東洋医学の理論③ 精、陰陽論、虚実

漢方薬
前回の記事の続きです。
気・血・津液について解説しましたが、今回の記事で精と基本的な理論を紹介して東洋医学の理論の記事は終えたいと思います。

まずは精についてです。

精は気・血・津液を作り出す根源とされています。
精は母親から受け継ぎ、生まれ持った先天の精と、食べ物(水穀の精微)から取り込まれ作られる後天の精があります。この辺は気とそっくりですね。
先天の精は腎に蓄えられ、後天の精は脾で作られます。先天の精と後天の精が組み合わさり、腎に蓄えられます。これを腎精といいます。
腎精
腎精は必要に応じて腎から体の各部位に送られます
腎精は骨や脳、脊髄、末梢神経を作り出し、生殖機能、認知機能、聴覚機能に関与するとされています。
先天の精が不足すると発育不良、小児ぜんそくの原因になります。
先天の精が足りなくてもその後、後天の精を十分に補えば結果として腎精は作られます。発育不良や小児ぜんそくが成長とともに改善してくケースが多いのはこのためですね。
腎精の不足は不妊症、健忘、尿失禁になる原因とされています。これらは加齢やそれに伴う脾の機能の低下で後天の精が不足し、結果として腎精が不足するためですね。
例えば八味地黄丸は尿漏れや高齢者の喘息に用いますが、これは腎に対する補剤として地黄や山茱萸、脾に対する補剤として山薬を含んでいるからですね。

前回の記事に引き続き、ここまでは体を構成する要素について書きました。
次からは体の状態に対する考えを書いていきます。
東洋医学では人体も自然の一部と考えていることは以前の記事で書きました。
自然にはあらゆる事象で陰陽があるとされています。朝と夜、寒と熱、夏と冬などがそうですね。これを陰陽論といいます。

太極図
人体もこれの例外ではなく、陰陽論の考えがあてはまります。
・体のお腹側が陰、背中側が陽
(4足歩行をする動物では日の当たるのは背中側だからです)
・五臓が陰、六腑が陽
(食べ物から栄養素を消化・吸収・排泄するのが六腑、その働きをつかさどるのが五臓)

気は陽の性質を持ち、津液は陰の性質を持ちます。血は陰と陽の両方の性質を持ち合わせます。
各器官の状態にも陰陽があり、このバランスをとっていることにより健康を保っていますが、これが崩れることにより病気になるとされています。
また病気の原因を考える時は何かが不足している、何かが過剰になっているという虚実という考えをよく用います。(不足が虚、過剰が実ですね)
例えば気が不足する気虚では倦怠感をもたらし、血が足りなくなる血虚ではめまいが生じ、津液の流れが停滞し過剰になる(これを湿といいます)と浮腫や痰になります。
虚実の考えで病気の原因が分かったらこれを改善する補気薬、養血薬、利湿薬などを用いるわけですね。

とりあえず3回にわたって東洋医学の理論を書いてみました。
これだけで理論を完全に理解するのは到底無理ですし、説明できない事象も多いのも事実です。今後は実際に処方された薬を例にとって、東洋医学の理論に当てはめながら解説したいと思います。
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