腰痛の原因 すべり症、ヘルニア、脊柱管狭窄症の違い ②ヘルニアについて

疾病・病態

前回の記事の続きです。今回はヘルニアについて説明します。
まずはヘルニアという言葉について確認しましょう。
ヘルニアとは体の組織が本来の場所からはみ出した状態を指します。腸が鼠径部(脚の付け根)の筋膜からはみ出した鼠径ヘルニア(脱腸)、臍部(へそ)の筋膜からはみ出した状態を臍ヘルニア(でべそ)といいます。そして今回の記事でのテーマでもある腰でもヘルニアが生じます。腰でのヘルニアは椎間板におけるヘルニアです。

前回の記事の復習になりますが、脊椎は椎骨が重なってできています。そしてこの椎骨は椎間板といううクッションが存在します。

椎間板はゲル状の組織であり、中心部が髄核という柔らかい組織であり、その周辺を線維輪という硬い組織が覆っています。これが脊椎の衝撃を吸収しているわけですね。
椎間板への強い圧力や、悪い姿勢が続いたり、加齢による椎間板の変性により線維輪が壊れ、髄核が外に飛び出してしまうことがあります。これが椎間板ヘルニアです。
頸椎(首)と腰椎(腰)に負担がかかりやすく、この2か所がヘルニアが生じやすい箇所です。首で生じたものを頸椎椎間板ヘルニア腰で生じたものを腰椎椎間板ヘルニアといいますが、世間一般ではヘルニアというと腰椎椎間板ヘルニアをイメージしますね。

椎骨には椎体と椎弓の間に穴が空いていて(ここを脊柱管といいます)、ここに神経が通っています。椎間板が飛び出るとここの神経を圧迫するようになります。これにより様々な症状が出るわけですね。

主な症状としては腰痛や脚の痺れがあり、酷い時は脚が動かせなくなったりします。
腰椎には坐骨神経が分布しているので、坐骨神経を圧迫したことによる臀部から脚の裏側への痛みや痺れが出やすいのが特徴です。これを坐骨神経痛といいます。
またすべり症の時にも書きましたが、排尿を支配する神経を圧迫することによる排尿障害が生じることもあります。

腰椎椎間板ヘルニアの病態について理解できたでしょうか?次に治療を見てみましょう。
腰椎椎間板ヘルニアの約80%は自然治癒します。飛び出した椎間板が徐々に小さくなり、神経を圧迫しなくなることにより症状が消失します。そのため多くは保存療法になります。コルセットによる腰の負担の軽減、マッサージやリハビリなどですね。
痛みがひどい時はNSAIDsやプレガバリン(リリカ®)、ミロガバリン(タリージェ®)、オピオイド系鎮痛剤、ブロック注射などで痛みを軽減します。この辺りはすべり症と一緒ですね。

すべり症とヘルニアの痛みは神経障害性疼痛です。(侵害受容器を刺激するのが痛みの原因になるのではなく、神経に傷がついたことにより痛みを感じている状態です)
そのためリリカ®やタリージェ®が有効なのは理解できると思います。その他にもトリプタノール®などが有効ですね。

痛みが長期間続いたり、痛みや痺れが酷く、日常生活に支障をきたす場合は手術を検討します。手術では飛び出した椎間板を摘出したり、レーザーで飛び出した髄核を蒸発させたりします。椎間板を摘出したり、レーザーで焼くためには腰を切開しますが、内視鏡を用いて手術器具を挿入することにより、傷を最小限にするため、どちらも侵襲が少ないのが特徴です。

すべり症に続いてヘルニアについての説明もこれでとりあえず終わりです。
次回の脊柱管狭窄症の記事で、腰痛の原因となる3疾患の違いが分かると思います。何とか今年中に終わらせたいです。

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