アロマターゼ阻害薬

普段うちの門前医院にかかって、当薬局にも来局している患者さんが、他の薬局でもらっている薬をこちらで用意してもらえないかと相談を受けました。お薬手帳を見ると大学病院でレトロゾール®錠(2.5)「テバ」を処方されていました。来月に受診予定だそうなので、受診日までに用意しておき、来局時には速やかに対応できるようにしました。このように事前に処方される薬を教えてくれる患者さんは本当にありがたいです。この患者さんは閉経後乳癌の治療をしています。レトロゾール®錠はうちでは初めて採用するので、レトロゾールと一緒に他のアロマターゼ阻害薬について勉強し直そうと思います。

今回用意したレトロゾールの作用機序はアロマターゼ阻害薬です。アロマターゼ阻害薬にはレトロゾール(フェマーラ®)の他にもアナストロゾール(アリミデックス®)、エキセメスタン(アロマシン®)があります。
まずはアロマターゼ阻害薬について確認しましょう。
腫瘍には様々な種類がありますが、前立腺癌、乳癌、子宮癌にはホルモン依存性腫瘍と呼ばれているものがあります。今回は乳癌に絞って解説します。
乳癌の中には女性ホルモン(エストロゲン、プロゲステロン)を取り込んで増殖するタイプのものがあります。このタイプをホルモン依存性腫瘍といいます。女性ホルモンを取り込み、さらにエストロゲン受容体(ER)プロゲステロン受容体(PgR)を発現するため、組織中にERやPgRが一定量以上含まれていればホルモン依存性と判定します。
一方女性ホルモンに関係なく増殖するものをホルモン非依存性腫瘍といいます。だいたい乳癌患者の約70%程度がホルモン依存性です。
ホルモン依存性の乳癌は女性ホルモンの働きを阻害することにより、癌細胞の増殖を抑えられます。女性ホルモンでも主にエストロゲンが増殖に関与しているので、このエストロゲンの働きを抑制することで効果を発揮します。
性ホルモン
LHRHアナログ、抗エストロゲン薬を用いることによってエストロゲンの働きを抑制し、癌の増殖を抑制します。
・LHRHアナログ
⇒negative feedbackによりFSH、LHの分泌を抑制。結果としてエストロゲンの分泌が抑制される。
・抗エストロゲン薬
⇒直接エストロゲン受容体を遮断することで、エストロゲンの働きを抑制する。
この他にエストロゲンの生成を阻害することで、乳癌の増殖を抑制できます。これがアロマターゼ阻害薬です。
アロマターゼ
男性ホルモン(アンドロゲン)は精巣と副腎皮質の両方で産生されますが、副腎皮質由来のアンドロゲンは脂肪組織においてアロマターゼによりエストロゲンに変換されます。つまりこのアロマターゼを阻害することにより、末梢でのエストロゲンの働きを抑制できるわけですね。
今回紹介したレトロゾールや、アナストロゾール、エキセメスタンがアロマターゼ阻害薬になります。
レトロゾール、アナストロゾールはステロイド骨格を有しておらず、エキセメスタンはステロイド骨格を有しています。エキセメスタンはアロマターゼを不可逆的に阻害し、レトロゾール、アナストロゾールは可逆的に阻害するようですが、効果に差はないとされています。
アロマターゼ阻害薬の適応は閉経後乳癌です。閉経後のエストロゲンはほとんどがアンドロゲンに由来するためです。(閉経しているので卵胞からはエストロゲンが得られないですね)
一方LHRHアナログ製剤は閉経前乳癌に使用します。卵胞がある状態では卵胞から分泌されるエストロゲンの方が多いためですね。
抗エストロゲン薬のタモキシフェン(ノルバデックス®)、フルベストラント(フェソロデックス®)は閉経前、閉経後乳癌のどちらにも用いられます。トレミフェン(フェアストン®)は閉経後乳癌だけです。トレミフェンは適応外使用で閉経前乳癌に用いるくらいですし、実際には効果はあるでしょう。トレミフェンを閉経前乳癌に使用して、レセプトが通った事例もあります。
アロマターゼ阻害薬の副作用で最も注意すべきは骨粗鬆症です。
エストロゲンは骨吸収を抑制します。そのためエストロゲンの作用を阻害することにより、骨粗鬆症のリスクが高まるわけですね。
その他にもほてりや多汗などがあります。これもエストロゲンが少なくなったことによる副作用です。更年期障害と同じ症状ですね。この他には脂質異常症などもあります。詳しいメカニズムは分かりませんが、エストロゲンは脂質代謝にも影響しているようですね。
アロマターゼ阻害薬は5年間続けることが標準です。
今回相談に来た患者さんはまだ1年程度しか続けていませんので、今後も長期間にわたり続けることになります。途中で副作用が起きた時などは、速やかに気付いてもらえるよう、十分な説明をできるよう、今から備えます。
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