乾癬② 治療(外用薬・内服薬)

疾病・病態

前回の記事で乾癬の病態について学びました。今回は治療法について紹介します。
乾癬治療は外用薬、内服薬、生物学的製剤、光線療法があります。1つ1つ見ていきましょう。

・外用薬

乾癬の最も基本的な治療法ですね。外用ステロイドとビタミンD3製剤が用いられます。
乾癬は皮膚の炎症、表皮濃厚、鱗屑の剥離といった症状を起こします。外用ステロイドで皮膚の炎症を抑制します。これは乾癬に限らず他の皮膚疾患でも同様なので、特に説明は要らないでしょう。
他の皮膚疾患と異なるのはビタミンD3製剤が用いられることですね。乾癬は過剰に産生、放出されたサイトカインが原因となって引き起こされます。ビタミンD3は脂溶性が高いので細胞内に取り込まれ、細胞内で受容体と結合します。ビタミンD3と受容体の複合体が核内に取り込まれ、DNAに結合することによって転写を調節し、表皮細胞の異常な分化、過度な増殖を抑制します。

主なビタミンD3製剤には以下の薬があります。

・ドボネックス®軟膏
・ボンアルファ®軟膏・クリーム・ローション
 ⇒尋常性乾癬の他に魚鱗癬、掌蹠膿疱症、掌蹠角化症、毛孔性紅色粃糠疹に適応あり。
・ボンアルファハイ®軟膏・ローション
 ⇒濃度がボンアルファ®の10倍。適応は尋常性乾癬のみ。
・オキサロール®軟膏・ローション
 ⇒尋常性乾癬の他に魚鱗癬、掌蹠膿疱症、掌蹠角化症、掌蹠膿疱症に適応あり。

近年では外用ステロイドとビタミンD3製剤の合剤があり、高い有効性を示しています。
・ドボベット®軟膏・ローション
 ⇒カルシポトリオール(ドボネックス®)とベタメタゾンジプロピオン酸エステル(リンデロンDP®)の合剤。適応は尋常性乾癬のみ。
・マーデュオックス®軟膏
 ⇒マキサカルシトール(オキサロール®)とベタメタゾン酪酸エステルプロピオン酸エステル(アンテベート®)の合剤。適応は尋常性乾癬のみ。

・内服薬

ビタミンA誘導体、免疫抑制薬、PDE-4阻害薬があります。

・チガソン®カプセル
有効成分はエトレチナートといい、ビタミンA誘導体です。インタビューフォームを見ると「その詳細な作用機序は明らかではないが、落屑(角層細胞の接着力の低下)とともに正常な上皮の再形成(増殖及び分化)に関与するものと考えられる。」との記載があります。個人的には脂溶性ビタミンなので、ビタミンD3と同様の作用機序であると考えています。滴状乾癬以外の全ての乾癬に適応があり、その他にも様々な皮膚疾患に有効です。最も注意すべき副作用は催奇形性であり、脂溶性ビタミンなので体内における蓄積が極めて高いです。服用後は女性では2年、男性でも6ヶ月の避妊が必要とされます。

・ネオーラル®カプセル・内服液
有効成分はシクロスポリンといい、免疫抑制薬です。乾癬ではTNFαやIL-17、L-23といったサイトカインの過剰分泌など、異常な免疫反応が原因となっているため、免疫機能を抑制することにより症状を抑えます。
適応は「尋常性乾癬(皮疹が全身の 30%以上に及ぶものあるいは難治性の場合)、膿疱性乾癬、乾癬性紅皮症、関節症性乾癬」となっています。
シクロスポリンの作用機序を確認しておきましょう。
Th1細胞(ヘルパーT細胞)は抗原提示細胞から抗原提示を受けるとCaチャネルの活性化により細胞内Ca濃度が上昇します。Caはカルシニューリンという酵素を活性化します。活性化したカルシニューリンは転写調節因子のNFATを脱リン酸化し、活性化します。活性化したNFATによりDNAの転写が調節され、IL-2が産生されます。こうして産生されたIL-2によって細胞障害性T細胞が活性化するわけですね。シクロスポリンはイムノフィリンというタンパク質と結合し、この複合体がカルシニューリンを不活性化します。これによりIL-2が産生されなくなり、免疫反応が抑制されるわけです。

なおタクロリムスも同様の作用機序を示しますが、乾癬に対しては適応をとっていません。
主な副作用に高血圧や腎機能障害がありますので、十分な経過観察が必要です。

・オテズラ®錠
有効成分はアプレミラストといい、ホスホジエステラーゼ4(PDE-4)阻害薬です。PDEはcAMPを5′-AMPにし、不活性化します。詳しい作用機序は不明ですが、cAMPはサイトカインの産生を抑制し、免疫機構を調節しています。乾癬患者はPDE-4が過剰に分泌され、cAMPが少ない状態にあります。そのためTNFαやIL-17、IL-23などのサイトカインが過剰に分泌され、炎症・角化細胞の過剰な増殖が生じています。つまりPDE-4を阻害することで、免疫機構を正常に近づけるわけですね。オテズラ®錠の適応は「局所療法で効果不十分な尋常性乾癬、関節症性乾癬、局所療法で効果不十分なベーチェット病による口腔潰瘍」となっています。主な副作用に頭痛、悪心、下痢があります。

今回の記事では外用薬と内服薬について触れてみました。
次回は生物学的製剤、光線療法について書きます。特に生物学的製剤は理解が難しいですが、非常に優れた効果を示します。頑張ってまとめてみますので、少しお待ちください。

にほんブログ村 病気ブログ 薬・薬剤師へ
にほんブログ村

記事が良かったと思ったらランキングの応援をお願いします。

1

コメント

タイトルとURLをコピーしました