢胞がありますが、この嚢胞が加齢とともに増え、さらに肥大してしまいます。※嚢胞とは水分が溜まった袋です
嚢胞が増加、肥大すると腎臓が圧迫され、腎機能が低下します。(高齢になるまで腎機能が悪化し続けると透析になることがあります)
この嚢胞の形成、増殖にはバソプレシンが関係しているとされています(V2受容体刺激により産生されるcAMPが嚢胞を形成、増殖するようです)。トルバプタンがV2受容体を遮断することでcAMPの産生が抑制され、嚢胞の増加を肥大を防ぐわけですね。

ここまででサムスカ®の働きや効能は分かったと思います。次に注意点を見てみましょう。
まず副作用についてですが利尿効果によるものが多く上げられます。
口喝、頻尿、多飲症などですね。これらはみな利尿によるものなので分かりやすいと思います。
また急激な血清ナトリウム濃度の上昇や高ナトリウム血症などもあります。水のみが大量に排泄されるため、血中ナトリウム濃度は高くなるからですね。同様に血液から水が失われることにより高血圧症、高尿酸血症、血栓塞栓症を起こすこともあります。これらは血液濃度が高くなったことが原因ですね。その他に重大な副作用としては肝機能障害があります。
サムスカ®の副作用の多くは水利尿による脱水によるものなので、水分を多くとる必要があります。

次にサムスカの使用が禁忌の状態について確認しましょう。
・口渇を感じない又は水分摂取が困難な患者
水の再吸収の抑制で大量の水が排泄されるので、そのぶん水を摂らないといけません。水分摂取が困難な状態では脱水を起こすだけなので使えませんね。口喝を感じないと脱水気味であることに気付けないので、この場合もダメです。

・無尿の患者(心不全、肝硬変における体液貯留、SIADHにおける低ナトリウム血症の場合)
トルバプタンは水の再吸収の阻害により利尿を起こす作用機序です。そもそも糸球体で尿の産生が行われていない場合は、再吸収する水が無いので効果が得られません。

・高ナトリウム血症の患者(心不全、肝硬変における体液貯留、常染色体優性多発性嚢胞腎の場合
先述したように水分のみの排出により血清ナトリウム濃度が上昇します。SIADHのケースでは禁忌になっていません。そもそもSIADHでは低ナトリウム血症になるので、高ナトリウム血症になっているというのがありえないのでしょう。

・重篤な腎機能障害のある患者(常染色体優性多発性嚢胞腎の場合)
重篤な腎機能障害とはeGFR 15(mL/min/1.73m2)未満をさします。
詳しくはこちらをご覧下さい ⇒ 「腎機能の検査値①クレアチニン、eGFR」
利尿により腎血流が低下し、腎機能は低下しやすくなります。ADPKDはただでさえ腎機能が低下しやすいので腎機能障害では禁忌となっています。

肝機能障害又はその既往歴のある患者
トルバプタンの重大な副作用に肝機能障害があります。ただしADPKD合併症で肝機能障害になった場合は除きます。ADPKDでは腎臓以外でも嚢胞ができることがあり、腎臓の次に起きやすいのが肝臓です。ADPKDによる肝機能障害では、そもそもADPKDの治療をする方が優先だからですね。

長くなりましたが、サムスカ®について一通りまとめてみました。身内が使っているので、他の薬以上に余計に勉強し、詳しく知っておきたいと思いました。母は毎月病院に行っているので、毎回血液検査もしているでしょう。今度行ったときは検査結果も見てみようと思います。こまめに水を飲んでいるかなど、生活面でのチェックも必要ですね。

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