サイビスクディスポ関節注

骨の薬
当薬局の患者さんで半月板を損傷した影響で、変形性関節症になって治療中の患者さんがいます。定期的に受診し、リハビリを行い、鎮痛剤もトラムセット®も処方されています。毎回話を聞いていますが、先日膝にサイビスク®を使い始めたとのことでした。薬局勤務をしていると注射剤に触れる機会がどうしても少なくなるので、今回はこの患者さんが使っているサイビスク®ディスポ関節注について説明したいと思います。

サイビスク®の有効成分は“ヒアルロン酸ナトリウム架橋処理ポリマー”“ヒアルロン酸ナトリウム架橋処理ポリマービニルスルホン架橋体”です。成分名を聞いてもいまいちピンとこないかもしれません。簡単に言うとヒアルロン酸を架橋させ、高分子化させたものです。架橋させることによって、健常人の関節液に含まれるヒアルロン酸と同程度の分子量を持つようになります。通常のヒアルロン酸に比べてより弾粘性を有しており、関節においてクッションの役目を果たし、変形関節症の疼痛を緩和することになります。

適応は「保存的非薬物治療及び経口薬物治療が十分奏効しない疼痛を有する変形性膝関節症の患者の疼痛緩和」とされています。要はリハビリや鎮痛剤などを使っても中々良くならない変形関節症の痛みを軽減するといったところです。

ついでに変形関節症についてもおさらいしておきましょう。
変形関節症は加齢による関節軟骨の摩耗、半月板損傷や骨折などの後遺症、感染症などによる関節炎などが原因となって関節が破壊されたり変形したりする疾患です。治療に関してはNSAIDsやオピオイド系薬物による鎮痛・抗炎症、ステロイドの関節内注射による抗炎症、ヒアルロン酸の関節内注射による関節の保護などがあります。薬物療法と一緒にリハビリなどの非薬物療法が必要になります。

この患者さんは当初はステロイドの関節内注射をしていましたが、今回よりサイビスク®を使うことになったわけです。初期の頃は歩くのも大変そうでしたが、徐々に良くなっていきました。おそらくステロイドによる抗炎症効果が出て、関節の腫脹が取れてきたためと思われます。ステロイドは長期使用で感染症や骨粗鬆症などのリスクがあるため、腫脹が取れてきた段階でヒアルロン酸注に切り替えたというわけですね。

次はサイビスクの特徴について見てみましょう。

・投与回数が少ない
サイビスク®の最大の特徴は少ない回数で長期間の効果を発揮することです。
1週間に1回、1回2mLを間接腔内に注射し、これを3週間繰り返します。これによって効果が6ヶ月間持続します。
他のヒアルロン酸注射のスベニール®は1回1キットを1週間ごとに連続5回注射し、維持のためには2~4週間隔で投与を続けます。サイビスクは今までに比べて患者の普段が格段に少なくなっていることが分かります。

・適応は1つだけ

ヒアルロン酸注射のアルツ®ディスポ関節、スベニール®ディスポ関節は変形性膝関節症の他に肩関節周囲炎、関節リウマチにおける膝関節痛に適応があります。サイビスクは変形関節症のみです。しかも「保存的非薬物治療及び経口薬物治療が十分奏効しない疼痛を有する」という条件付きです。色々試してみたけどなかなか良くならない時に使えるといったイメージです。

・アレルギーに注意

サイビスク®は原料に鶏冠(ニワトリのトサカのことです)を使っています。そのため「鳥類のタンパク質、羽毛、卵に過敏症の既往歴のある患者」には禁忌とされています。言い方が回りくどいですが、卵アレルギーのある人には使えないと思っていいでしょう。

以上サイビスク®について簡単にまとめてみました。
変形関節症は進行すると関節の痛みや腫れの他に、可動域が制限されたり、関節が変形したりとADL(日常生活動作)が低下します。薬物療法とリハビリ、装具の装着など様々な保存療法が必要になります。ヒアルロン酸注射は痛みをとるだけでなく軟骨を保護し、関節の機能の一時的に回復させる効果もあります。しかし昔のヒアルロン酸注射は効果が短く、患者が頻繁に病院に通わないといけませんでした。サイビスク®は効果持続時間が比較的長く、患者のQOLを大きく向上させることが可能です。今後は1回注射すれば半年とか1年効果が続くなど、もっと使い易い製剤が出てくれることを期待しています。

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