イトラコナゾール(50)「MEEK」における健康被害とその考察

イトラコナゾール

2020年12月5日に小林化工株式会社のイトラコナゾール(50)「MEEK」からリルマザホンが大量に混入していたことによる、甚大な健康被害が報告されました。

各薬局に対してFAXや、MSさんやMRさんによる情報提供がされているので、皆さんご存じだと思います。
非常に残念なことでありますが、今回はこれをきっかけに、リルマザホンについての再確認と、服用による健康被害、それに対する対処等を確認していきたいと思います。
今回のケースはイトラコナゾール(50)「MEEK」1錠につき、リルマザホンが5㎎ほど含まれていたようです。
リルマザホン(リスミー®)は短時間型のベンゾジアゼピン系睡眠薬であり、1回服用量は1~2mgです。
※リルマザホンはベンゾジアゼピン系薬物ですが向精神薬には該当しません。
イトラコナゾールは抗真菌薬であり、その適応は皮膚真菌症、爪白癬症、内蔵真菌症、カンジダなど数多くあります。
例えば爪白癬に用いる場合は1回200㎎を1日2回、1週間服用します。(その後3週間休薬)
もしリルマザホンが5㎎混入されたイトラコナゾール(50)「MEEK」を爪白癬に使用した場合、リルマザホンを1回20㎎も服用することになります。通常の10~20倍です!
これで健康被害が起きないはずがありません。ベンゾジアゼピン系の過剰摂取なので、意識消失、重度の傾眠が考えられます。
実際起きた健康被害は服用による意識消失、ふらつきによる救急搬送、運転中の意識消失による自損事故、ろれつが回らない等の症状で緊急入院などが報告されています。(12月6日時点で交通事故8件、緊急搬送4件、入院6件だそうです)
健康被害は分かりました。もし服用してしまった場合はどうなるでしょうか?
傾眠や意識消失などの症状があれば速やかに受診するしかありません。しかし表在性皮膚真菌症などはイトラコナゾールは1日1回50~100㎎の使用なので、多少の傾眠程度で済む可能性もあります。それでも服用してしまった以上、その後どうなるか気になると思います。
添付文書によるとリルマザホンは半減期は10.5±2.6時間、Tmaxは3時間とされています。長めに見積もって13時間としましょう。通常半減期の4倍の時間で体内から消失と考えられるので、Tmaxから薬物が消失し始める時間は3+13×4=55時間で体内から消失と考えられます。
あくまで通常量の場合ですので、過剰に服用したケースで想定しましょう。
リルマザホン2㎎を服用した場合のCmaxは7.6±2.5(ng/mL)です。多めに見積もって10(ng/mL)、仮に10倍量を服用してCmaxが100(ng/mL)になったとしましょう。半減期1回目で50、2回目で25、3回目で・・・と繰り返すと6回目で1.5625、7回目で0.78125と7回目あたりでほとんど消失しています。
(2㎎を服用したときの半減期4回分とほとんど同じ血中濃度です)
13×7=91時間 Tmaxからの消失だと3+91=94時間 約3~4日間です。大量服用してしまった場合でも4日もすれば理論上は体内からほとんど消失していることになります。つまり服用後何もなかったら4日ほど体調変化に気を付けておいて、それでも何ともなかったら取り合えずは安心と言っていいと思います。
今回のような想定外の医療事故が起きた時も落ち着いて情報収集をしていきたいと思います。ブログでの情報発信が遅くなって申し訳ありません。どうしても考察等に時間がかかってしまいますが、なるべくタイムリーに情報を発信したいと思います。
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