インスリンポンプ療法

インスリンポンプ

どこの薬局でもインスリン注射は置いていると思います。

インスリン注射は今はほとんどがフレックスペンタイプのものを用い、患者さんも毎食前や1日1回寝る前などに使っています。
一方インスリンポンプ療法に用いるバイアルタイプのインスリンを在庫している薬局は意外に少なかったです。今回はインスリンポンプ療法について書いてみようと思います。
当薬局を利用して頂いている患者さんの例に見てみましょう。
この患者さんは交通事故で膵臓を失い、インスリンを自分で産生することが出来ません。
そのためインスリン注射を用い、血糖コントロールをしています。
初めのうちはノボラピッド注フレックスペン、ランタス注ソロスターを用いていました。
ランタス注ソロスターで基礎インスリン(平常時にも分泌されている少量のインスリン)を補い、ノボラピッド注フレックスペンで追加インスリン(食事の時の血糖上昇に対して分泌されるインスリン)を補いました。
長年にわたって超即効型と持続型の2種類を用いて生活してきたのですが、デメリットが大きかったようです。
①毎回手間がかかる
毎回食事の直前にインスリン注射をしなくてはならず、特に外出先では大変。
②低血糖を起こしやすい
理想は毎回注射の前に血糖測定をし、それによってインスリンの単位も調節した方が良いのですが、どうしても都合がつかない時は、いつも大体使っている単位で注射していたようでした。しかし血糖値は食事だけでなくその時の体調次第で常に変動しています。そのため頻繁に低血糖を起こしていたようでした。
低血糖になれば当然ブドウ糖を摂取して対処するのですが、低血糖を繰り返すと血管にダメージを与えます。そのため低血糖を頻繁に起こすこと自体体に良くありません。
そんな状況が続いたためインスリンポンプ療法に変わりました。
インスリンポンプはカテーテルを皮下に留置し、携帯型インスリンポンプを装着します。(インスリンポンプはズボンやベルトに掛けて固定します)
これにバイアルタイプのインスリンをセットし、ここからインスリンが24時間、持続的に注入されます。持続投与されるインスリンの量は患者ごとにプログラムされた量であり全員異なります。またポンプの操作で微調整することも可能です。
食事による追加インスリンが必要な際は、インスリンポンプの操作によって投与可能です。
つまりこれ1つで基礎インスリンと追加インスリンの両方を投与可能です。また毎回注射針を刺す必要がないので、QOLが明らかに上昇します。
インスリンポンプ自体も改良が進み、最近のものではCGM(持続グルコースモニタ)機能を搭載し、リアルタイムにSG値(血糖値の参考になるセンサグルコース値)を表示するものも存在します。
※センサグルコース値
細胞間の間質液のグルコース値。血液中のグルコース値と間質液中のグルコース値には相関関係がある。グルコ
ースが大量に取り込まれるとまず血液中にグルコースが入り、そこから間質液に漏れ出てセンタグルコース値が上昇する。
センサグルコース値が一定の数値を下回ったり、上回った時はアラームで知らせてくれる機能を搭載したものもあります。
インスリンポンプを使っていたとしても定期的に血糖測定は必要であり、実測値を入力することでセンサグルコース値との補正が行われます。センサグルコース値はあくまで血糖値の参考になるだけですが、これがあることにより低血糖を起こすリスクも減少します。
当薬局の患者さんも初めのうちは複雑な機械操作に手間取っており、低血糖も起こしましたが、慣れてくると明らかに低血糖の頻度が減りました。
注入セットやセンサの定期的な交換や、煩雑な機械操作など欠点もありますが、特にⅠ型糖尿病患のQOL改善にはとてもいいのでは?と思います。
今後さらに改良され、操作や手入れが簡単で誰もが使いやすいタイプの物が出てくると嬉しいです。
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