ボナロン(35)からプラリア皮下注への切り替え 余っている薬はどうする?

骨の薬

昨日うちの薬局で整形外科におかかりの患者さんの処方箋が持ち込まれました。処方内容は以下の通りです。

Rp(1)(般)セレコキシブ錠(100)  2錠
     (般)レバミピド錠(100) 2錠
    1日2回 朝夕食後 60日分
Rp(2)デノタスチュアブル 2錠
    1日1回 朝食後  60日分

デノタス®チュアブルが処方されているので、プラリア®皮下注を注射してきたことが分かります。投薬時に話を聞いたところ、「今までの飲み薬をやめて、今度から半年に1回の注射になった。」とのことでした。
この患者さんはプラリア®皮下注を注射するのは初めてです。それまではボナロン®(35)を使っていました。話をもう少し詳しく聞くと、前回処方されたボナロン®(35)が1ヶ月分以上残っています。患者さんは残ったボナロン®(35)をどうするかは医師から聞いていないようでした。さてこの時はどう指導するのがよいでしょう?プラリア®皮下注とボナロン®(35)などのビスホスホネート製剤について詳しく知っていると答えが出ると思います。今回はこの事例をもとに、 プラリア®皮下注とビスホスホネート製剤 について学び直してみようと思います。

まずプラリア®皮下注についておさらいしましょう。
プラリア®皮下注 の有効成分はデノスマブといい抗RANKLモノクロナール抗体です。RANKLとは破骨細胞分化因子のことであり、破骨細胞およびその前駆細胞に結合することにより、前駆細胞の分化促進、破骨細胞の機能形成を行います。破骨前駆細胞、破骨細胞の細胞膜に存在するRANKという受容体に結合し作用します。
※RANKLとはRANKのリガンド(Ligand)という意味です

このRANKLを阻害すれば破骨細胞の働きを抑えられ、骨粗鬆症の治療に有効になるわけですね。デノスマブはRANKLに対するモノクロナール抗体なので、RANKLに結合することによって、RANKLがRANKに結合できなくなり、結果として破骨細胞が成熟しなくなります。
デノスマブ製剤は骨粗鬆症に用いられるのがプラリア®皮下注であり、悪性腫瘍の骨転移・骨巨細胞種に用いられるのがランマーク®皮下注です。

デノスマブで最も注意が必要な副作用が低カルシウム血症です。
ランマーク®皮下注を注射後、重篤な低カルシウム血症による死亡事故が起きた事例があり、2012年9月に安全性速報が出されています。同一成分であるプラリア®皮下注でも当然同様の副作用の恐れがあります。それ以来デノスマブの注射後には低カルシウム血症を防ぐため、カルシウム製剤と活性化ビタミンD3製剤の服用が必要になっています。昨今の活性化ビタミンD3製剤の入手困難な事情により、この患者さんではデノタス®チュアブルのみ処方されているわけですね。

プラリア®皮下注の説明が終わったことろで、次にビスホスホネート製剤について見てみましょう。
ビスホスホネート製剤は骨吸収された骨の表面に露出したヒドロキシアパタイトに結合します。すると破骨細胞にビスホスホネート製剤が取り込まれ、破骨細胞のアポトーシスを誘導します。

ビスホスホネート製剤の副作用ですぐに思いつくのは食道潰瘍顎骨壊死でしょう。これはどの薬剤師でも重点的に説明していると思います。しかし低カルシウム血症もあることを忘れてはいけません。ヒドロキシアパタイトとはリン酸カルシウムの一種です。破骨細胞のアポトーシスにより骨吸収が抑制され、ヒドロキシアパタイト(リン酸カルシウム)の血中への漏出が減少します。結果として低カルシウム血症を生じるわけですね。

さてここまでデノスマブ製剤とビスホスホネート製剤について学んでみて、今回の事例について振り返ってみましょう。
プラリア®皮下注を開始して、まだ残っているボナロン®(35)はどうするか?結論からすると、併用はしない方が良いでしょう。理由としては

①薬効は最終的に同じ
デノスマブ製剤もビスホスホネート製剤も作用機序こそ異なっていますが、どちらも破骨細胞を抑制することに変わりありません。通常薬を併用する時は異なる作用機序のものを組み合わせます。

②副作用のリスクが上がる
デノスマブ製剤とビスホスホネート製剤の両方とも低カルシウム血症の副作用があります。いくらデノタス®チュアブルを使っていても、併用すればリスクは上がるでしょう。

実際にランマーク®皮下注、プラリア®皮下注の製造メーカーである第一三共株式会社のホームページにも「プラリアとビスホスホネート薬などの薬剤は薬効が重複しているため、併用により副作用が増強される可能性がありますのでおすすめしていません。」と記載されています。

今回の患者さんには余っているボナロン®(35)の服用は中止してもらうよう説明しました。もちろん念には念を入れて処方医に疑義照会して中止の確認もしました。
処方切り替えの際には今までの薬が余っていることもあります。それをどうするかの説明を忘れてしまう事があるので注意が必要ですね。

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