エリスパン錠の販売中止に備えて代替薬を考察

神経系の薬

少し前に住友ファーマ株式会社からエリスパン®錠の発売中止のお知らせが届きました。
⇒ エリスパン錠発売中止のご案内
2023年3月までは出荷は続けるようですが、途中でいつ在庫がなくなって終了してしまうかも分かりません。なるべく早い段階で代替薬を考えておくべきでしょう。今回の記事では向精神薬を考える際に、何に注意して代替薬を考えるかを紹介していきたいと思います。

まず初めにエリスパン®錠について確認しておきましょう。
エリスパン®錠に有効成分はフルジアゼパムで、こればベンゾジアゼピン系薬物です。脳神経のGABAA受容体に結合し、その働きを高めることによって睡眠作用、抗不安作用を発揮します。睡眠作用も抗不安作用も同一の作用機序から生じるため、明確な違いはありません。睡眠作用の強いものを睡眠薬、抗不安作用の強いものを抗不安薬と呼んでいるわけですね。
※薬によっては睡眠作用、抗不安作用の他に筋弛緩作用、抗痙攣作用をもつものもあります。

ここでエリスパン®(フルジアゼパム)はどうか見てみましょう。効能・効果は次のようになっています。
「心身症(消化器疾患、高血圧症、心臓神経症、自律神経失調症)における身体症候並びに不安・緊張・抑うつ及び焦躁、易疲労性、睡眠障害」
これを見て分かるように抗不安薬として使用されます。ただし睡眠効果もあるので、睡眠薬としても使用されます。実際に当薬局でも多くの人が不安、緊張、あるいは抑うつに使用されており、一部の人は不安を伴う睡眠障害に利用されています。

さてここまででエリスパン®錠については理解できたでしょうか?次に代替薬を選ぶにおいてどうやって決めるか考えましょう。個人的に以下の3つで考察しました。

①効能・効果
まず第一に何よりも効能・効果でしょう。そもそも抗不安薬として用いられていなければ使えません。その上で睡眠作用をもつものが望ましいでしょう。
②作用時間
次に長さです。同じような時間で効果が表れ、同じくらいの時間効いているのが望ましいです。
③強さ
最後に強さです。効果が表れたとしても力不足では困ります。同程度の強さを持っている必要があります。

①については「今日の治療薬」や「治療薬ハンドブック」などでまとめてくれているので、簡単に分かります。
②についてはTmax(最高血中濃度に達するまでの時間)と半減期(血中濃度が半分になるまでの時間)の2つを指標としました。

まずエリスパン®と効能・効果が近そうなものを抽出し、そこからTmax、半減期をまとめました。

次に強さです。抗不安作用の強さというのは添付文書やインタビューフォームなどを読んだだけでは分かりません。
そこでジアゼパム等価換算を用います。これはジアゼパム5㎎と同じ効果を得るためには、どの程度の量が必要というものです。上記の抗不安薬のジアゼパム等価換算値は以下のようになります。
※その他のジアゼパム等価換算はこちらになります ⇒ 向精神薬の等価換算 2017年版

エリスパン®錠の規格は0.25㎎なので、2錠でジアゼパム5㎎と等価となります。
デパス®なら0.5㎎錠を3錠、リーゼ®なら5㎎錠を2錠、ソラナックス®なら0.4㎎錠を2錠でジアゼパム5㎎と等価、つまりエリスパン®2錠と等価ということになります。
※なお抗不安薬の適切な使用量はジアゼパム換算で1日15㎎までとされています。

ここまでの事を考慮すると、エリスパン®の代わりに最も使い易いのはソラナックス®(0.4)でしょう。抗不安作用の他に睡眠作用を併せ持ち、作用時間はエリスパン®より短いですが、極端に異なるわけではありません。そしてソラナックス®(0.4)1錠とエリスパン®1錠が同じ程度の抗不安効果をもちます。

次に使い易いのがリーゼ®錠(5)、その次あたりがデパス®(0.5)といったところでしょうか?
リーゼ®(5)1錠あたりのジアゼパム換算はエリスパン®と同じです。デパス®なら0.25㎎と0.5㎎を1錠ずつ合わせてエリスパン®1錠と等価です。
しかしどちらも半減期がエリスパン®に比べてかなり短くなっています。そのため効果が切れるのが早いです。エリスパン®を不安時や入眠困難時の頓服に使っているなら、さほど問題ないかもしれません。しかし毎日分2や分3で使っているような場合は、すぐに効果が切れてしまうので代替するのは適しません。
そのような場合は半減期がもう少し長いレキソタン®がいいかもしれません。その他にはセルシン®やセレナール®などもありかもしれませんが、この2つは半減期がだいぶ長いので、翌日への持ち越しが生じる可能性があるので注意が必要です。

またデパス®は筋弛緩作用が強い薬でもあります。そのため脱力感やふらつきなどの副作用が生じることがあります。特に筋力の低下した高齢者は転倒のリスクがあることを十分考慮しなくてはなりません。


以上のような形でエリスパン®の代替薬を考察してみました。最も使い易いのはソラナックス®(0.4)ですが、現在ソラナックス®は後発品も含めて世界的に不足しており、入荷が困難です。
⇒ ソラナックス®錠 供給状況に関するお知らせとお願い
そのためソラナックス®以外にも選択肢をもって対応する必要があります。普段どのように使っているのか、転倒のリスクはどの程度あるか、翌日への持ち越しの影響(運転をするかなど)はどの程度あるかなどですね。
このように患者背景の把握と先ほど紹介した知識をフル活用して、適切な代替薬を選ばなくてはなりません。専門的知識と接客力の両方が問われますが、これが出来れば医師と患者の両方から信頼を得ることが出来ます。大変ですが自身を磨くチャンスだと思って頑張りましょう。

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