先日薬局に届いた日経DIにビレーズトリエアロスフィア®が2020年10月1日をもって長期投薬が可能になったとの記事がありました。残念ながら当薬局では採用していませんが、今回は自分の勉強もかねて、ビレーズトリエアロスフィア®について書いてみようと思います。
今回はビレーズトリエアロスフィア®の他の合剤とは違う特徴について詳しく見てみます。
・適応症はCOPDのみ
テリルジーエリプタ®はCOPDと気管支喘息の両方に適応をとっていますが、ビレーズトリエアロスフィア®はCOPDのみです。
(エナジア吸入用カプセル®は気管支喘息のみ)
添付文書では
「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の諸症状の緩解(吸入ステロイド剤、長時間作用性吸入抗コリン剤及び長時間作用性吸入β2刺激剤の併用が必要な場合)」
と書かれています。
COPDの治療の基本はLAMAです。添付文書から読み取れることはビベスピエアロスフィア®(グリコトロピウム+ホルモテロール)を使っても効果不十分なら、それにICSを追加しなさいってとこでしょうか?
・LABAの効果発現が早い
ビレーズトリエアロスフィア®の有効成分は ICS:ブテソニド LABA:ホルモテロール LAMA:グリコピロニウム です。
ホルモテロールはLABAの中でも非常に効果発現が早いです。
エナジア吸入用カプセル®のLABAのインダカテロールはTmaxが0.25時間(15分)、テリルジーエリプタ®のLABAのビランテロールはTmaxが0.12時間(7.2分)、ビレーズトリエアロスフィア®のLABAのホルモテロールはTmaxが0.1時間(6分)です。
これを見て分かるように、気管支拡張作用はビレーズトリエアロスフィア®が最も早く出ることになります。
ホルモテロールはシムビコート®にも含まれるLABAです。シムビコート®がアドエア®やレルベア®などと違い、気管支喘息の発作時にも使用可能であるように、ホルモテロールの効果発現がいかに早いかが分かると思います。
現在ビレーズトリエアロスフィア®の適応症はCOPDだけですが、テリルジーエリプタ®がCOPDと気管支喘息の両方に適応をとったように、ビレーズトリエアロスフィア®も気管支喘息の適応が追加されるかもしれません。その時はおそらく発作時の頓服も使用可能になるでしょう。
・吸入回数が多い
エナジア吸入用カプセル®やテリルジーエリプタ®は1回1吸入、1日1回ですが、ビレーズトリエアロスフィア®は1回2吸入、1日2回です。
3成分合剤の吸入薬の中で最大のデメリットだと思います。
・担体を用いて、薬剤を効率よく届かせる
ビレーズトリエアロスフィア®は3成分を含有していますが、これは多孔性粒子の担体に吸着されています。
※多孔性粒子
沢山の穴が開いている担体。表面積が大きくなり、多くの薬物が吸着可能になる。また通常の担体に比べて比重が軽くなる。
この担体が肺の隅々まで到達するのにちょうどいい大きさみたいです。
また多孔性粒子であるため担体の比重が軽くなり、その結果吸い込んだ空気中に長く滞留し、肺の中枢から末梢まで薬剤が到達可能になっています。
以上書いてみました。
中身としてはなかなか良い薬だと思いますが、COPDにしか適応がないこと、テリルジーエリプタ®やエナジア吸入用カプセル®に比べて使用回数が多いことなどからして、使い勝手はイマイチな印象です。
しかし加圧噴霧式定量吸入器(pMDI)であることから、吸い込む力の弱くなった人には使いやすいメリットもあります。なるべく色んな剤形の薬剤が出てくれることによって、個々にあった薬剤を選択できるようになればいいですね。
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