水いぼ、とびひ

疾病・病態
我が家の幼い娘に水いぼがでいてしまいました。最初は肩にできましたが、徐々に広がって首の下や腕にもできてきました。
水いぼ写真
水いぼなんて自分が子供のころ以来久しぶりに見た気がします。いい機会なので小児の皮膚疾患として多い、水いぼととびひについて解説しようと思います。

まずは水いぼについて説明します。

水いぼは正式名称は伝染性軟属腫といい、伝染性軟属腫ウイルスによる感染症です。通常は皮膚のバリア能でウイルスの侵入を防いでいますが、小児などはまだこのバリア能が不十分なため、ウイルスが侵入しやすい傾向にあります。水いぼが子供に多いのはこのためですね。皮膚に侵入したウイルスは軟属腫(いわゆる”いぼ”)を形成します。いぼを触っただけでは人に移ったりしませんが、いぼがつぶれたものを触ると人に感染することになります(タオルの共用でも感染します)。水いぼを搔き壊してしまうと感染が拡大し、症状が広がってしまう事になります。痛みや痒みがないのが特徴です。

水いぼの治療はいくつかあります。

・自然治癒
特に何もしないで自然に治るのを待ちます。自己の免疫でウイルスを駆除できればいぼは自然となくなります。ただしこれには数ヶ月~1年くらいを要することが多く、長いケースだと数年かかることもあります。

・外科的治療
ピンセットで摘み取ったり、液体窒素でいぼを凍結したりします。(凍結したいぼはそのうち剥がれ落ちることになります)

・薬物治療
薬物治療に関してはキチンとしたエビデンスのものがありません。まれにアシクロビルやヨクイニンエキスが処方されることがあります。ヨクイニンには免疫賦活作用と排膿作用があるためですね。医療用のヨクイニンエキス「コタロー」はざ瘡(にきび)に用いますが、OTCではイボにも適応があります。私が子供のころ水いぼができやすかったので、母親によくハト麦茶を飲まされていた記憶があります。気のせいかもしれませんが、多少は治りが早かった気がしますね。

次はとびひについての説明です。
とびひとは正式名称は伝染性膿痂疹といい、黄色ブドウ球菌や化膿レンサ球菌(A群β溶血性レンサ球菌ともいう)といった皮膚に常在する細菌による感染症です。これらの常在菌は通常では感染を起こしませんが、虫刺され、汗疹、湿疹などといった疾患で皮膚を掻き壊すと、そこで細菌が繁殖し感染を起こします。
痒みを伴うため患部を掻くことによって症状が広がります。
とびひには水疱を伴う水疱性膿痂疹かさぶたが出来る痂皮性膿痂疹があります。水疱性膿痂疹は黄色ブドウ球菌が、痂皮性膿痂疹は化膿レンサ球菌原因菌となります。

水疱性膿痂疹は水疱に細菌が含まれるため、水疱が破れた際に手を介して全身に広がりやすい傾向にあります。夏季に流行しやすいのが特徴です。痂皮性膿痂疹は炎症が強く、発熱やのどの痛みを伴うことがあります。こちらは流行時期がなく、一年中みられます。

とびひは細菌感染症なので、治療は抗生物質になります。5~7日間内服薬を用い、外用薬を併用することもあります。
水疱性膿痂疹はセフェム系、痂皮性膿痂疹はペニシリン系が用いられる傾向が高いようですね。外用薬はアクアチム®軟膏やフシジンレオ®軟膏が多い気がしますね。ちなみにゲンタマイシンは耐性菌が多いため、最近ではほとんど用いられないようですね。痒みの酷い時は抗ヒスタミン薬を併用したりします。
なお近年ではMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)による伝染性膿痂疹も増えています。MRSAはペニシリン系やセフェム系に耐性を持っており、通常の治療では効果があまり出ません。この場合はクラバモックス®やテトラサイクリン系抗生剤が有効とされています。

最後に娘の水いぼの治療について紹介します。
今回は水いぼをピンセットで取ることになりました。ペンレス®テープを処方され、次回受診日の予約の1時間半前に貼ってくるよう言われました。

ペンレステープ
ペンレス®テープはリドカインのテープです。つまり局所麻酔として用い、静脈留置針穿刺時の痛みの緩和、伝染性軟属腫摘除時の痛みの緩和、皮膚レーザー照射時の痛みの緩和に用いられます。
私が子供の頃はいきなりピンセットでつまみ取られたり、液体窒素で焼かれたりしていましたが、このお医者さんはちゃんと痛みまで考えてくれています。
外科的に水いぼを摘除すると、とびひの2次感染のリスクがありますので、大抵はイソジン外用液などが処方され、処置後の患部に塗るよう言われます。
さて幼い娘が水いぼ除去の痛みに耐えられるか?泣かないで終えられたらご褒美でも買ってあげることにします。
 
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