水痘

疾病・病態

※以前に書いた記事が消えてしまったので再アップします。既に読んだ方はご了承ください。

以前の記事で娘に水いぼができたことを書きました。皮膚科に通って治療しているのですが、幼稚園の先生が患部を見た時に、水ぼうそうではないですよね?と心配されました。まあ治療中の水いぼは水ぼうそうに見えなくもないですね。水いぼだと伝えたら安心されていました。いい機会なので水ぼうそうについても書いておきますので、特徴を覚えて下さい。

水ぼうそうは正確には水痘といい、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)による感染症です。主に小児がかかる疾患であり、以前は年間100万人近くの人が感染しており、その9割近くが小児でした。しかし2014年に水痘ワクチンが定期接種になってからは、患者数は大きく減少しています。これに対し予防接種を受けていない大人の患者は増えている傾向にあります。

水痘は感染力が極めて強く、接触感染、飛沫感染、空気感染のいずれでも感染します。患者と同じ空間にいた場合は、たとえ接触時間が短くても感染している可能性が高いと言えます。水痘の感染を防ぐのはワクチン接種以外ありません。私も妻が妊娠した際には、もし感染すると胎児への垂直感染のリスクがあるので、抗体検査をしました。すると水痘に対する抗体が少なかったので、水痘ワクチンの予防接種をしました。

VZVに感染すると2週間ほどの潜伏期間を経たのち発症します。
VZVは上気道から感染し、その後全身に広がります。38℃程度の発熱や倦怠感を伴うのも特徴です。まず体幹部で発疹を発症し、そこから全身に広がっていきます。この発疹は通常は痒みを伴います。体にできた皮疹は

紅斑(赤い斑点)⇒水疱(水ぶくれ)⇒膿疱(水疱で中に膿が溜まったのもの)⇒痂皮(かさぶた)

といった過程をとります。
※新しい皮疹が次々にできるので、急性期はこれらの皮疹が混在します
水痘は学校保健安全法で登校禁止となりますが、全ての皮疹が痂皮化すると登校してよくなります。痂皮になった箇所からは接触感染しないからですね。

次に水痘の治療について確認しましょう。免疫の正常な子供が感染した場合、特に治療をしなくても数日で完治しますが、場合によっては対症療法を用いるケースもあります。発熱にはアセトアミノフェン、痒みには抗ヒスタミン薬、皮疹に対してはカチリ®を用いるのが一般的です。アスピリンやジクロフェナックナトリウムはライ症候群を発症するリスクが高いため、通常は用いません(添付文書上は禁忌とされていません)。アスピリンと同様のサリチル酸系薬物は注意が必要なので、PL配合顆粒なども用いない方が賢明でしょう。NSAIDsの中ではイブプロフェンなどは比較的そのリスクが低いとされ、水痘にも用いられるケースもあるようです。

水痘に用いる外用薬としては圧倒的にカチリ®が多いでしょう。意外とカチリ®の中身を知らない薬剤師が多いのでおさらいしておきましょう。カチリ®は成分名はフェノール・亜鉛華リニメントといいます。フェノールは殺菌消毒作用と鎮痒作用を有し、亜鉛華(酸化亜鉛)は皮膚の収斂、消炎、保護作用を有します。水痘に用いるのには最適ですね。実際カチリ®が処方されるケースのほとんどが水痘です。ちなみに私の息子が手足口病にかかった際にもカチリ®が処方されました。

通常小児には抗ウイルス薬を用いるケースは少ないですが、重症化するリスクの高い患者には処方されるケースもあります。また妊婦の患者は合併症を併発するリスクが高いため、同様のに抗ウイルス薬を用いるケースもあります。抗ヘルペスウイルス薬のアシクロビル、バラシクロビルが用いられます。ファムシクロビルやアメナミビルは適応がありません。
小児では症状は軽度の事も多いですが、大人になって感染すると大変重い症状を起こします。さらに髄膜炎や脳炎、肺炎などの合併症を起こすこともあります。この場合は積極的な抗ウイルス薬の使用が望ましいでしょう。場合によっては入院してアシクロビルを点滴静注することもあります。

VZVは水痘が完治した後でも感染者の知覚神経節に一生涯残ります。これを潜伏感染といいます。通常VZVが潜伏感染していても特に変わったことはありませんが、ストレスや体力低下、他の疾患等で免疫力が低下した場合、再活性化することがあります。これが帯状疱疹を起こすわけですね。帯状疱疹については別の記事で後程詳しく書きたいと思いますが、皮疹に関しては水痘と同様に 紅斑⇒水疱⇒膿疱⇒痂皮 の経過をたどります。水痘が全身に皮疹が起きるのに対して、帯状疱疹はVZVが潜伏感染している知覚神経節の神経支配領域に限定して皮疹や痛みが生じるのが特徴です。

なんにしても水痘にはかからないにこしたことはありません。現在水痘の予防接種は生後12ヶ月から36ヶ月までの間に2回行うことになっています。今の子供たちはいいですね。私は予防接種が無かったために、大人になって帯状疱疹にかかるハメになったのですから・・・。

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