広場恐怖症

疾病・病態

以前友人に薬の相談を受けました。足に怪我をして痛むので、薬を使っていいかとのことでした。単純に考えて傷から細菌が入った場合は抗生剤を、患部が腫れて痛むようなら解熱鎮痛剤を使います。念のため併用薬やアレルギーが無いか聞いたところ、意外な答えが返ってきました。この人は広場恐怖症で薬を使っているとの事です。広場恐怖症は聞きなれない人も多いのではないでしょうか?今回は広場恐怖症について説明します。

広場恐怖症と聞くと広い場所に対して恐怖を感じると思う人が多いと思います。病名と病態が一致していない、紛らわしい病気なのですが、「逃げられない状況や場所」「発作が起きた時に助けを求められない状況や場所」を恐れ、避ける病態です。

広場恐怖症はパニック障害の一種です。パニック障害とは不安症の一種で、理由もないのに突然強い不安感とそれに伴う動悸や震え、発汗などを生じるパニック発作や、パニック発作が起きるのではないかとの不安が持続する予期不安、発作が起こりそうな場所や状況を避ける回避行動を主症状とします。

広場恐怖症はパニック障害の中でも先述した逃げられない状況や場所、助けを求められない状況や場所に対する不安や恐怖を感じる疾患です。パニック発作を伴う人もいれば伴わない人もいます。広場恐怖症の人が不安を感じる場所は

・電車やバス、飛行機といった交通機関 ⇒逃げられない状況
・トンネル、エレベーター、映画館などの閉ざされた空間 ⇒逃げられない状況
・人ごみの中 ⇒逃げられない状況
・広場や駐車場など広い場所 ⇒助けを求められない状況・家の中に一人でいる ⇒助けを求められない状況

などがあります。回避行動により公共交通機関を利用できなくなるなど、日常生活が制限されるケースもあります。

次に広場恐怖症の治療について見てみましょう。広場恐怖症の治療法は認知行動療法と薬物療法があります。

・認知行動療法

段階的曝露療法ともいい、耐えられる程度の状況をクリアし、徐々に高いレベルの不安の克服していく方法です。例えば電車に乗るなら最初は空いている電車で1駅だけ、次は2~3駅、各駅停車から急行へ、混んでいる電車へといった感じです。

・薬物療法

パニック障害の治療なのでSSRIが主体となります。パニック障害に適応があるSSRIはパロキセチン(パキシル®)とセルトラリン(ジェイゾロフト®)です。

※フルボキサミン(デプロメール®、ルボックス®)は社会不安障害や強迫性障害に適応がありますが、パニック障害にはありません。SSRIはうつ病・うつ症状、パニック障害、社会不安障害、強迫性障害に適応のあるパロキセチンが最も優秀でしょう。その他に長時間作用型のベンゾジアゼピン系薬物を併用することが多いです。ベンゾジアゼピン系で不安症状そのものを抑えるからですね。ちなみに私の友人の処方は以下のものになります。↓

Rp(1)パキシル(10)  1錠
     1日1回 就寝前
Rp(2)メイラックス(1) 2錠
    1日2回 朝夕食後
Rp(3)ソラナックス(0.4)
      不安時  1回1錠

SSRIのパキシル®でパニック障害を抑えて、長時間作用型ベンゾジアゼピン系のメイラックス®で1日中不安を抑え、どうしてもパニック発作が起きた時は比較的効果発現の早いソラナックス®で対処するわけですね。ちなみにソラナックス®のTmaxは約2時間です。その他の抗不安薬はデパス®のTmaxは約3時間、リーゼ®のTmaxは約1時間です。個人的にはリーゼ®がいいのではなんて思ったりもします。薬物療法を行いつつ認知行動療法を行い、徐々に不安を感じる場所を減らしていき、安定してきたら薬の量を減らすといった流れになります。

友人も現在は普通に電車に乗っていますし、この事実を明かされるまで全く気づきませんでした。共通の友人も誰も気づいていません。日常生活は普通の人と全く変わらなく送っていますが、薬は飲み続けなくてはならないようで、またごく稀にパニック発作を起こすことがあるとのことです。病気はデリケートな問題なので、共通の友人にも誰にも話していませんが、出来れば仕事関係の人や一緒に過ごす時間の長い人には話した方がいいと思います。このような病気は周囲の理解があるだけで、色々配慮してもらえる可能性が高いですからね。当ブログではなるべく多くの疾患について解説していきます。色んな病気について知ることで、様々な病気に理解のある人が増えていって欲しいです。

本日の記事で100記事目です。週に2回程度の更新なので、ブログ開設から100記事書くのに10ヶ月程度もかかりました。他のブロガーさんと比べると遅いペースですが、とりあえず当初の目標の100記事を達成できました。次の目標はとりあえず1年続けること、その他にもリニューアルも考えていますので、気長にお付き合いいただけると幸いです。今更だけど誰かの役に立ったのかな?1人でも楽しみにしてくれる人がいれば続けようと思います。

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