エフメノカプセルをしっかり理解 ①作用機序、適応について

内分泌・代謝性疾患の薬

公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業でエフメノ®カプセルによるものがありました。エフメノ®カプセルは昨年発売されたばかりの比較的新しい薬であり、また使う事例も限られています。いい機会なので今回の記事では性ホルモンと子宮内膜症についてしっかり学びエフメノ®カプセルの中身について理解を深め、次回の記事ではヒヤリ・ハットについて紹介したいと思います。


まずはエフメノ®カプセルの中身について学びましょう。
エフメノ®カプセルの有効成分はプロゲステロンです。最初にプロゲステロンについておさらいします。
プロゲステロンは黄体から分泌されるホルモンです。卵胞が卵胞刺激ホルモンによって成熟し、排卵したのち黄体に変化します。

卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が、黄体からは黄体ホルモン(プロゲステロン)が分泌されます。

プロゲステロンは増殖した子宮内膜を受精卵が着床しやすいようにし、また体温を上げる働きがあります。生理前の基礎体温が上昇するのはこのためですね。
ここまででプロゲステロンの分泌と働きについては分かったでしょうか?


次に子宮内膜症について確認しましょう。
子宮内膜症は本来は子宮の内側に存在する子宮内膜組織が、卵巣や卵管、腹膜など別の組織で増殖や剥離を起こす病気です。

子宮内膜組織が増殖すると炎症や出血を起こし、プロスタグランジンが分泌されます。プロスタグランジンは痛みの原因となりますが、これが子宮内膜症のある様々な場所から分泌されるので月経痛や腹痛、性交痛などが酷くなります。また子宮外で増殖した子宮内膜組織は臓器同士の癒着を起こします。これにより卵巣や卵管などの異常が起き、不妊の原因にもなります。子宮内膜症の代表的な症状が痛みと不妊なのはこれで理解できると思います。
卵巣や卵巣周辺の組織に子宮内膜症ができると、出血が卵巣内にたまり、古くなるとチョコレートのようになります。これをチョコレート嚢胞といいます。

チョコレート嚢胞は大きくなり骨盤内の他の臓器と癒着を起こし、激しい痛みを生じます。また卵巣と卵管が癒着すると排卵しにくくなったり、卵管が卵子を取り込みにくくなります。そのため不妊の原因となります。

ここまでで子宮内膜症について理解できましたかね?
それでは治療について見てみましょう。子宮内膜はエストロゲン依存性に増殖します。一方プロゲステロンは子宮内膜の増殖を抑制します。またプロゲステロンを投与すると最終的にエストロゲン、プロゲステロンの分泌量が減少します。これはプロゲステロンが増加したことによりnegative feedbackが働き、視床下部からの性腺刺激ホルモン放出ホルモンの分泌抑制が起きるからですね。


つまりプロゲステロンにより子宮内膜症が抑制されるのが理解できますね。
子宮内膜症の治療に有効なプロゲステロン製剤は合成プロゲステロンであるジドロゲステロン(デュファストン®錠)があります。

今回の記事で取り上げているエフメノ®カプセルの有効成分は天然のプロゲステロンなので、子宮内膜症を抑制するはずですが、適応は以下のようになっています。

更年期障害及び卵巣欠落症状に対する卵胞ホルモン剤投与時の子宮内膜増殖症の発症抑制

卵胞ホルモン投与時とはホルモン補充療法(以下HRT)のことです。更年期障害は閉経に伴うエストロゲンの減少により生じるものです。そのためエストロゲンを補充することにより改善します。しかしエストロゲンを投与することによりエストロゲンの子宮内膜増殖作用により、子宮内膜症を併発することがあります。さらに卵巣癌や乳癌のリスクも高くなるとの報告もあります。
その際に子宮内膜の増殖を抑制するプロゲステロンを併用することにより子宮内膜症や卵巣癌、乳癌の発症リスクが抑えられるわけですね。 
つまり子宮内膜症の治療に単剤で使われるのではなく、あくまでHRTによる子宮内膜症の発症抑制に用いられることになるわけです。

以上の内容でプロゲステロン子宮内膜症の関係、エフメノ®カプセルの適応については理解できたでしょうか?次回の記事ではエフメノ®カプセルにおけるヒヤリ・ハットの紹介と、その内容の考察について紹介します。

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