ミネブロ錠 他のK保持性利尿薬との違い

ミネブロ
日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集分析事業でセララ®を服用中の患者にミネブロ®が処方され、疑義照会になり、セララ®が削除された事例が報告されました。同一の作用機序の薬が重複して処方された例です。セララ®、ミネブロ®ともに他のK保持性利尿薬との併用は禁忌になっています。これを機にミネブロを中心にK保持性利尿薬についても、勉強し直そうと思います。

ミネブロ®の有効成分はエサキセレノンといい、ミネラルコルチコイド受容体を阻害することによってアルドステロンの作用を阻害します。つまり利尿作用を有することになります。

同一の作用機序のものにスピロノラクトン(アルダクトンA®)、エプレレノン(セララ®)があるので、これらとの違いを中心に解説していきます。
薬効分類名はスピロノラクトンは抗アルドステロン性利尿・降圧剤、エプレレノンは選択的アルドステロンブロッカーとなっています。これに対してエサキセレノンは選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカーと記載されています。この違いについて見てみましょう。
スピロノラクトンはミネラルコルチコイド受容体を阻害しますが、その作用は選択的ではありません。またスピロノラクトンはステロイド骨格を持つため、性ホルモン様作用を起こしてしまい、これが女性化乳房、月経異常などの副作用の原因になります。
エプレレノンはスピロノラクトンに比べてミネラルコルチコイド受容体に対する選択性が高くなっています。またステロイド骨格を持たない非ステロイド型です。そのため性ホルモンによる副作用が弱くなっています。
エサキセレノンはミネラルコルチコイド受容体に対する選択性がさらに高くなります。そのため選択的ミネラルコルチコイド受容体ブロッカーと呼ばれるわけです。こちらも非ステロイド型になります。
・適応症の違い
同一の作用機序をもつアルダクトンA®、セララ®の適応症は以下のようになっています。
アルダクトンA®
高血圧症(本態性、腎性等)、心性浮腫(うっ血性心不全)、腎性浮腫、肝性浮腫、特発性浮腫、悪性腫瘍に伴う浮腫及び腹水、栄養失調性浮腫、原発性アルドステロン症の診断及び症状の改善
セララ®
高血圧症、慢性心不全でACE阻害薬又はARB、β遮断薬、利尿薬等の基礎治療を受けているもの(ただし25㎎、50㎎のみ)
ミネブロ®の適応症は高血圧症だけです。
ミネブロ®はまだ発売して日が浅いのためと考えられます。今後は慢性心不全などの適応症もついかになるかもしれません。
・併用禁忌の違い
アルダクトンA®、セララ®の併用禁忌は以下のようになっています。
アルダクトンA®:タクロリムス、エプレレノン、ミトタン
セララ®:他のK保持性利尿薬、リトナビル、ネルフィナビル、イトラコナゾール、K製剤(輸液)
ミネブロ®の併用禁忌は他のK保持性利尿薬、K製剤(輸液)だけです。
作用機序からして副作用に高カリウム血症がでるのは避けられません。そのためKを上昇させる薬剤との併用が禁忌になります。しかしそれ以外の薬に対して併用禁忌がないので、他剤に比べて格段に使いやすくなったと言えます。
・腎障害患者に対する使用可能範囲の違い
腎機能低下患者に対する禁忌は以下のようになっています。
アルダクトンA®:無尿又は急性腎不全
セララ®中等度以上の腎障害、微量アルブミン尿・タンパク尿を伴う糖尿病患者
ミネブロ®重症腎障害
アルダクトンA®と比べるとどうか分かりませんが、セララ®に比べて腎障害をもつ患者にも使える範囲が広くなっています。
ちなみに重度腎障害は eGFR<30(mL/min/1.73) 、中等度腎障害は 30≦eGFR<60(mL/min/1.73)  です
eGFRについては以前の記事を見て復習しておいてください。
※セララの添付文書では 30≦Ccr<50(min/mL) で禁忌としています。
以上をふまえてみると、使いやすさ、安全性で他のK保持性利尿薬に比べて上回るといった感じです。一方、適応の範囲としてはまだまだですね。今後新たな適応が追加され、より多くのケースに使えるようになっていってもらいたいです。
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