ベタニスで動悸がしたため情報提供した事例

調剤業務

昨日とあるスポーツの大会に出場していました。試合の度に練習がキツくなったり、コンディション作りでなかなかブログに時間をさけませんでした💦ようやく今日からまた再開できます。今回は先週私が対応した事例を紹介して、薬と病気の両方を一度に学べたらと思います。

いつもうちにおかかりの患者さんから相談を受けました。泌尿器科で薬をもらっているのですが、それを使ってからどうも動悸のようなものがあり気持ち悪いとのことでした。この患者さんの処方内容は以下のものになります。

泌尿器科
Rp(1)(般)シロドシン(4)  2錠
    1日2回 朝夕食後  30日分
Rp(2)ベタニス(50)   1錠
    1日1回 朝食後   30日分
Rp(3)ツムラ八味地黄丸   7.5g
    1日3回 毎食前   30日分

循環器科
Rp(1)バイアスピリン(100)   1錠
    エフィエント(3.75)    1錠
    (般)ロサルタンカリウム(50) 1錠
    1日1回 朝食後   30日分
Rp(2)(般)アミオダロン(100)   2錠
    1日2回 朝夕食後  30日分
Rp(3)(般)アムロジピン(2.5)   1錠
    1日1回 夕食後   30日分

上記の処方を見て分かるように、この患者さんは過去にカテーテル手術を受けたことがあり、また前立腺肥大症の治療もしています。このブログを長く読んでいただいている方は気付いたかもしれませんが、この患者さんは過去に八味地黄丸の記事で紹介した方です。
⇒ 前立腺肥大症で頻尿の患者さんに八味地黄丸が処方された事例

詳しく話を聞くとベタニス®(50)を服用してからどうも動悸のような感じがして気持ち悪いとの事でした。ベタニス®による副作用の可能性もありそうです。ここでベタニス®についておさらいしておきましょう。

ベタニス®の薬理作用はβ3受容体刺激です。これにより膀胱平滑筋を弛緩させ、膀胱容積を大きくすることにより頻尿を抑えます。前立腺肥大症の患者は頻尿を伴うことが多いです。前立腺肥大そのものの影響で尿道が圧迫され、尿がチョロチョロとしか出ず、結果頻尿になるケースと、治療薬のα1受容遮断薬の作用により尿が出すぎて頻尿にあるケースもあります。
※シロドシンはα1受容体遮断薬の中でも最も効果が強く、頻尿も起きやすいです
実際にこの患者さんは頻尿に悩まされていたので、ベタニス®(50)が処方されているわけですね。

しかしベタニス®には様々な副作用があり、その1つが不整脈です。
ベタニス®はβ3受容体を選択的に刺激しますが、あくまで選択的なのでβ1受容体も一部を刺激することにより不整脈を生じます。そのためベタニスを服用している場合は定期的に心電図や血圧を測定する義務があります。
※詳しくは過去記事をご覧ください ⇒ ベオーバの登場でベタニスはサヨナラ
この患者さんはというと、循環器科の方で定期的に検査を受けていました。またベタニス®を服用してから動悸がして気持ち悪いということを循環器科の医師に伝えたようで、心電図を受けました。結果、医師からは「期外収縮だから問題ない」との返答でした。医師からは問題ないと言われても気持ち悪かったので私に相談してきたわけです。

ここで期外収縮について学んでおきましょう。
期外収縮とは本来の脈拍より早く拍動が生じる状態です。心臓は洞結節から生じた興奮が房室結節に伝わり、さらに心筋に伝導することによって拍動しています。

しかし洞結節以外の場所で電気刺激が生じることにより、正常な脈の間に異常な脈が入り込むことがあります。これが期外収縮です。
この異常な電気刺激が心房で生じた場合を上室性期外収縮、心室で生じた場合を心室性期外収縮といいます。

期外収縮は基礎疾患が無く、自覚症状が軽い事例では特に治療をしないケースも多いです。基礎疾患があったり自覚症状が強い場合は抗不整脈薬を用いることもあります。この患者さんはカテーテル手術をしていますが、その後は抗血小板薬を用いており、冠血管の狭窄や副作用等もありません。自覚症状は”どうも気持ち悪い”と比較的軽めだったので、特に治療薬の変更は不要との判断をしたのでしょう。この辺は医師の判断に従うしかありません。カテーテル手術をした病院の医師であり、経過観察をしてくれているので、その辺は信頼してよいでしょう。

しかし患者さんの違和感は残っているのは事実です。ベタニス®は頻尿の抑制のために使用しているので、絶対に必要な薬ではありません。そのため試しに3日ほどベタニス®を中止してもらいました。結果は動悸が幾分落ち着いて、気持ち悪さも取れてきているとのことでした。どうやらベタニス®が原因の可能性は高そうです。ベタニス®を継続するかは泌尿器科の医師に判断してもらう必要があります。近日中に泌尿器科を受診予定でしたので、以下の内容を記した服薬情報提供書を作成し病院に送付しました。

・患者はベタニス®(50)を服用してから動悸のような違和感を感じている
・循環器科の医師に診てもらったら期外収縮なので問題ないとの回答だった
・ベタニス®(50)を中止したら症状が改善した

今回の服薬情報提供書は診察の参考にしてもらうために提出しました。これによって処方内容がどう変わるかは、受診してから分かります。
また個人的にはベオーバ®に変更になるのでは?と思っています。ベオーバ®はベタニス®に比べてβ3受容体への選択性が高く、心電図や血圧の検査義務がありません。添付文書上でもベタニス®の動悸や期外収縮などの副作用が「1%未満」に対し、ベオーバ®ではQT延長、動悸の副作用が「頻度不明」でした。ベオーバに変えれば動悸が改善する可能性もあります。また頻尿の改善のため八味地黄丸も服用しています。これだけで頻尿がおさまるなら単にベタニス®を中止すればよいでしょう。

このように薬局は病院へ患者からの訴えや、他の病院からの情報を提供したりして、診察への協力をすることができます。自分を信頼して相談してくれる人に対して、微力ながら協力できるよう頑張らないとです。

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