リベルサス錠

内分泌・代謝性疾患の薬
先日医薬品の情報誌を読んでいたら、リベルサス錠®の紹介がありました。
リベルサス錠®は2020年11月18日に薬価収載されました。発売はまだですが、今のうちに予習しておいて損はないと思います。今回はリベルサス錠®について書いてみました。

リベルサス錠®の有効成分はセマグルチドといい、GLP-1受容体作動薬です。
GLPとはグルカゴン様ペプチド(Glucagon-Like Peptide)のことであり、小腸から分泌されるインクレチンのことです。

まずはインクレチンについておさらいしましょう。
インクレチンとは食事に伴って消化管から分泌される、インスリン分泌を促進するホルモンの総称です。
現在インクレチンはGIP、GLP-1が確認されています。

GIP  :小腸上部のK細胞から分泌される
GLP-1:小腸下部のL細胞から分泌される

GIP、GLP-1ともに膵臓のβ細胞からインスリンを分泌します。この時、β細胞がグルコース濃度の上昇に伴うインスリン分泌を促進します。そのためグルコース濃度が高い時のみ作用することになり、低血糖を起こすリスクは極めて低くなります。
※作用機序は下記の図を参照

GIPは膵臓のα細胞からグルカゴンの分泌を促進するのに対し、GLP-1はα細胞からグルカゴンの分泌を抑制します。
また糖尿病患者ではGIPに対する感受性が低下しているので、GLP-1の作用を増強することを目的とすることになります。

インクレチンは体内でDPP-4(dipeptidyl peptidase-4)によって速やかに分解されます。DPP-4は腸管上皮細胞や血液中などあらゆる箇所に存在するため、インクレチンを経口投与するとDPP-4によりあっという間に分解をされてしまいます。そのためGLP-1アナログは注射で用いることになり、経口でGLP-1の作用を増強したい時はGLP-1の分解酵素のDPP-4を阻害する薬剤を用いていました。 しかし今回のリベルサス錠®はサルカプロザードナトリウム(以下SNAC)という吸収促進剤を添加することによって、胃からの吸収が可能になりました。
※セマグルチドがSNACと複合体を形成し、消化酵素による分解を防ぎます。SNACと複合体で疎水性が増加するので、胃粘膜からの吸収が可能になります。

リベルサス錠®の薬理作用、経口可能なメカニズムは分かりました。 今度はリベルサス錠®の特徴について詳しく見てみます。

・飲み方に注意

添付文書では用法及び用量に関連する注意に
本剤の吸収は胃の内容物により低下することから、本剤は、1日のうちの最初の食事又は飲水の前に、空腹の状態でコップ約半分の水(約120mL以下)とともに 3mg錠、7mg錠又は 14mg錠を 1錠服用すること。また、服用時及び服用後少なくとも30分は、飲食及び他の薬剤の経口摂取を避けること。
と記載されています。
セマグルチドはSNACと複合体を形成し、脂溶性を高めた後に胃粘膜に吸着し、徐々に複合体からセマグルチドが遊離し、胃粘膜より吸収されます。
胃内に飲食物があると胃粘膜への吸着が阻害され、吸収が低下してしまいます。
空腹時に水で服用し、その後は30分以上食事を避けるように指導しなければなりません。

・DPP-4阻害薬とは併用しない
重要な基本的注意の箇所に
「本剤とDPP-4阻害剤はいずれもGLP-1受容体を介した血糖降下作用を有している。両剤を併用した際の臨床試験成績はなく、有効性及び安全性は確認されていない。」
と書かれています。DPP-4阻害薬はGLP-1の分解を抑制し、その効果を上げるものです。リベルサス錠®とDPP-4阻害薬を併用すれば、セマグルチドの分解が抑制され、その効果が増強する可能性もあります。しかし最終的に同じ過程をたどる作用機序の薬を併用することはあまりなく、異なる作用機序の薬を併用するのが一般的です。
(ACE阻害薬とARBを併用しないですよね?普通はARBとCa拮抗薬など異なる作用機序の薬を併用します。)
DPP-4阻害薬との併用は通常はないと思っておいて良いでしょう。

・一包化はできない

適用上の注意の箇所に 「本剤は吸湿性が強いため、服用直前にPTPシートから取り出して服用するよう指導すること。」 と書かれています。一包化は不可ですね。まあ飲み方からして一包化はありえません。

体重減少効果が認められている
GLP-1は食欲が抑制させ、体重減少効果が生じます。
ノボ ノルディスクファーマ発表したの臨床試験結果で、有意な体重減少が認められているようです。 しかし日本糖尿病学会が2020年7月9日に発表した「GLP-1受容体作動薬適応外使用に関する日本糖尿病学会の見解」では
「一部のGLP-1 受容体作動薬については、健康障害リスクの高い肥満症患者に対する臨床試験が実施されていますが、その結果はまだ出ていません。」
としています。一部のクリニックで美容目的でGLP-1受容体作動薬を処方しているところがあるようですが、これに対して警告を示しています。 体重減少が起きるのは間違いなさそうですが、あくまで肥満を伴う糖尿病患者の治療に使うべきであって、そもそも体重減少効果を目的として使ってはいけませんね。

以上ダラダラと書いてみました。 GLP-1製剤が注射だけでなく、内服も登場したことはとても凄いことだと思います。効果がどの程度あるかはまだ不明ですが、SGLT2阻害薬のように、血糖値を下げつつ、体重減少が期待できる薬は、肥満を伴った患者さんに高い効果をします可能性が期待できます。今度も糖尿病に対するいい治療法が出てくれると嬉しいです。

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