eGFRをもう少し詳しく 体表面積による補正・未補正

臨床検査値

前回の記事でeGFRから血清クレアチニン値を求め、さらにクレアチニンクリアランスを算出し、薬用量を求めた事例を紹介しました。この時に用いたeGFRは健康診断の結果であり、単位がmL/min/1.73㎡のものでした。しかしeGFRには単位がmL/minのものもあり、使い方を間違えると薬用量のミスにつながりかねません。今回の記事でeGFRについて以前の記事より少し説明するので、ぜひ理解してもらえればと思います。

まず初めにGFRとは糸球体濾過速度のことであり、糸球体が1分間にどのくらいの血液を濾過し、尿を作れるかを見る指標です。つまり腎臓が薬物をどの程度排出できるかの指標となります。
GFRを正確に測定するにはイヌリンを用いるのが一番ですが、測定方法は非常に困難となります。そのため一般的には血清クレアチニン値、年齢、性別を用いた推算GFR(以下eGFR)を用います。

eGFRの計算式
男性:194×Cr-1.094×年齢-0.287 (mL/min/1.73㎡)
女性:194×Cr-1.094×年齢-0.287 × 0.739 (mL/min/1.73㎡)

※Crは血清クレアチニン値 1.73㎡は成人日本人の平均体表面積 

さてここでの体表面積は日本人の成人の平均値を用いています。通常女性は男性より体表面積が小さいので女性の場合のeGFRは男性の値に0.739を掛けているわけですね。

しかし1.73㎡というのはあくまで成人日本人の平均値なわけで、実際には全員異なるでしょう。体表面積で薬用量を調節する薬も多く存在します。(ex)ティーエスワン®カプセルなど

これらを用いる場合は体表面積を算出しなくてはなりません。
体表面積は身長と体重から近似式を用いて算出します。有名な近似式には以下のようなものがあります。

藤本式:身長0.663×体重0.444×0.008883
新谷式:身長0.725×体重0.425×0.007358
DuBois式:身長0.725×体重0.425×0.007184


上記の式も電卓をたたいて計算するのは困難です。そのため自動計算してくれるサイトをPCにブックマークしておきましょう。毎回このブログで紹介している以下のサイトで簡単に計算してくれます。
⇒ ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト 体表面積(BSA)

試しに身長170㎝、体重65kgの人で体表面積を出してみましょう。

多少数値は異なりますが、大きくは変わりません。世界的にはDuBois式が用いられますが、日本人の体格向けに作られたのが藤本式や新谷式です。ですが日本の病院でもDuBois式を採用しているところが多いですね。
eGFRの単位は mL/min/1.73㎡ となっています。実際の体表面積が分かったら、これを1.73で割り、これに実際の体表面積を掛けることによって、体表面積を考慮したeGFRが算出されることになります。例えば身長170㎝、体重65kgの男性でeGFRが60mL/min/1.73㎡の人の場合、
体表面積はDuBois式を用いて算出すると、1.7536㎡となるので
60÷1.73×1.7536≒60.82mL/minとなります。

このように体表面積を日本人の成人の平均体表面積として、これで補正したものを体表面積補正eGFR(または標準化eGFR)といい、単位はmL/min/1.73m²で表します。
これに対して実際の体表面積を考慮するため、体表面積で補正しないeGFRを、体表面積未補正eGFR(または個別eGFR)といい、単位はmL/minで表します。
体表面積未補正eGFR=体表面積補正eGFR÷1.73×体表面積

体表面積補正eGFRも体表面積未補正eGFRも、前回紹介したサイトでまとめて計算できます。本当に便利なサイトですね。
⇒ ke!san 生活や実務に役立つ計算サイト 腎機能推定計算



体表面積補正eGFRと体表面積未補正eGFRはどのように使い分けるのでしょうか?
まず体表面積補正eGFRは腎機能の評価の指標として用います。健康診断の結果の用紙などに記載されているeGFRは体表面積補正eGFRのことです。一般的な判定基準は以下のようになっています。

eGFRの腎機能の判定基準   
eGFR             腎機能              
>90                  正常
60~89    軽度腎機能低下
30~59    中度腎機能低下
15~29    重度腎機能低下
   15>              末期腎不全
     

しかし筋肉量が少ない場合、血清クレアチニン値は低くなり、クレアチニン値が低いとeGFRは高くなります。寝たきりの高齢者などは当然筋肉量が少ないため、
クレアチニン値が低い⇒eGFRが高くなる⇒腎機能が高め?
となってしまいます。
一方筋肉量が高いと血清クレアチニン値は高くなるので、eGFRが低くなります。
そのため腎機能の評価の絶対的な指標ではなく、患者の体格、その他にもBUNやシスタチンCなど、他の検査値も用いて総合的に評価すべきです。

これに対して体表面積未補正eGFRは薬物の投与設計に用います。基礎代謝量などの生理機能は体表面積に相関することが分かっています。そのため実際の体表面積で補正しないeGFRを用いることになるわけです。
実際に体表面積によって薬用量を調節するものは抗がん剤が最も多いでしょう。
例えばカルボプラチンは目標AUCから投与量を求める方法としてCalvert式が推奨されています。

GFRが腎臓でのクリアランスになります。ここで注意して欲しいのは単位がmL/minになっていることです。つまり体表面積で補正しないGFRになっており、実際には体表面積未補正eGFRを用いて計算します。透析患者の場合はGFRに5~10を代入するとされています。
なお25というのは腎臓以外のクリアランスです。
この辺についてはがん薬物療法時の腎障害診療ガイドライン2016に記載されていますので、ご覧になってください。

以上の説明で体表面積補正eGFRと体表面積未補正eGFRの違いについて理解でいましたでしょうか?
病院薬剤師は違うでしょうが、薬局薬剤師は体表面積未補正eGFRを用いる機会は少ないです。しかし近年腎機能の値が記載された処方箋が発行されることも増えましたし、患者さんに健康診断の結果を渡されて、血液検査のデータ意味を教えて欲しいと頼まれることも多いでしょう。その際にeGFRを見ることも多いと思います。その場合は単位までしっかり確認して、体表面積で補正しているかどうかも忘れずにチェックできればと思います。そして検査値の意味を正しく理解して、薬用量のチェック等に活かして下さい。
また繰り返しになりますが、いざという時に計算を簡単に行ってくれるサイトは必ずブックマークしておきましょう。

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