血液凝固の指標② APTT

臨床検査値

前回の記事でPT-INRについて書きました。PT-INRは外因系の凝固活性の指標です。
今回は内因系の凝固活性の指標であるAPTTについて書きます。

まず血液凝固カスケードの内因系と外因系についておさらいしておきましょう。
内因系は血管内の陰性荷電をもつ異物に第Ⅻ因子が接触することによって血液凝固が始まります。血液凝固のきっかけが血管内にあるので内因系と呼ばれます。
外因系は血管内皮細胞の傷害で、血液が血管外に流れ出ることによって、大量の組織因子(第Ⅲ因子であるトロンボプラスチン)が血管内に流れ込み、血液凝固が始まります。組織因子は血管外から流れ込むため外因系と呼ばれます。
最終的に内因系も外因系も同じ経路をたどって血液が凝固します。

APTTは活性化部分トロンボプラスチン時間といいます。
内因系の凝固因子である第Ⅷ、Ⅸ、Ⅹ、Ⅺ、Ⅻ因子の他に高分子キニノーゲン、プレカリクレイン等を総合的に反映します。
検体血漿にシリカやエラジン酸といった活性化剤として加え、APTT試薬を加えた後、さらにカルシウムイオンを加え、凝固するまでの時間を測定します。
この活性化剤が陰性荷電を帯びているため、内因系を模した凝固検査が行われます。
基準値は30~40秒です。

APTTはヘパリンの効果を測定するのに有効です。
⇒ヘパリンはアンチトロンビン(AT)に結合し複合体を形成し、複合体がトロンピン、第Ⅸa~Ⅻa因子を阻害する。(つまり主に内因系) ヘパリン投与中はAPTTが正常値の2~3倍程度になるよう調節します。

また以下の疾患では内因系の血液凝固因子が低下しているので、APTTが延長することになります。

血友病A:第Ⅷ因子の活性低下
血友病B:第Ⅸ因子の活性低下
DIC(播種性血管内凝固症候群):微笑血栓の多発で血小板、凝固因子の枯渇
VWD(フォン・ヴィレブランド病):von Willebrand因子の欠損により第Ⅷ因子が産生低下。(von Willebrand因子は第Ⅷ因子の安定化作用をもつ)

PT-INRとAPTTの違い、血液凝固のどこに問題があると延長するか何となく理解できましたでしょうか?投薬中の薬の効果だけでなく、疾患を発見するのにも有効です。PT-INR、APTTに限らず、検査値はその意味を理解して、それが何を表しているかを探っていきましょう。

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