遅発性ジスキネジアの治療薬が登場 ジスバルカプセルについて

神経系の薬

今更ですが今年の6月1日よりジスバル®カプセルが発売されました。最近は新薬の発売ラッシュですが、このジスバル®カプセルは初の遅発性ジスキネジアの治療薬です。今までに無い治療薬ですので、是非詳しく学んで、いざ扱う時に役立ててくれればと思います。


まずジスキネジアとは何か?ここから学びましょう。
ジスキネジアとは自分の意志とは関係なく体の一部が異常な動きをする現象です。主に顔に生じることが多く、舌を出したり捻転したり、口が咀嚼様の動き(口をモグモグさせる)をしたり、口をすぼめるといった症状が目立ちます。また手足に出ることもあり、手足が勝手に動いてしまう、立ったり座ったりを繰り返す、じっとしていられないなどの症状が出ます。


抗精神病薬などを長期間使用した結果、ジスキネジアがでることがあります。薬の長期使用により出るジスキネジアなので、これを遅発性ジスキネジアといいます。
ジスキネジアも遅発性ジスキネジアも発生原因は同じであり、完全に解明されたわけではありませんが、黒質-線条体におけるドパミン作動性神経の過剰な働きにより生じると考えられています。

ジスキネジアを起こす代表的な薬物は抗パーキンソン病薬です。特にレボドパ製剤ですね。レボドパ製剤は直接ドパミンの前駆体を投与するので、ドパミン作動性神経が過剰になるのは当然でしょう。そのためレボドパ製剤が効いている時間帯に生じることが多いです。その他にもCOMT阻害薬やMAO-B阻害薬もドパミンの分解を抑制するので、ジスキネジアを生じることがあります。

これに対して遅発性ジスキネジアは主に抗精神病薬の長期使用によっておきます。
つまりドパミンD1、D2受容体の長期間における遮断によってですね。抗パーキンソン病治療薬とは逆の作用機序によってです。これも原因はまだ解明されたわけではありませんが、長期間ドパミン受容体を遮断することにより受容体数の増加や感受性の亢進が生じ、ドパミン作動性神経の過剰な働きが生じるとする考えが有力です。

ジスキネジアが生じた場合はレボドパ製剤の減薬などで対処できますが、遅発性ジスキネジアは症状も不可逆的であることが多いうえ、今までは治療法がなく予防する以外ありませんでした。それが5月にジスバル®カプセルが承認されたことによって、治療薬が登場したわけです。


それではジスバル®カプセルについて説明していきます。
ジスバル®カプセルの有効成分はバルベナジンといい、作用機序からVMAT2阻害薬といいます。
ドパミンなどのカテコールアミンは、シナプス前膜においてシナプス小胞に貯蔵され、シナプス小胞が神経終末に移動し、シナプスに分泌されます。この時に放出された一部の神経伝達物質はシナプス前ニューロンに再取り込みされ、再利用されることになります。

シナプス前ニューロンに再取り込みされた神経伝達物質は、再びシナプス小胞に貯蔵されるわけですが、この時シナプス小胞に取り込むのは、小胞モノアミントランスポーター2(VMAT2)というトランスポーターによって行われています。バルベナジンはこのVMAT2を阻害することで、シナプス小胞へのドパミンの貯蔵を抑制し、結果的にシナプスへ放出されるドパミンの量が減るわけです。

シナプスに放出されるドパミンの量が減ることによって、遅発性ジスキネジアが抑制されるわけですね。
ここまでで作用機序は理解できたでしょうか?それでは特徴について見ていきましょう。

・用法用量
ジスバル®カプセルの規格は40㎎だけです。使い方は「通常、成人にはバルベナジンとして1日1回40mgを経口投与する。なお、症状により適宜増減するが、1日1回80mgを超えないこととする。」となっています。食前食後については記載されていませが

空腹時に本剤を投与した場合、食後投与と比較してバルベナジンの血漿中濃度が上昇するおそれがあるため、食後に本剤を投与している患者に本剤を増量する際には、用量調整の前後で食事条件の変更は行わないこと。」

との記載があります。空腹時の方がより吸収されるようですので、使用経験の浅い薬なので、食後服用にし、効果が不十分な場合は用法を変えずに増量するのが無難でしょう。
またバルベナジンはCYP2D6やCYP3A4で代謝されます。そのためCYP2D6やCYP3A4を阻害する薬物との併用には注意が必要です。添付文書には次のような記載もあります。

以下の患者では、活性代謝物の血漿中濃度が上昇し、QT延長等の副作用を発現するおそれがあるため、本剤40mgを1日1回投与とし、増量を行わないこと。
・遺伝的にCYP2D6の活性が欠損していることが判明している患者(Poor Metabolizer)
・中等度以上の肝機能障害患者(Child-Pugh分類クラス:B又はC)
・強いCYP2D6阻害剤(パロキセチン、キニジン等)を使用中の患者
・強いCYP3A阻害剤(イトラコナゾール、クラリスロマイシン等)を使用中の患者

パロキセチンやイトラコナゾール、クラリスロマイシンを服用中の患者は40㎎からの増量が不可です。併用薬によっては増量ができない事に注意しないといけません。

・最も多い副作用は傾眠
副作用の項目を見てみると傾眠が最も多く、16.9%となっています。かなりの確率です。VMAT2を阻害するとドパミンだけでなく、セロトニンやヒスタミン、ノルアドレナリンなどの分泌も抑制されるでしょうから当然かもしれません。
なおそれ以外の副作用として錐体外路症状があります。これもドパミンの働きを抑制するので当然でしょう。錐体外路症状としては流涎過多が最も多く、11.2%となっています。
※流涎(りゅうせん)過多とはヨダレが過剰に分泌される状態です。

・うつ症状が起きていないか注意
VMAT2を阻害することでドパミンおよびその他のカテコールアミンの分泌が抑制されます。そのためうつ症状が出る可能性があります。添付文書、インタビューフォームには以下の記載があります。

・患者及びその家族等にうつ病や不安等の精神症状の可能性について十分説明を行い、医師と緊密に連絡を取り合うように指導すること。
・うつ病や不安等の精神症状があらわれることがあるので、本剤投与中及び投与終了後一定期間は患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。関連する症状があらわれた場合には、本剤の減量又は投与を中止するなど適切な処置を行うこと。
・うつ症状を呈する患者は、希死念慮、自殺企図のおそれがあるので、投与開始早期及び投与量を変更する際には、患者の状態及び病態の変化を注意深く観察すること。


投与開始直後や用量の変更時、中止時にうつ症状は起きやすいです。この期間はより注意が必要となります。できれば家族の協力を仰ぐのが良いでしょう。


以上ジスバル®カプセルについてまとめてみました。遅発性ジスキネジアの治療薬が発売されたという事だけでなく、抗精神病薬を長期使用しているとジスキネジアが生じる可能性があるという事を再認識しないといけません。長期間薬を使っているとつい副作用の確認が疎かになってしまうものです。これを期に抗精神病薬を使っている人に定期的に、舌や口が異常な動きをしていないかチェックするようにしようと思います。

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