ヒヤリ・ハット分析 ワルファリン服用中の患者に不適切な整腸剤を購入

ヒヤリ・ハット

公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業で医療用医薬品とOTCとの併用における事例がありました。OTCを詳しく知っておかないと防げない事例です。今回の記事で紹介しますので、是非OTCの勉強に役立てて下さい。

【事例の詳細】
施設に入居中の患者へ訪問指導を行った際、施設職員より、「当該患者は軽微な下痢があるが医師への報告が漏れた。今回は一般用医薬品で対応したい。」と相談を受けた。薬剤師は「この患者はワルファリンを服用中のため、納豆菌を含まない整腸剤を購入してください。」と伝えた。その後、薬局に同職員から、ザ・ガードコーワ整腸錠α3+を購入し今晩から服用予定であると電話で報告があった。ザ・ガードコーワ整腸錠α3+は納豆菌末を含有することを説明し、当該患者には服用させないよう伝えた。

【背景・要因】
薬剤師の回答の意図が施設職員に伝わらなかった。また施設職員は業務の合間に急いでドラッグストアへ行き、成分を確認しないで整腸剤を購入した。

【薬局から報告された改善策】
一般用医薬品の購入について説明する場合は、今回のように「納豆菌を含まない整腸剤」と言うだけでなく、具体的な商品名も併せて伝える。ワルファリンを服用している患者、家族、管理する施設職員等には、一般用医薬品を購入する際は、薬局の薬剤師・登録販売者に使用者がワルファリンを服用していることを伝え、納豆菌を含まない薬剤を選んでもらうよう説明する。


まずはワルファリンについておさらいしましょう。
ご存知のようにワルファリンは抗凝固薬です。これは血液凝固第Ⅱ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子を阻害することで効果を発揮します。これらの血液凝固因子は前駆体(PIVKA)から産生される時にビタミンKが補酵素として働きます。ワルファリンは図のようにビタミンKの代謝を阻害することでⅡ、Ⅶ、Ⅸ、Ⅹ因子が産生されるのを阻害します。

ビタミンKの代謝を阻害するということは、ビタミンKが大量にあるとその効果が減弱してしまう事を意味します。そのためビタミンKを多く含んだ薬や食事とは併用しないようにしなくてはなりません。
メナテトレノン(グラケー®)はビタミンK2剤なので併用禁忌になりますね。

食事においてもビタミンKを多く含む食事は控えなくてはなりません。ブロッコリー、モロヘイヤ、ほうれん草、海苔などですね。しかしこれらの食事は大量摂取をしてはならないというだけで、摂取自体が禁止されてはいません。適量であれば摂取も可能です。(クロレラ、青汁は大量にビタミンKを含むので禁止です)
しかし納豆は禁止となります。これは納豆はビタミンKを含んでいるだけでなく、納豆菌が腸管内でビタミンKを産生してしまうからです。ビタミンKを含んだ食事なら、量を調節することでワルファリンの効果を保つことは可能です。しかし納豆菌のようにビタミンKを作り出してしまうなら、それは困難になります。事実、少量の納豆でもビタミンKの濃度が高値になり、ワルファリンの効果減弱が3日ほどは続くといったデータもあります。

さて今回の事例で購入されたザ・ガードコーワ整腸錠α3+の中身を見てみましょう。

まさかの納豆菌が含まれています。これは納豆菌が善玉菌の増殖を助けるためとされています。なお納豆菌を含んでいるOTCの整腸剤は他にも以下のようなものがあります。

・新コンチーム錠 ⇒ 納豆菌末を含有
・パンクラミンプラス ⇒ 納豆菌末を含有
・ベクニソフト ⇒ 納豆菌末を含有
・マイフローラルバランス ⇒ ビオナットミンを含有

があります。探せば他にもあるかもしれませんが、今のところ確認できたのはこれだけです。
ザ・ガードコーワ整腸剤α3+に限らず、OTCの整腸剤や健胃薬は善玉菌以外にも多くの成分を含んでいるものが沢山あります。整腸剤や健胃薬を購入する際は中身をしっかり確認しておく必要があるでしょう。
逆に医療用と同じ中身のものは少ないので、この際に覚えてしまいましょう。
ビオスリーHはビオスリー®配合散と、ビオスリーHi錠はビオスリー®配合錠と同じ中身です。これは非常に使いやすいですね。

今回の事例では整腸剤でしたが、健胃薬などはもっと複雑になります。例えば製造は中止になりましたが、ザッツ21の中身は以下のようになっています。

抗コリン薬のロートエキスを含有しているので、前立腺肥大症患者には望ましくないです。アルジオキサはアルミニウム含有なので、透析患者には使えません。NaやMgを含有する成分を含んでいるので、長期連用では腎機能の悪化につながるでしょう。
このようにOTCは複数の成分を含有しているので、場合によっては医療用医薬品より相互作用のチェック等が難しくなります。常日頃からOTCを併用する時は中身を確認して、適切な医療安全につなげましょう。

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