肝機能の検査値①ALT、AST

臨床検査値

久しぶりに検査値について書いてみようと思います。
前回の記事で腎機能の検査値について書きました。
腎機能の検査値①クレアチニンeGFR腎機能の検査値②クレアチニンクリアランス
今回は肝臓の検査値について書きます。

もっとも有名なものはアラニンアミノトランスフェラーゼ(以下ALT)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(以下AST)でしょう。
両方とも肝細胞の障害で細胞内の酵素が組織液・血液中に漏れ出てくる逸脱酵素です。
ALT、ASTが高い⇒肝細胞に障害を生じていると言えます。

ALTの基準値:10~42(IU/L) ※女性は7~23(IU/L)
ASTの基準値:13~30(IU/L)

両者の違いは肝臓への特異性があります。
ALTは肝臓以外の組織への分布が少なく、ほぼ肝機能に特異的な数値を示します。
一方ASTは肝臓以外の組織への分布が認められ、一概に肝機能のみの状態を示すとは言えません。

ASTの分布臓器:肝臓、心臓、骨格筋、赤血球など

実際私が以前に健康診断を受けた時にALTは正常であったのですが、ASTはわずかに基準値を超えました。コンピュータで機械的に書かれたアドバイスは「肝機能の悪化が見られます。アルコールや脂肪分の高い食事を控えましょう」ですって。
私は基本的に酒は飲みません。普段から食事にも気を付けており、脂っこい食べ物はあまり食べません!!原因としては普段から毎日運動しており、慢性的に筋肉痛を患っている状態でした。間違いなく骨格筋から逸脱したASTが原因でしょう。
※翌年からは健康診断の数日前から運動量を落とすようにしました。それ以来ALT、ASTともに正常値を維持しています。

そんなわけでAST、ALTの数値を見ただけでは肝臓に障害があるのか、あるいはそれ以外の組織によるものなのかは分かりません。
ASTとALTの比を見ることで肝臓に原因があるのか、あるいはそれ以外の組織に問題があるのかを予想することが可能です。

AST/ALT<2 肝臓に障害がある
AST/ALT>5 それ以外の組織(心臓や骨格筋、血球など)に障害がある

上記のようになっている可能性が高いとされています。
あくまでその傾向が強いとされているだけなので、全ての疾患があてはまるわけではありません。
例えばアルコール性肝障害ではアルコールによってALT合成が阻害されるのでAST/ALT>2になることが多く、劇症肝炎では肝細胞が急激に障害を受け、大量の逸脱酵素が生じるのでAST>ALTになることが知られています。(肝細胞での含有量はASTの方がALTより多い)
慢性肝炎、脂肪肝ではAST<ALTになります。(血中半減期はASTは約半日、ALTは約2日。障害がゆっくり進むので、半減期の長いALTの方が血中に残りやすい)

まずはALTの数値から肝細胞に障害があるかを予想し、その後ASTとALTの比をみて原因疾患を探っていくのがよいでしょう。次回以降の記事でALT、AST以外の検査値に関して書いていこうと思います。

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