肺高血圧症

疾病・病態

先日薬局に肺高血圧症のWebシンポジウムの案内が来ました

最近は勉強会がほとんどWebになっているので、参加しやすいですね。
参加する予定ですが基礎知識があった方がより理解しやすいので、今回は予習もかねて肺高血圧症について書いてみようと思います。

肺高血圧症は肺動脈の動脈圧が上昇する疾患です
まずは心臓、肺、全身における血液循環についておさらいしておきましょう。
血液は左心房から動脈を介して全身に送られます。この時の血液は酸素を多く含んでいます(動脈血)。その後全身の組織に栄養と酸素を送り出し、毛細血管でガス交換をし、今度は二酸化炭素を多く含んだ血液(静脈血)が静脈を介して右心房に運ばれます。ここまでの流れを体循環(または大循環)といいます。

ガス交換
右心房に運ばれた血液は、今度は右心室から肺へ送られます。この時、右心室から肺に送られる血管を肺動脈といいます。全身に血液を送り届ける動脈は動脈血ですが、肺動脈は静脈血です。
肺に送られた血液はガス交換を行い、今度は酸素を多く含んだ血液を心臓(左心房)に送り戻すことになります。この時に肺から左心房に送られる血管を肺静脈といい、これは動脈血です。この流れを肺循環(または小循環)といいます。
心臓
心臓から血液を運び出す血管を動脈といい、心臓からの圧に耐えられるよう厚く弾力性がある構造をしています。
一方心臓に血液を送り届ける血管を静脈といい、血液量を調節できるよう薄く、しなやかな構造をしています。
これに対して酸素を多く含んだ血液を動脈血といい、二酸化炭素を多く含む血液を静脈血といいます。名前がややこしいので注意が必要ですね。

前置きが長くなりましたが、肺高血圧症の病態についてみてみましょう。

先述したように肺高血圧症は肺動脈圧が高くなる疾患です。
右心カテーテル検査による安静時肺動脈圧が25mmHg以上と定義されてます。

肺動脈圧が高くなると肺への血液の供給量が低下し、肺循環が低下します。すると肺でのガス交換が抑制されるため、全身へ送り出される酸素の量が低下することになります。その結果動悸、息切れ、疲労感、呼吸困難といった症状が出ます。さらに症状が進行すると浮腫み、咳、失神などの症状が出ます。

また肺動脈圧が高くなる結果、肺へ血液が送り出しにくくなり、右心室に負担がかかるようになります。結果として右心室が肥大を起こすようになります。

肺高血圧症の原因は様々です。日本循環器学会の肺高血圧症治療ガイドラインによると、原因によって次のように分類されています。

第 1 群 肺動脈性肺高血圧症(PAH)
第 2 群 左心性心疾患に伴う肺高血圧症
第 3 群 肺疾患および / または低酸素血症に伴う肺高血圧症
第 4 群 慢性血栓塞栓性肺高血圧症(CTEPH)
第 5 群 詳細不明な多因子のメカニズムに伴う肺高血圧症

今回は肺高血圧症の中で最も多い、肺動脈性肺高血圧症(PAH)について解説します。PAHは肺動脈そのものが原因で圧が高くなる疾患で、通常左心系の圧の上昇は起こりません。原因不明の特発性PAH、遺伝性PAH、薬物・毒物誘発性PAH、膠原病やHIV感染症、住血吸虫症などの各種疾患に伴うPAHなどがあります。

PAHの治療薬は肺動脈を拡張して肺動脈圧を下げることを目的とします。
主な治療薬はプロスタグランジンI2(PGI2)製剤、ホスホジテステラーゼ-Ⅴ(PDE-Ⅴ)阻害薬、エンドセリン受容体拮抗薬があります。

・PGI2製剤
PGI2受容体はGs共役型なので、血管拡張作用をしめす。
イロプトスト(ベンテイビス®)、エポプロステノール(フローラン®)、トレプロスチニル(トレプロスト®)、ベラプロスト(ケアロードLA®、ベラサスLA®)、セレキシパグ(ウプトラビ®
※ベラプロストのみ妊婦に禁忌

・PDE-Ⅴ阻害薬
グアニル酸シクラーゼの分解を阻害し、cGMPを増加させる。cGMPがGキナーゼを活性化し、ミオシンホスファターゼを活性化。平滑筋においてミオシンがアクチンと結合しなくなり、血管が拡張する。
硝酸系薬物、CYP3A4阻害薬と併用禁忌。
シルデナフィル(レバチオ®)、タダラフィル(アドルシカ®

・エンドセリン受容体拮抗薬
エンドセリンは血管内皮細胞から産生され、エンドセリン受容体を刺激する。エンドセリン受容体はGq共役型の受容体であり、血管を強力に収縮させる。そのためエンドセリン受容体を阻害することにより血管が拡張する。
肝機能障害に注意。
アンブリセンタン(ヴォリブリス®)、ボセンタン(トラクリア®)、マシテンタン(オプスミット®
とりあえず一通り予習は済みました。これで講習を受けられます。

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