ムルプレタ錠

血液系の薬
昨日の門前の医師からムルプレタ®錠の添付文書が欲しと言われました。
門前は診療所なので通常用いることはないと思うのですが、今度使用を考えているのでしょうか?使ったことのある薬局も少ないと思うので、今回はムルプレタ®錠の解説をしようと思います。

ムルプレタ®錠の有効成分はルストロンボパグといい、トロンボポエチン受容体の作動薬です。この作用機序によって血小板を増やすことになります。
まずは血小板のできる過程についておさらいしましょう。
赤血球、血小板、T細胞、B細胞、好酸球、好塩基球などのあらゆる血液細胞は骨髄に存在する造血幹細胞が分化することによって生まれます。

上記の図から分かるように始まりは造血幹細胞から開始しますが、それが分化する過程でいくつかの種類の細胞に分かれ、それらがそれぞれ異なった血液細胞を作り出します。
今回は血小板に注目します。骨髄系共通前駆細胞から分化した巨核球前駆細胞がさらに分化することによって巨核球が生成します。

巨核球までは骨髄の中で分化します。成熟した巨核球は細胞質が突起状に変化し、突起が血小板に分化し、血液中に出てくることになります。※1個の巨核球から数千個の血小板が生成します。

これが血小板が出来るまでの過程です。
上記の図に示したように、巨核球前駆細胞から巨核球が出来る過程でトロンボポエチンがその分化、増殖を促進します。ルストロンボパグはトロンボポエチン受容体を刺激することにより、血小板の産生を促進するわけです。
適応は「待機的な観血的手技を予定している慢性肝疾患患者における血小板減少症の改善」となっています。
※観血的とは出血を伴うという意味です。待期的とは計画的という意味です。待期的でない手術は緊急手術などです。
つまり慢性肝疾患患者が出血を伴う手術をする際に、あらかじめ用いることによって血小板数を増加させ、手術における出血のリスクを軽減します。手術の前から1日1回3㎎、1週間服用します。 トロンボポエチンは肝臓や腎臓で産生されます。肝疾患の患者ではトロンボポエチンの産生が十分でなく、血小板が少ないことがあります。血小板が少ないと手術の際に出血が止まりにくくなります。輸血によって対処することも可能ですが、ムルプレタ®錠を用いることによって血小板を増やし、輸血を行わないですむようにするわけですね。なおあらゆる観血的手術に用いられるのではなく、「開腹、開胸、開心、開頭又は臓器切除を伴う観血的手技の場合は、本剤の投与を避けること。」とされています。

なお血小板をあまり増やしすぎると血栓症のリスクが上がります。添付文書にも 「本剤投与中は血小板数に留意し、少なくとも、本剤の投与開始から 5日後を目安に 1回は血小板数を測定し、それ以降も測定した血小板数を考慮し、必要に応じて血小板数を測定すること。血小板数が 5万/μL以上となり、かつ本剤投与開始前から 2万/μL以上増加した場合は、本剤の投与を中止するなど適切な処置を行うこと。」 と記載されています。最も注意すべき副作用は血栓症ですね。

ルストロンボパグと同様のトロンボポエチン受容体刺激薬にエルトロンボパグ (レボレード®錠)があります。レボレード®錠は慢性特発性血小板減少性紫斑病、再生不良性貧血に適応があります。ルストロンボパグと適応こそ違いますが、不足している血小板を増やすことを目的としている点では一緒ですね。
専門的な病院の処方を受け付けていないとあまり関わる機会の少ない薬ですね。 ただ急に大学病院などから処方箋が流れてくることもあります。当ブログを通し軽く出も触れて頂くことによって、いざという時に速やかに理解できると幸いです。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ

にほんブログ村 
記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。

0

コメント

タイトルとURLをコピーしました