皮膚真菌症

疾病・病態

最近親子で一緒に皮膚科を受診しました。私は左腕の肘の内側、息子は左肩の後ろに炎症ができました。最初はたんなる湿疹と思いましたが、抗ヒスタミン薬やステロイドを塗っても良くならなかったので、もしかしてと思い受診しました。結果は案の定、真菌によるものでした。
   
いい機会なので、今回は皮膚の真菌症について解説します。病態を知って、予防に役立てれくれると嬉しいです。


皮膚真菌症の代表的なものには白癬、カンジタ、癜風があります。これを1つ1つ見てみましょう。

・白癬
白癬菌(皮膚糸状菌)による感染症でいわゆる水虫として知られているものになります。白癬菌が足に感染したものが”水虫”といいますが、股間部の感染を”いんきんたむし”、頭部の感染を”しらくも”、その他の体部の感染を”ぜにたむし”といいます。

白癬菌は皮膚の角質層に存在するケラチンというタンパク質を栄養素としています。そのため角質層のある場所に感染し、角質層のない粘膜には感染しません。
患部からは鱗屑(角質層が濃厚して剥がれ落ちたもの)が剥がれ落ち、鱗屑の中には白癬菌が含まれています。そのため鱗屑に触れることで、人にうつる原因となります。代表的な例では自宅や公衆浴場、プールのマットやタオルなどですね。また犬や猫などから感染することもあります。そのため感染防止にはこまめにシャワーを浴び、皮膚を清潔に保つことが必要ですね。

白癬菌に感染した場合の主な症状は皮膚の炎症、痒み、皮膚の鱗屑です。水虫には患部がジュクジュクするものとカサカサするものがあります。

・カンジダ
カンジダ属の真菌(主にCandida albicans)による感染症です。カンジダ属は皮膚の常在菌であり、皮膚の他に粘膜や爪にも存在します。そのため皮膚カンジダの他に口腔カンジダ、膣カンジダ、食道カンジダなどの疾患が存在するわけですね。
カンジダは常在菌のため、感染はほとんどが日和見感染になります。ステロイド、抗がん剤、免疫抑制剤の投与や糖尿病、風邪、疲れなどによって免疫が弱まっている状態で感染を起こしやすくなります。また抗菌薬の使用により皮膚の常在細菌が死んでしまい、カンジダが増殖しやすくなり、感染症を引き起こすこともあります(特に膣カンジダ)。

皮膚カンジダは炎症と痒み、膣カンジダは膣周囲の炎症と痒み・白色のおりもの、口腔カンジダは白苔・白苔の剥がれた箇所の出血や痛み・口内の痛みや灼熱感・味覚障害、食道カンジダは多くが無症状ですが、嚥下時の痛み・胸やけなどの症状が起こることがあります。

・癜風
マラセチア属の真菌(主にMalassezia furfur) により感症です。マラセチア属の真菌はカンジダと同様に常在菌です。高温多湿な環境で増殖しやすく、皮脂を好みます。そのため多汗の人に多く発症する傾向にあります。

症状はないことが多く、あっても軽度の痒み程度です。表面がカサカサし、鱗屑伴うこともあり、境界のハッキリとした白や茶の斑点ができます。
※白の斑点の場合を白色癜風(白なまず)、茶の斑点の場合を黒色癜風(黒なまず)といいます。
なお癜風は白癬やカンジダと異なり、人にうつることはほとんどありません。(まれにあります)


以上3つが代表的な皮膚の真菌症です。
予防としてはどれもこまめにシャワーを浴びるなど皮膚を清潔に保つこと、十分な休息で疲れをとる、ストレスを溜めすぎないようにするなど、免疫力を保つことですね。

基本的な治療はいずれも抗真菌薬の外用になります。
よく使われるものではラミシール®クリーム・外用液、ニゾラール®クリーム・ローション、アスタット®軟膏・クリーム・外用液、ルリコン®軟膏・クリーム・液、ゼフナート®クリーム・外用液、メンタックス®クリーム・外用液・スプレー、ペキロン®クリームなどがあります。
ほとんどのものが白癬、カンジダ、癜風のいずれにも有効ですが、メンタックス®は白癬と癜風のみ、ゼフナート®は白癬のみです。これは覚えておいてもいいかもしれません。
なお爪白癬には外用液を用います。軟膏やクリームで爪に浸透していかないからですね。頻用されるクレナフィン®爪外用液、ルコナック®爪外用液の適応は爪白癬のみです。

基本的には外用薬のみの治療がほとんどですが、爪白癬だったり、患部が広範囲にわたる場合、再発を繰り返す場合は内服薬を用いることがあります。

さて、今回私と息子がかかったのはどれでしょうか?皮膚科を受診した際に、真菌による感染とだけ言われ、具体的にどの菌とは教えてくれませんでした。おそらく白癬か癜風のどちらかでしょう。
写真を見る限り体部白癬(ぜにたむし)の可能性はありますが、生活環境からすると癜風の可能性もあります。週に6日ジムで汗だくになっており、常に体が疲れている状態なので癜風になる条件は満たされています。息子のは痒がっているので白癬かもしれません。
今回は2人ともラミシール®クリームが処方されました。これは白癬も癜風もどちらにも効くので、薬からの判断はできないですね。
そういえば私のジムの仲間で顔に真菌症がでた人が数人います。これはマスクによる弊害かもしれません。マスクで顔に汗が溜まりやすく、癜風になりやすい環境ですからね。(私と同様に年中体が疲れているので、免疫力も低下しているのでしょう)


薬剤師ブログらしく治療薬の解説をしようと思いましたが、外用薬だけでも相当数あり、また内服まで書くとかなりのボリュームになってしまうので、今回は予防のための商品の紹介にします。
1つは”コラージュフルフル“シリーズです。
シャンプー、リンス、液体石鹸、泡石鹸がありますが、いずれもミコナゾール配合です。
ミコナゾールはイミダゾール系抗真菌薬です。医療用ではフロリード®クリーム・ゲル・膣錠がありますね)。そのためこれにより抗真菌効果が得られるのは分かりますね。



もう1つはピロエース石鹸です。
これは殺菌剤のイソプロピルメチルフェノール、抗ヒスタミン薬のジフェンヒドラミンを含有しています。イソプロピルメチルフェノールで細菌、真菌の殺菌効果があり、ジフェンヒドラミンで痒みも抑えられます。

またクレゾールも含有されていますが、これも殺菌剤です。クレゾールは2類医薬品でクレゾール石ケン液があり、これも殺菌・消毒剤として用いられます。


最後にクリアレックスWiです。
これは殺菌剤のイソプロピルメチルフェノールと、抗炎症薬のグリチルリチン酸を含有しています。殺菌効果の他に、消炎効果が得られるのが分かります。

低刺激性なので、肌の弱い人でも使い易いのが特徴です。

ここで紹介した3つの商品はいずれも医薬部外品です。化粧品とは違い効能効果の承認を得ています。そのため皮膚の殺菌・消毒に十分な効果があり、皮膚真菌症を予防するのに有効でしょう。

以上で皮膚真菌症の種類と特徴、予防の商品について分かりましたでしょうか?
白癬は人からうつることが多いですが、カンジダ、癜風に至っては常在菌なので、完全に感染を防ぐのは難しかもしれません。そのため皮膚を清潔に保ち、予防することが何より大切になります。頻繁に再発を繰り返す人は今回紹介した商品を日常的に使ってみるのもいいかもしれません。いずれにしても予防が第一です。皮膚を清潔に保ち、十分な休息をとって免疫力を保つのも忘れないようにしましょう。

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