ヒヤリ・ハット分析 ミノサイクリンとOTCの相互作用

ヒヤリ・ハット

公益財団法人日本医療機能評価機構の薬局ヒヤリ・ハット事例収集・分析事業で処方箋医薬品とOTCの相互作用の見落としによる説明違いの事例がありました。OTCは取り扱っていないと、つい疎くなってしまいます。今回の事例でOTCについても詳しくなり、業務に役立ててもれればと思います。

【事例の詳細】
ミノサイクリン塩酸塩錠を交付した患者から、片頭痛があるため市販薬のバファリンEXを服用したいが併用して問題ないかと電話で問い合わせがあった。バファリンEXにはロキソプロフェンナトリウム水和物が含まれていることだけを確認し、患者へ併用は問題ないと回答した。電話を切ったのち電子薬歴の併用薬にバファリンEXを登録したところ、バファリンEXの有効成分には乾燥水酸化アルミニウムゲルが含まれており、ミノサイクリン塩酸塩錠と相互作用があることが分かった。患者へ電話して、両薬剤を同時に服用せず、服用間隔を2時間以上空けるように伝えた。

【背景・要因】
バファリンEXの有効成分のロキソプロフェンナトリウム水和物だけを見て、ミノサイクリン塩酸塩錠との併用は問題ないと判断し回答した。当薬局で取り扱う一般用医薬品の種類が少なく、販売する機会があまりないため、一般用医薬品に関する知識が不足していた。また、新型コロナワクチン接種後の解熱鎮痛目的で一般用医薬品の購入を希望する人が増え始め、その対応に追われ忙しかった。

【薬局から報告された改善策】
一般用医薬品との飲み合わせを尋ねられた際は、主成分だけでなく他の有効成分や添加物まで漏れなく確認する。さらに、電子薬歴に併用薬を登録し、成分の重複や相互作用がないかチェックを行う。また、バファリンには様々な種類がありそれぞれ成分が異なるため、正確な商品名を聴き取る。医療用医薬品を交付する患者に、一般用医薬品を服用する際は必ず薬剤師に確認するよう、指導を徹底する。


まずミノサイクリンについて確認しておきましょう。
ミノサイクリンはテトラサイクリン系抗生物質です。テトラサイクリン系抗生物質の共通の相互作用として、金属イオンとキレートを形成することがあります。

内服薬は基本的に消化管から吸収されますが、キレートを形成した場合は吸収が著しく低下します。そのためテトラサイクリン系抗生物質は金属イオンと一緒に服用すべきではありません。
ミノサイクリンの添付文書をみると以下のような記載があります。

テトラサイクリン系抗生物質の他にニューキノロン系抗菌薬も同様の相互作用があります。例えばクラビット®錠の添付文書には以下の記載があります。

クラビット®の他にジェニナック®、アベロックス®、オゼックス®、グレースビット®などのニューキノロン系抗菌薬も同様ですね。
※ただしクラビット®、アベロックス®についてはカルシウムとの相互作用の記載はありませんでした。

その他にもセフェム系抗生物質でセフジニルは金属イオンとの相互作用があります。セフゾン®カプセルの添付文書には以下の記載があります。

鉄イオンとはキレートではなく錯体を形成するようですね。アルミニウム、マグネシウムとは機序不明ですが、吸収が低下するのは間違いなさそうです。

テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬、セフジニルは金属イオンと一緒に服用しない方が良いでしょう。ただ不思議なのはいずれも「併用注意」であることです。例えばグレースビット®はアルミニウムとの併用でAUCが70%以上低下します。これでは抗菌効果はほとんど得られないでしょう。併用禁忌になってもよさそうですが、なぜか全て併用注意でした。

ここまでで金属イオンと併用しない方がよい抗生剤は理解できたでしょうか?
次に今回のヒヤリ・ハットの対象となったOTCの解熱鎮痛剤について見てみましょう。OTCの解熱鎮痛剤には制酸剤が含まれているものがかなり存在します。

最近の商品は胃粘膜保護のために制酸剤を含んだ商品がほとんどです。ロキソニンS、イブA錠などは入っていませんが、それ以外の解熱鎮痛剤では制酸剤が入っているか疑った方がよいでしょう。
つまりテトラサイクリン系やニューキノロン系薬物はOTCの解熱鎮痛剤の併用で効果が減弱する可能性が極めて高いことになりますね。今回の事例のバファリンEXは乾燥水酸化アルミニウムゲルが含まれています。つまりアルミニウムイオンとキレートを形成してしまうことになりますね。
※バファリンEXはの有効成分はロキソプロフェンナトリウムで、制酸剤として乾燥水酸化アルミニウムゲルが含まれています。

ついでにOTCの解熱鎮痛剤以外にも金属イオンが含まれているものを確認しておきましょう。
まずは牛乳ですね。牛乳はコップ1杯に100~200㎎のカルシウムが含まれています。また栄養機能食品の牛乳ならマグネシウムや鉄なども一定量以上含まれています。
コントレックス、evianなどの硬水は大量のカルシウム、マグネシウムを含有しています。

※WHOの基準では硬度120mg/L以上が硬水とされています。
 硬度=カルシウム(mg/L)×2.5 + マグネシウム(mg/L)×4


最後に食事の影響についても考察しておきましょう。
食事にも当然カルシウム、マグネシウム、鉄などが含まれています。テトラサイクリン系抗生物質、ニューキノロン系抗菌薬、セフジニルなどは、ほとんどの処方箋で 1日〇回 〇〇食後 と書かれますが、個人的には食後に服用してよいのかな?と思ったりもします。理論上は食間に服用した方がより吸収がよくなり、効果が高く出るはずです。
これらの添付文書にはいずれも 1回〇〇mgを 1日〇回服用する との記載であり、食事については触れていません。参考までにクラビット®のインタビューフォームを見ると以下のような記載があります。

空腹時に比べて食後の方が血中濃度は低下しますが、さほど影響のあるものではないようです。前述したようにクラビット®はカルシウムの影響は受けないので、あまり影響がないのかもしれません。その他の薬のインタビューフォームも見てみましたが、食事の影響はデータがないものや、有意な差がみられなかったものばかりでした。そのためこれらの薬の服用法は処方箋の記載に従えばよいでしょう。(私自身が服用する時は食間に飲んでいます)

今回の事例の紹介でOTCの解熱鎮痛剤には制酸剤が含まれるものが多いこと、テトラサイクリン系やニューキノロン系は飲料水でも注意が必要なこと、食事の影響に関しては有意な差が見られないことが分かってもらえればと思います。
投薬時にOTCの使用の有無の確認は必須ですね。

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