類天疱瘡

疾病・病態

先日私のかかりつけの患者さんが入院されました。後日退院して息子さんからお話を聞けたのですが、体中に水疱ができ、痒みも大変だったようです。退院サマリーを見せてもらったのですが、この患者さんの病名は類天疱瘡でした。聞きなれない人も多いのではないでしょうか?いい機会ですので今回は類天疱瘡について説明します。

類天疱瘡は皮膚の基底膜に対する自己抗体ができてしまい、これによって皮膚や粘膜に異常をきたす疾患です。人間の皮膚は表皮と真皮の間に基底膜という膜があり、これが表皮と真皮を結合しています。

この基底膜に存在するBP180、BP230といったタンパク質に対して自己抗体(IgG)ができてしまい、この自己抗体がBP180、BP230を攻撃し、基底膜を損傷します。基底膜で炎症ができることにより、表皮下で水疱ができることになります。
※自己抗体ができる原因については不明です

類天疱瘡はいくつかのタイプに分類されます。

・水疱性類天疱瘡
類天疱瘡の中で最も多いタイプです。体中に緊張性水疱(水ぶくれの中でもパンパンに張ったもの)、痒みを伴う浮腫性紅斑、びらんなどが生じます。高齢者に好発します。

・粘膜性類天疱瘡
眼粘膜や口腔粘膜、のど、鼻、陰部、肛門といった粘膜部分にびらんができるものです。びらんは治癒した後も瘢痕を残すことがあります
BP180の他にラミニン332といったタンパク質に対して自己抗体が生じます。

・後天性表皮水疱症
臨床的症状は水疱性類天疱瘡とそっくりです。基底膜の表皮結合部分のⅦ型コラーゲンに対する自己抗体が原因となっているのが、水疱性類天疱瘡と異なるところです。
※抗Ⅶ型コラーゲン抗体の検出で水疱性類天疱瘡と鑑別可
肘や膝など四肢の外力がかかる部分を中心に水疱やびらんを生じます。

なお今回の患者さんは90歳です。症状も体中に痒みを伴う水疱ができたことからすれば、水疱性類天疱瘡だということは容易に想像できます。

類天疱瘡は上記のようなタイプに分けられますが、いずれも基底膜タンパク質に対する自己抗体が原因になります。分類的にはⅡ型アレルギー(細胞傷害型)になります。
そのため治療についてはステロイドを中心とした免疫抑制が中心になることは分かると思います。
実際に類天疱瘡の治療は内服ステロイドがメインです。
ステロイドの量を減らすために免疫抑制剤を併用することもあります。
その他にも軽症~中等症ではテトラサイクリン(またはミノサイクリン)とニコチン酸アミドの併用療法が用いられることもあるようです。また重症例では血漿交換療法が用いられます。

今回の患者さんの退院後の処方を見てみましょう。
Rp(1) プレドニン(5)          4錠
     (般)レバミピド錠(100)       2錠
     1日2回 朝夕食後 7日分
Rp(2) オーグメンチン250RS        3錠
     (般)アモキシシリンカプセル(250) 3錠
     1日3回 毎食後  7日分
Rp(3) (般)オロパタジン塩酸塩(5)    2錠
     1日2回 朝夕食後 7日分
Rp(4) ゲンタシン軟膏           30g
     1日2~3回  水疱に塗布
Rp(5) (般)ジフルプレドナード軟膏    50g
     1日2回   炎症部位に塗布

類天疱瘡の治療のメインであるステロイド療法はプレドニン®(5)を用いています。痒みがあるのでそれに対して抗アレルギー剤であるオロパタジンを用いています。痒みや紅斑に対しては外用ステロイドが有効です。
水疱が破れるとそこから細菌感染を生じることがあります。それを防ぐために抗生物質が処方されています。オーグメンチン®の有効成分はアモキシシリンとクラブラン酸です。アモキシシリンカプセル(250)と有効成分が重複します。しかしアモキシシリンの1回量を上げるために、オーグメンチンとアモキシシリンカプセル(250)の併用はよく用いられます。ついでに覚えておきましょう。

この患者さんの処方箋を調剤して、また1週間後に再受診して処方箋を持ってこられました。
2回目の処方箋は上記のRp(2)の抗生物質が削除になり、それ以外は全て同じ内容でした。息子さんの聞いたところ、だいぶ症状が改善したようです。
水疱やびらん部分を外部刺激から守るため、ガーゼを当てておくよう言われているそうです。そのため大量のカーゼを注文されていきました。

類天疱瘡は初期に治療すれば、特に高齢者は寛解することも多い病気です(後天性表皮水疱症は難治性)。また1週間後に来局予定です。今度はステロイドの量も減って、さらに症状も改善することを祈っています。

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