レビー小体型認知症

疾病・病態
明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願いします。
新年第一弾の記事は私のかかりつけの患者さんの症例を紹介したいと思います。その方の処方内容が以下のものです

Rp(1)アリセプトD(10) 1錠
トレリーフOD(25)  1錠
1日1回 朝食後  30日分
(2)メネシット(100)  2錠
1日2回 朝夕食後 30日分
(3)ロゼレム(8)    1錠
1日1回 就寝前   30日分

アリセプトがある時点で多くの人がアルツハイマー型認知症と考えると思います。しかし注目してほしいのはパーキンソン病治療薬が処方されている点です。この患者さんはレビー小体型認知症です。(パーキンソン病治療薬が処方されている点についても後述します)

レビー小体型認知症について少し説明します。
レビー小体型認知症は大脳皮質にレビー小体と呼ばれる異常タンパク質が蓄積し生じる認知症です。
※アルツハイマー型認知症、レビー小体型認知症、血管性認知症を合わせて3大認知症と呼びます。

アルツハイマー型認知症と同様の進行性認知症ですが、アルツハイマー型認知症と異なり、認知症状の他に幻視、パーキンソン症状、レム睡眠行動異常が起きます。(認知症状より先に起きることが多いです)

・幻視
レビー小体型認知症の患者さんの家族を困らせる原因であり、周囲からすれば本人が訳の分からない事を言っているように感じます。しかし実際に本人は幻視を見ているので頭から否定してはいけません。(幻視はハッキリと見えているようです)本人の話をしっかり聞いてあげることが大切です。
幻視に対して抑肝散が処方されることもあります。(適応外処方です)

・パーキンソン症状
パーキンソン症状の中でも特に筋固縮が目立ち、歩行が困難になります。その他にも振戦や姿勢反射障害も生じ、進行すると嚥下障害も生じます。そのため室内では転倒防止のための手すりの設置や、嚥下障害による誤嚥性肺炎の注意が必要になります。
パーキンソン症状にはパーキンソン病治療薬を用いることもあります。私のかかりつけの患者さんではメネシット(100)とトレリーフOD(25)を使って症状を抑えていますね。
トレリーフは25㎎のみ「レビー小体型認知症に伴うパーキンソニズム(レボドパ製剤を使用してもパーキンソニズムが残存する場合)」に適応があります。

・レム睡眠行動異常
説明の前に睡眠についての再確認です。人は深い眠りのノンレム睡眠と、浅い眠りのレム睡眠を繰り返しています。

・ノンレム睡眠
深い眠りであり、脳が休息している。
体は完全に休息はしておらず、夢は見ない。

・レム睡眠
浅い眠りであり、体が休息している。
脳は活動しているので夢を見る。眼球運動があるのが特徴。
レム睡眠中に夢を見てしまうので、寝ている最中に大声を上げる、暴れるなどの行動を起こすことがあります。このような症状は襲われたり、追いかけられたりと悪夢を見ているためなので、それを知っているだけでも周囲の人の理解しやすいでしょう。

以上がレビー小体型認知症の特徴的な症状です。その他にも抑うつ症状が約半数の患者さんに見られるともされています。
認知症状は初期のうちはアルツハイマー型認知症と比べて軽度であることが多いです。そのため物忘れなどの症状よりも、上記に記載した症状が出てきたときに疑った方がよいでしょう。

レビー小体型認知症の治療薬はドネペジル(アリセプト®)のみです。
アリセプトをレビー小体型認知症に用いる時は10㎎を目標とし、症状に応じて5㎎まで減薬できるとされています。(アルツハイマー型認知症では高度の場合にのみ10㎎)
薬剤師はまず処方内容からアルツハイマー型認知症だけでなく、レビー小体型認知症にも気づけるようにしましょう。そして家族が患者の異常な行動に悩んでいる時は、幻視やレム睡眠行動異常のことは教えてあげて欲しいです。知っているだけで患者に対して理解が得られ、幾分気が楽になると思います。

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