腰痛の原因 すべり症、ヘルニア、脊柱管狭窄症の違い ①すべり症について

疾病・病態

どの薬局でも患者さんの大半は高齢の方なので腰痛を患っている人が多いですね。投薬時に話を聞くと「すべり症があって~」「昔からヘルニアで~」「脊柱管狭窄症なの~」などと言われることが多くあります。部下の薬剤師にこれらの違いが分かるか聞いてみたら、ほとんど理解していませんでした。薬剤師は病気そのものに関する知識が弱いのは否めませんが、これは知っておいて欲しいですね。今回は腰痛の原因となるこの3つの疾患について説明します。ボリュームが多いので3回に分けて書きます。3回ともお付き合い頂けると幸いです。

まず、すべり症について説明します。正確には腰椎すべり症といいますが、単にすべり症ということが多いですね。すべり症を理解するために、まずは脊椎(背骨)について見てみましょう。
脊椎は椎骨が重なって構成しています。上から頸椎(C1~7)、胸椎(T1~12)、腰椎(L1~5)、仙骨(S1~5)、尾骨に分けられます。

椎骨を上から1、2、3…と数えていきます。腰椎の上から4番目の椎骨ならL4という感じですね。

腰椎すべり症はこの椎骨がずれてしまった状態です。前にずれることも後ろにずれることもありますが、前にずれてしまうケースがほとんどです。
腰椎すべり症には分離すべり症変性すべり症があります。
椎骨の本体(前方の部分)を椎体、関節部分(後方の部分)を椎弓といいますが、疲労骨折により椎体と椎弓が分離してしまう事があります。これを腰椎分離症(または単に分離症)といいます。
※L5に好発します

この腰椎分離症に続発して椎骨がずれてしまうのが分離すべり症です。
スポーツ選手や仕事で腰を酷使する人がなりやすいタイプです。

一方変性すべり症は加齢などが原因となって、椎間板や靭帯が変性し、それに伴って椎骨がずれてしまうものをいいます。※L4に好発します
こちらは加齢による椎間板の変性が主な原因なので、中高年に多いのが特徴です。

分離すべり症は腰痛が生じやすく、また椎体と椎弓の分離部分で神経を圧迫することによる下肢の痛みや痺れ(坐骨神経痛)があるのも特徴です。
変性すべり症では椎間板の変性により脊柱管を狭窄させやすいため、脊柱管を通る神経を圧迫します。

これにより腰痛、下肢の痺れが生じます(腰痛は分離すべり症に比べて軽めです)。
歩くと臀部や太ももに痛みや痺れを感じますが、休息を取ると痛みは軽減します。しかし再び歩き始めると痛みや痺れが出ます。これを間欠性跛行(かんけつせいはこう)といい、脊柱管狭窄症と似た症状なのが特徴です。脊柱管には排尿を支配する神経も存在するため、これらが圧迫され排尿障害を起こすこともあります。

すべり症の治療について見てみましょう。
治療は理学療法と薬物療法の併用ですね。コルセットを用いて腰の負担を減らす保存療法を行いつつ、薬物療法で痛みの軽減を図ります。
用いられる薬物はNSAIDsやプレガバリン(リリカ®)、オピオイド系鎮痛剤ですね。痛みがひどい時はブロック注射(痛みの原因となる神経近くに行う局所麻酔)をすることもあります。
変性すべり症で間欠跛行がある場合は脊柱管の狭窄を伴っているので、脊柱管狭窄症の治療と同様にプロスタグランジン製剤(リマプロストアルファデクス)を用いることもあります。保存療法や薬物療法を用いても改善せず、日常生活が困難なケースでは手術を行うこともあります。

以上すべり症について書きました。
たった1つの疾患でも情報量が多くて大変です。次回以降はヘルニア、脊柱管狭窄症と続きますが、なるべくコンパクトにまとめるよう頑張ります。

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