咳喘息

疾病・病態

最近は新型コロナウイルスの予防の影響か、風邪をひく人が少なくなりました。しかしたまに風邪をひく人が来局しますし、まれに風邪が治っても咳が続いて吸入ステロイドを使う人がいます。部下の薬剤師にこの患者の病名は何だと思うかと聞いてみたら答えられなくてショックでした。この場合は咳喘息によるものがほとんどです。今回は咳喘息について確認してほしいと思います。

咳喘息は慢性的に咳だけが続く気管支の病気のことをさします。喘鳴や呼吸困難を伴わず、慢性の咳(主に空咳)だけが唯一の症状です。呼吸機能は正常ですが、ピークフローに日内変動が見られます。

※ピークフロー
目一杯息を吸い込んで思い切り速く吐き出した際の最大の息の速さを示す値です。気管支の状態を客観的にみることができます。

 

咳喘息は気管が炎症を起こしていますが、肺の中の気管支までは炎症を起こしていません。一方気管支喘息は肺の中の気管支まで炎症を起こしている状態です。そのため咳喘息は空咳だけで喘鳴や呼吸困難は伴わないのに対し、気管支喘息は喘鳴や呼吸困難を生じることになります。

咳喘息が起こる原因として、風邪などの感染症、たばこの煙、気温や湿度の変化、運動、飲酒、ストレス、ハウスダストなどが挙げられます。アレルギーとの関与も指摘されています。(ほとんどが風邪の後に誘発されるケースです)
咳喘息の診断基準は以下のものを満たすときとされています。

1:喘鳴を伴わない咳が8週間以上続く
  聴診上もwheezingやrhonchiを認めない
  ※wheezing:笛声音「ヒューヒュー、ピーピー」
   rhonchi:いびき音「グーグー、ブーブー」
2:喘鳴、呼吸困難などを伴う喘息に今までにかかったことがない
3:8週間以内に風邪にかかっていない
4:気道が過敏になっている
5:気管支拡張薬が有効な場合
6:咳を引き起こすアレルギー物質などに反応して、咳が出る
7:胸部レントゲンで異常が見つからない

1、5の二つを満たすことで、咳喘息と簡易的に診断することもあります。
咳喘息の治療は気管支喘息と同様の吸入ステロイドや気管支拡張薬が中心となります。気管が炎症を起こしている状態なので当然ですね。通常の鎮咳薬はあまり効果がありません。

以前私が咳喘息を起こしたときの事例を紹介します。
風邪をひいて熱や鼻はおさまったのですが、咳だけが長期間続きました。咳はかなり激しく、あまりの咳で反射的に嘔吐を起こすほどでした。どうみでも咳喘息だろうと思ったので、職場の門前の医院を受診しました。しかし処方されたのはクラリス®(200)、メジコン®(15)、ムコダイン®(250)、麦門冬湯®でした。使っても症状が良くなるわけもなく、相変わらず激し咳と嘔吐を繰り返しました。埒が明かないと思ったので、門前医院の院長先生(最初に診察をしてくれたのは院長ではありません)に相談し、シムビコート®を処方してもらいました。すると使った翌日から症状は緩和し、数日で咳は消失しました。
(シムビコート®が私のお気に入りです。吸入ステロイドの他に気管支拡張薬も含んでおり、ホルモテロールは効果発現が極めて速く、喘息の発作時にも使用可能です。私が処方してもらう時はシムビコート®をお願いしています。)
咳喘息は放っておくと約30%が気管支喘息に移行すると言われています。風邪の後に咳がいつまでも続くようなら早めに受診し、吸入薬を使っていただくのが顕名です。

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