アミラーゼ

臨床検査値

先日患者さんから健康診断の結果の紙を見せられました。基本的に異常はなかったのですが、アミラーゼだけ基準値を少し超えているようで、患者さん自身はその結果を心配していました。今回は久しぶりに臨床検査値の記事にして、アミラーゼについて解説したいと思います。

アミラーゼは糖質を加水分解する酵素です。主に唾液腺と膵液に含まれます。唾液に含まれるアミラーゼをS型、膵液に含まれるアミラーゼをP型といいます。なおこのS型とP型のアイソザイムは検査試薬によってそれぞれ検出することができます。

アミラーゼの基準値:40~130(U/L)

食事をした際、食べ物を口内で咀嚼しますが、この時に分泌される唾液にS型アミラーゼが含まれており、糖質を分解します。その後胃に食べ物が運ばれ、胃液に含まれる塩酸とペプシンによってタンパク質が分解されます。胃から排出された食べ物は十二指腸で膵液から分泌されたP型アミラーゼと混ざり、さらに糖質や、S型アミラーゼによってできたグリコーゲンが二糖や単糖にまで分解されます。
こうした消化のプロセスがあるわけですね。
(よく噛まないと消化不良になるのは唾液でのS型アミラーゼによる分解が不十分なためです)

ここまででアミラーゼの働きは理解できたと思います。
さてこのアミラーゼですが唾液腺や膵臓に異常があると血中や尿中への逸脱が多くなったり、あるいは少なくなったりします。これによって病気の早期発見につながったりするわけですね。
次に具体的なアミラーゼの異常値について見てみましょう。

・S型アミラーゼが高値の場合
耳下腺や唾液腺に炎症が起きたりすると組織が破壊され、アミラーゼが漏出してくることがあります。主な疾患としては流行性耳下腺炎(おたふくかぜ)、唾石症などがあります。

・P型アミラーゼが高値の場合
膵臓の炎症や、膵細胞の破壊によりアミラーゼが漏出しているケースとしては急性膵炎、慢性膵炎、膵臓癌などがあります。
大量の飲酒を続けているとアルコールによる膵外分泌の亢進によりアミラーゼが上昇します。
また膵管の通りが悪くなったりすると膵液が逆流して膵細胞を破壊し、アミラーゼが高値になることもあります。総胆管結石などがこれにあたりますね。

・S型アミラーゼが低値の場合
唾液腺を摘出した場合や、シェーグレン症候群などによる唾液腺の外分泌の低下があります。

・P型アミラーゼが低値の場合
慢性膵炎が進行すると外分泌機能が低下し、アミラーゼが低値になるケースがあります。膵癌の末期なども同じですね。

アミラーゼは血液だけでなく、尿からも測定が可能です。
アミラーゼは腎臓で血液からろ過され、尿中に排出されるためです。尿で測定可能な数少ない酵素です。

尿中アミラーゼの基準値:50~700(U/L)(試薬によって異なる)

腎不全などで腎機能が低下するとアミラーゼの尿中への排泄が低下します。そのため血清アミラーゼが上昇し、尿中アミラーゼが低下することになります。
マクロアミラーゼ血症でもアミラーゼが尿中に排泄されなくなるので、血清アミラーゼが上昇し、尿中アミラーゼが低下することになります。脱水気味の際は尿が濃縮されるため、高値になる傾向にあります。
※マクロアミラーゼ血症
アミラーゼに構造以上があり、IgA、IgGが結合し巨大化する。そのため腎臓でろ過されなくなる。特に治療は必要とされておらず、経過観察となる。


アミラーゼは血清アミラーゼと尿中アミラーゼの両方を測定するのが一般的です。
血中、尿中それぞれの値を測定し、必要に応じてアイソザイムも測定することによって疾患の鑑別がよりしやすくなります。

さて今回の患者さんのケースはアミラーゼが基準より少し高い程度でした。医師からは何も指摘はなかったようです。
アミラーゼに限らず基準をわずかに超えた程度で治療になることはほとんどないですし、また急性膵炎のような腹部の痛みや、耳下腺炎のような顔の痛み、腎不全による浮腫、その他の検査値での異常もありません。そのため特に問題ないと判断されたのでしょう。これらを総合的にみてやはり唾液腺や膵臓に対する疾患の疑いがあるようなら、尿検査と一緒にアミラーゼのアイソザイムの検査もするはずです。
そしてアミラーゼ自体はそこまで精度のよい検査項目ではありません。例えば急性膵炎ではP型アミラーゼが急上昇しますが、時間がたつにつれ尿中へ排泄されるため、正常値へ近づきます。他にもストレスで変動すると言った研究や、食事の内容によってもバラつきが出ます。アミラーゼが高かったり低かったりと言って、即座に病気と断定することはできないでしょう。

健康診断の結果を薬剤師に見せてくるケースとしては、医師から指摘されなかった検査項目の意味を知りたがっていることが多く感じられます。こんな時は検査項目の意味を分かりやすく説明でき、指摘されなかった理由を分かってもらい安心してもらえるよう、検査項目の意味をしっかり理解しましょう。

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