腫瘍マーカー CEA

臨床検査値

うちの患者さんで大腸がんを治療している人がいます。受診の度に血液検査をして経過を観察しています。様々な検査項目がありますが、この患者さんはご自身のがんの進行度の目安になるCEAを毎回自分でもチェックしています。今回はCEAについての知識を深めていこうと思います。

CEAは「がん胎児性抗原」といい、胎児の消化器に存在するタンパク質です。本来は胎児の消化器にしか存在しませんが、がん細胞が増殖した場合も産生されるため、がんの発見や進行度を測るのに用いられます。
CEAは全てのがんで高値になるわけではありません。主に腺がんで高値になります。
ここでがんの種類についておさらいしましょう。

がんの分類は解剖学的には上皮性と非上皮性に分けられます。
上皮とは体の内外の表面を覆っている組織です。扁平上皮腺上皮に分けられます。
上皮細胞が平らに重なった組織を扁平上皮といい、皮膚や口腔内、食道などがこれにあたります。これに対して上皮が陥入し分泌能力を持ったものを腺上皮といいます。外分泌や内分泌を行います。胃や腸、前立腺、膵臓、肝臓などがこれにあたります。

同じ部位のがんでも解剖学的な違いで分類できます。
子宮頸がんは扁平上皮がん、子宮体がんは腺上皮がんですね。
肺がんは小細胞がんと非小細胞がんに分けられますが、非小細胞がんは扁平上皮がん、腺がん、大細胞がんに分けられます。

※非上皮性がんは肉腫ともいい、筋肉や脂肪にできるがんです。
なお漢字の「癌」は上皮性を指します。「がん」や「ガン」は上皮性、非上皮性の両方をいいます。

CEAとは先述したように腺がんで高値を示します。
主に消化器系のがんで上昇しやすい傾向にありますが、他の腺がんである肺がん(非小細胞がん)や乳がん、子宮体がん、卵巣がんでも上昇します。
そのためCEAはがんの特定には用いされず、血液検査によるがんのスクリーニングに有効です。ただしある程度進行しないと高値にならないため、早期発見には不向きです。
また糖尿病患者や喫煙者はがん患者でなくても上昇することが知られています。(これを偽陽性といいます)

CEAはがんのスクリーニングだけでなく、がんの進行度を測るのにも有効です。進行が進むと上昇する傾向があります。実際にこの患者さんはゼローダ®錠を服用していますが、たまに何回か飲み忘れてしまうと、次回の検査でCEAが上昇していることが多いです。その後忘れずに服用するとまた下がっていたりします。
CEAの基準値は5.0ng/mL以下です。
この患者さんは11程度ですが、ゼローダ®錠を飲み忘れると14くらいまで上がりますね。
ただし数値と進行度が比例する分ければないので、基本的に受診の度に血液検査をしてCEAを調べ、3ヶ月に1回はCTで検査する状態です。がんの大きさや浸潤、転移を調べるにはCTの方が確実ですからね。

この患者さんは来局する度に検査結果を見せてくれます。CEA以外にも沢山の検査項目があって、一緒にどんな状態かを話し合っています。CEAに限らず検査項目の意味を理解していると患者さんに説明が上手くでき、自分の状態を把握してもらい、また日常生活で気を付けるべき課題も見えてきます。薬剤師も患者さんもお互いに検査値を理解していきたいものです。

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