アトピー性皮膚炎の外用薬のまとめ 図で理解

免疫系の薬

先日うちの薬局で初めてコレクチム®軟膏を採用しました。モイゼルト®軟膏はまだ使っていませんが、これでステロイド、免疫抑制剤、JAK阻害薬と3種のアトピー性皮膚炎治療薬を使っていることになります。いい機会なのでこれらの働きを復習できればと思い、今回の記事を書きました。これらの薬がどのように作用するのか、図を使って説明するので、なるべく視覚で理解してもらえればと思います。


・ステロイド
アトピー性皮膚炎における基本治療になります。アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア能の低下による易刺激性と、それにより生じた炎症によって痒み、湿疹を生じます。ステロイドはこの炎症を抑えるのに用います。
ステロイドは脂溶性が高いので細胞内に移行します。細胞内でグルココルチコイド受容体(糖質コルチコイド受容体とも言います)と複合体を形成します。複合体は細胞核内に移行し2量体を形成して、DNAの転写調節領域に結合し、mRNAへの転写、翻訳を調節します。このタンパク質の発現の調節により抗炎症効果を発揮するわけです。

例えば発現を促進するタンパク質にはリポコルチン、IκBα、β2受容体などがあり、発現を抑制するタンパク質にはホスホリパーゼA2、COX2、IL、TNFα、IFNγ、IgE抗体などがあります。

優れた抗炎症作用を発揮する一方、副作用も多いのが特徴です。
目立ったものでは皮膚萎縮、毛細血管の拡張があります。またIL、TNFα、IFNγといったサイトカインの産生を抑制ことにより、抗炎症作用を発揮しますが、これは免疫抑制作用にもつながります。そのためざ瘡(にきび)、カンジタ、ヘルペスといった感染症の副作用にも注意しないといけません。


・免疫抑制薬
アトピー性皮膚炎の痒みや湿疹は、免疫反応によるサイトカインの放出が原因となります。この過剰な免疫反応を抑制することによって症状を緩和します。
アトピー性皮膚炎に用いる免疫抑制剤はタクロリムス(プロトピック®軟膏)です。

Th1細胞(ヘルパーT細胞)は抗原提示細胞から抗原提示を受けるとCaチャネルの活性化により細胞内Ca濃度が上昇します。Caはカルシニューリンという酵素を活性化します。活性化したカルシニューリンは転写調節因子のNFATを脱リン酸化し、活性化します。活性化したNFATによりDNAの転写が調節され、ILやINFγが産生されます。こうして産生されたIL、INFγによってアレルギー反応が活性化するわけですね。
タクロリムスはイムノフィリンというタンパク質と結合し、この複合体がカルシニューリンを不活性化します。これによりILやINFγが産生されなくなり、免疫反応が抑制されます。

免疫反応を抑制することにより症状を緩和することは外用ステロイドと一緒ですが、皮膚萎縮や毛細血管拡張などの局所副作用がないので、これらの副作用により外用ステロイドが使いつらい患者には適しています。
ただし皮膚の刺激感、灼熱感があります。(使い続けることで皮膚症状が改善すると緩和します)
また免疫抑制薬なので、感染症には注意が必要です。

・JAK阻害薬
アトピー性皮膚炎では皮膚のバリア能の低下により外部からの刺激を受けやすくなっており、外部刺激によりマクロファージやTh2細胞からTNFαやインターロイキン(IL-4,IL-6、IL-13、IL-31)などのサイトカインが放出されます。

JAKはこれらのサイトカイン受容体に結合するチロシンキナーゼであり、サイトカインが受容体に結合することにより活性化します。

JAKにはJAK1,JAK2、JAK3、Tyk2のサブタイプが存在します。サイトカイン受容体にはJAKが2分子結合しており、サイトカインが受容体に結合すると、JAKがリン酸化され活性化します。活性化したJAKはSTATという転写因子をリン酸化し活性化します。活性化したSTATは最終的に2量体を形成し、これが核内に移行しDNAに結合します。これによって様々な遺伝子の発現を誘導します。この結果、炎症反応の促進、好酸球の活性化、痒みの発現、皮膚のバリア機能低下などの反応が起きます。

アトピー性皮膚炎に用いるJAK阻害薬はデルゴシチニブ(コレクチム®軟膏)です。
JAKを阻害することにより、STATによる遺伝子の発現を抑制し、アレルギー反応を抑える作用を示します。※JAK1,JAK2、JAK3、Tyk2のいずれも阻害します。

特徴としてはプロトピック®軟膏のような刺激感、灼熱感が無いことです。
しかし免疫反応を抑制しているので、プロトピック®軟膏と同様に毛包炎、カポジ水痘様発疹、口腔ヘルペス、単純ヘルペス、帯状疱疹、膿痂疹といった感染症の副作用があります。

内服のJAK阻害薬にはトファシチニブ(ゼルヤンツ®錠)、バリシチニブ(オルミエント®錠)、ペフィシチニブ(スマイラフ®錠)、ウパダシチニブ(リンヴォック®錠)、フィルゴチニブ(ジセレカ®錠)、アブロシチニブ(サイコバインコ®錠)があります。
サイコバインコ®錠はアトピー性皮膚炎治療薬です。
その他はいずれも関節リウマチの治療薬ですが、ゼルヤンツ®錠は潰瘍性大腸炎、リンヴォック®錠は関節症性乾癬、アトピー性皮膚炎に有効です。

・PDE4阻害薬
免疫反応で活性化された免疫細胞では様々なサイトカインが放出されています。
免疫細胞内(T細胞、B細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、好塩基球など)ではATPからcAMPが産生されています。詳しい作用機序は不明ですが、cAMPは炎症性サイトカインの産生を抑制し、抗炎症性サイトカインの産生を促進します。アトピー性皮膚炎や乾癬などのアレルギー患者の細胞では細胞内のcAMP濃度が低いことが原因の1つと考えられています。
cAMPはATPからアデニル酸シクラーゼ(AC)によって産生し、ホスホジエステラーゼ(PDE)によって不活性化します。

PDEは1~11のサブタイプがありますが、免疫反応に関連するサブタイプは4です。つまりPDE4を阻害することにより、cAMPの不活性化が抑制され濃度が高まり、結果として炎症反応が抑制されることになります。

アトピー性皮膚炎に用いられるPDE4阻害薬はジファミラスト(モイゼルト®軟膏)です。
モイゼルト®軟膏は炎症反応を抑制しますが、免疫を抑制するほどではなく(過剰な免疫反応を抑える程度)、長期使用の免疫抑制における副作用は極めて低くなっています。
主な副作用には色素沈着で、わずかながら毛包炎、膿痂疹といった感染症の副作用もあります。

なお内服のPDE4阻害薬はアプレミラスト(オテズラ®錠)があります。オテズラ®錠の適応は尋常性乾癬、関節症性乾癬、局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍です。


現在発売されているアトピー性皮膚炎の治療薬についてまとめてみました。薬剤師はどうして薬が効くのか正しく理解すべきだと思います。しかし文書ではイメージしにくいので、今後も可能な限り図もつけて解説していきたいと思います。
最後に患者さんの感想を紹介しておきます。コレクチム®軟膏は可もなく不可もなくといった感じです。抗炎症効果はステロイドに比べてやや物足りない印象ですね。モイゼルト®軟膏はまだ情報が集まっていません。プロトピック®軟膏は私個人の感想ですが、灼熱感さえおさまってしまえば皮膚の状態はいいですね。
今後もなるべく図を使ってイメージしつつ、生の声も反映させ、薬局業務に活かせるブログになるよう精進する次第です。

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