緊急避妊薬 作用機序から使い方まで詳しく

内分泌・代謝性疾患の薬

昨年の10月に薬局で厚生労働省の検討会で、医師の処方箋なしに薬局での緊急避妊薬の販売についての議論が始まりました。現在は薬局で調剤する場合は医師の処方箋により、研修を受けた薬剤師が対応しなくてはなりません。しかし今後処方箋なしに販売可能になることも考えられますので、今のうちにしっかり予習しておきたいと思います。今回の記事では緊急避妊薬の作用機序から、使い方、副作用など幅広く学んでいきたいと思います。

緊急避妊薬を学ぶ前に、まずは月経や妊娠について確認しておきましょう。
まず始めに卵胞が卵巣で作られます。卵胞の最初の段階を原始卵胞と言います。この原始卵胞が卵胞刺激ホルモン(FSH)によってグラーフ卵胞(成熟卵胞)になりグラーフ卵胞は黄体形成ホルモン(LH)によって卵子を放出します。これが排卵です。

卵子を放出した卵胞は黄体となり、その後退化し白体となります。

ついでに性ホルモンの分泌についてもおさらいしておきましょう。 卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体形成ホルモン(LH) は下垂体前葉から放出されます。卵胞からは卵胞ホルモン(エストロゲン)が黄体からは黄体ホルモン(プロゲステロン)が放出されます。
※エストロゲンとプロゲステロンをまとめて女性ホルモンといいます


ここまでで卵胞の成熟から排卵までの流れは理解できたでしょうか?
次にこの過程における子宮内膜の状態について見てみましょう。卵胞からはエストロゲンが、黄体からはプロゲステロンが放出されます。

エストロゲンは子宮内膜を増殖し、LHサージ(大量のLHが分泌されること)の引き金になります。
プロゲステロンは増殖した子宮内膜を受精卵が着床しやすいようにします。またロゲステロンは体温を上げるので、排卵後は基礎体温が上昇します。

子宮内膜は増殖期を経て分泌期になると厚みを増して柔らかくなり、着床の準備を整えます。子宮内膜に受精卵が着床すれば妊娠します。着床が起きないと黄体が白体に退化するためプロゲステロンが分泌されなくなり、増殖した子宮内膜は剥がれ落ち、膣から血液と一緒に排出されます。これが月経ですね。

卵胞の成熟から排卵、着床までの流れ、その際の子宮内膜の変化について長々説明しましたが、次にこの記事の趣旨である緊急避妊薬の働きについて説明します。

緊急避妊薬の有効成分はレボノルゲストレルといい、商品名はノルレボ®といいます。
レノボノルゲストレルは黄体ホルモン(プロゲステロン)です。黄体ホルモンを投与することにより視床下部へのnegative feedbackが生じ、結果的LH(黄体形成ホルモン)の分泌が阻害されます。

LHの大量分泌(LHサージ)により排卵が生じるので、LHの分泌阻害により排卵が抑制されることが分かります。

エストロゲンが子宮内膜を増殖させるのに対し、黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑制します。レボノルゲストレルは黄体ホルモンなので、子宮内膜の増殖を直接抑制します。また外部から大量の黄体ホルモンが投与されたことにより、視床下部へのnegative feedbackが起き、FSH(卵胞刺激ホルモン)の分泌が抑制され、結果としてエストロゲンの分泌も抑制れます。エストロゲンの分泌が抑制されると、子宮内膜の増殖ができなくなります。これらの作用により子宮内膜の増殖が抑制され、受精卵の着床ができなくなります。

この「排卵抑制」と「受精卵の着床の阻害」の2つに働きにより避妊が可能になるわけですね。
レボノルゲストレルの働きが分かったところで、今度がノルレボ®錠の使い方を見てみましょう。

・服用のタイミング
ノルレボ®錠 は性交後72時間以内に1.5㎎を服用しなくてはなりません。ノルレボ®錠は1.5㎎錠なので1錠ですね。 早く服用すればその分効果が高いため、可能な限り早く服用する必要があります。

・副作用
主な副作用は消退出血です。消退出血とはエストロゲンとプロゲステロンの低下により子宮内膜が剥がれ落ちるため起きる出血です。原理としては月経と同じですが、ノルレボ®錠の場合、negative feedbackによりエストロゲンの分泌が抑制され、服用後は一時的にプロゲステロンが上昇しますが、その後エストロゲンと同様の原理で低下します。正常な月経に比べて子宮内膜の増殖が少ないので、月経に比べて出血が少ないのが特徴です。消退出血が起きれば、ひとまず避妊は成功しているとみてよいでしょう。通常服用後3日~3週間の間に消退出血が起き、2~3日程度続きます。
注意してほしいのは、避妊ができても必ず消退出血が起きるとは限りません。また出血が消退出血でなく不正出血のこともあります。そのため服用後しばらして受診する必要があります。
その他には頭痛、悪心、倦怠感、傾眠などがあります。悪心が13.9%と最多でしたね。服用から服用から2時間以内に嘔吐してしまった場合、充分に吸収されていない可能性があるため、再度服用する必要があります。

緊急避妊薬について避妊の原理から使い方までを一通りまとめてみました。
緊急避妊薬は望まない妊娠を避けたり、性被害による妊娠を防ぐのに有効な手段です。薬局で調剤するには必要な研修を受けた薬剤師が対応しなくてはなりません。できれば全薬局に最低1名は研修を受けた薬剤師が常駐して、速やかに対応できるようにして欲しいです。そして処方箋なしで販売が可能になった場合は、適切な服薬指導を出来るようにしましょう。

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