つまりARBであるバルサルタンとサクビトリルの複合体となります。(モル比で1:1みたいです)
そもそもネプリライシンとは何でしょうか?
その前に内因性ナトリウム利尿ペプチドについておさらいしておきましょう。
内因性ナトリウム利尿ペプチドにはANP、BNP、CNPがあります。
ANP:心房性ナトリウム利尿ペプチド(心房から分泌される)
BNP:脳性ナトリウム利尿ペプチド (脳・心室から分泌される)
CNP:C 型ナトリウム利尿ペプチド (血管内皮細胞から分泌される)
ANP、BNPはGC-A受容体に結合し血管拡張作用と利尿作用を起こします。
薬理の作用機序を図に示しておきました。
GCを活性化し、最終的にGキナーゼがミオシンの脱リン酸化を促進し、平滑筋が弛緩します。 これにより血管拡張作用を起こし、末梢血管抵抗が低下します。つまり心臓の後負荷が低下します。
利尿作用の詳しい作用機序は不明ですが、腎臓における血流の増加(平滑筋弛緩作用による)と水・Naの再吸収抑制作用を起こすためと考えられています。 利尿作用により循環体液量が減少し、心臓の前負荷が軽減します。
ネプリライシンとは内因性ナトリウム利尿ペプチドを分解する酵素です。
つまりネプリライシンを阻害することによりANPやBNPが増え、血管拡張、利尿作用をしめします。
エンレスト錠は体内でサクビトリルとバルサルタンに分解されます。 バルサルタンがAT1受容体を阻害することによりレニン-アンギオテンシン-アルドステロン系を抑制し、サクビトリルがネプライシンを阻害することによって血管拡張、利尿作用を示します。 これらの作用機序からすると慢性心不全に効果を示すのは容易に想像できますね。
エンレスト錠ですが適応は「慢性心不全、ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る」となっています。
つまりいきなりエンレスト錠を用いるのではなく、他剤からの切り替えになります。ACE阻害薬やARBで効果不十分なケースで切り替えることになるでしょう。
禁忌に関してはバルサルタンと同じものと、いくつか追加になっているものがあります。
1:本剤の成分に対して過敏症の既往歴のある患者
2:ACE阻害薬投与中の患者、あるいは投与中止から36時間以内の患者
⇒ARBでは併用注意
3:血管浮腫の既往歴のある患者
⇒ACE阻害薬と一緒(ARBは禁忌でない)
4:アリスキレンフマル酸円を投与中の糖尿病患者
⇒ARBと一緒
5:重度の肝障害のある患者
⇒バルサルタンは禁忌でない。ロサルタンカリウムは禁忌。
6:妊婦又は妊娠している可能性のある女性
⇒ABRと一緒
以上サラッと書いてみました。 慢性心不全治療薬はβ遮断薬、ACE阻害薬、ARB、利尿剤でしたが、これに新たな選択肢が加わった形です。今度の治療方針がどうなるかじっくり見ていきます。
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