RSウイルス

疾病・病態

最近ニュースでRSウイルスの猛威が騒がれています。去年の400倍みたいですね。薬局にもRSウイルスの子の処方箋が流れてくるかもしれません。処方箋がきても冷静に対応できるように、今回はRSウイルスについて解説します。

RSウイルスはRNAウイルスの1種であり、いわゆる風邪のウイルスです。
風邪とは急性上気道感染であり、ほとんどがウイルスによる感染になります。
風邪の原因ウイルスはライノウイルス、コロナウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、アデノウイルス、そしてRSウイルスなどがあります。
2歳までにほぼ100%の子が感染する、いわゆる風邪なのです。
ではなぜ大きな問題になるのでしょうか?それは感染の重篤化にあります。

ある程度大きくなった子には感染が上気道にとどまることが多いです。この場合は咳や鼻水、発熱などが起きますが、単なる風邪として終わるケースが多いです。
一方で乳幼児においては免疫力が不十分な場合が多く、この場合は感染が上気道から下気道にまで及ぶことがあります。
※鼻、咽頭、喉頭を上気道、気管、気管支、細気管支を下気道といいます。

下気道にまで感染が及ぶと喘鳴、嗄声、呼吸困難などの気管支喘息様症状がおき、また上気道ではクループ症候群を起こることがあります。

※クループ症候群
喉頭に炎症が起き、高度の気道閉塞が起きた状態。犬吠様咳嗽(けんばいようがいそう。犬やオットセイの吠えるような咳)、吸気性喘鳴、陥没呼吸(息を吸う時に胸骨が陥没する)を特徴とする。


乳幼児以外にも高齢者でも注意が必要ですね。
下気道感染を起こすと多くの場合、細気管支炎を起こします。



細気管支を起こすと呼吸困難を起こし、入院が必要になるケースがあります。
これがRSウイルスの乳幼児感染における重篤化ですね。入院先では呼吸管理を行うことになります。

RSウイルスは感染力が非常に強く、接触感染、飛沫感染を起こします。新型コロナウイルスと一緒ですね。予防にはうがい、手洗い、マスクの着用、アルコール消毒です。

以上がRSウイルス感染症の簡単な説明でした。
次はRSウイルスの治療法について見てみましょう。

RSウイルスにはワクチンや有効な抗ウイルス薬はありません(後述するシナジス注®のみ抗RSウイルス薬はあり)。対症療法が中心となります。
去痰薬がよく用いられます。喀痰は呼吸困難の原因になるからですね。

その他に用いられることが多いのはロイコトリエン拮抗薬です。
プランルカスト(オノン®)やモンテルカスト(キプレス®、シングレア®)ですね。RSウイルスの下気道感染では喘息様症状が生じます。これはウイルス感染により気道上皮細胞からサイトカインが放出され、気管支平滑筋の収縮、気管支粘膜の炎症、血管透過性の亢進、気道分泌の亢進が起きるからです。これらは呼吸困難の原因になります。
ロイコトリエン受容体を遮断することによりこれらの作用を抑制し、呼吸困難を改善すると考えられています。まさに喘息治療と同じですね。しかしまだ有効性が確立されたわけではなく、過度な期待は禁物です。

呼吸困難に対してステロイドが用いられることがあります。乳幼児は吸入ができないので、院外処方箋で出されるのは内服ステロイドです。デキサメタゾン(デカドロンエリキシル®)がよく用いられます。クループ症候群が呼吸困難の原因になることがあるので、クループ症候群における喉頭の炎症を鎮静する目的で用いられます。(1回0.15~0.3㎎/kgで頓服で服用します)

最後に抗RSウイルス薬を紹介しておきます。
唯一の抗RSウイルス薬としてパリビスマブ(シナジス注®)があります。これはRSウイルスに対するヒト化モノクロナール抗体です。ただしこれも特効薬ではなく、あくまでRSウイルスの重症化を防ぐためのものです。早産児(36週未満で生まれた子)、免疫不全を伴う新生児、ダウン症の新生児、先天性心疾患をもつ新生児になど、重症化リスクの高い子に対して予防的に用いられます。効果は1ヶ月もつので、流行期に月に1回の注射をします。

以上RSウイルスについて書いてみました。
子供がRSウイルスに感染するのは避けられないですが、できれば生後6ヶ月以内にはかかりたくないですね。ちなみに私の娘も乳幼児の頃にRSウイルスにかかりました。その時は鼻つまりで上手く息ができず、血中酸素が下がっていました。これ以上下がると入院と言われていたので、乳幼児用の鼻吸い器で必死に鼻水を吸い取り、何とか入院はしなくてすみました。
お子さんがRSウイルスに感染した経験のない薬剤師は、今回の記事や他の人の体験談をもとに沢山知っていただき、患者さんに寄り添えるようになってくれると嬉しいです。
また処方内容をみてRSウイルス感染症に気づいてもらえるようになってもらいたいです。

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